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夏至祭・浄逸の儀5※
しおりを挟む「あ……! 深い……!」
ぐりぐりと抉られ、ユノンは胸を反らした。タリアスがユノンの手を退けて乳首をつまみ、ぎりぎりと捻る。
「やっ、痛……」
「だが、よいか?」
耳元で問われ、ユノンはこくこく頷いた。この場所は虐げられても気持ちいいのは事実だ。腹の奥が、呑み込んだものをぎゅううと締め上げる。
「……ああっ、あ……」
ユノンは荒く呼吸を繰り返す。タリアスの手が乳首から離れ、代わりに片脚を大きく抱え上げられた。
「やあっ! ああ……!」
これではライルから結合部が丸見えだ。ライルに向かい合わされ、ぐぷぐぷと突かれる。突かれる度にユノンの可憐な性器も大きく揺れ、その様子を暗い瞳につぶさに見つめられていると思うと羞恥を煽られる。
「あんっ、やだあっ……タリアスさまっ、おやめ、ください!」
「女を抱くこともできる。だが私は、男を求める男の身体に、興味がある。……だから、ぜひともこのユノンに、子を孕んでもらわなくてはならない……」
息を切らしながの言葉は、ユノンに対してか、ライルに対してか。それとも自らに言い聞かせているようにも聞こえるその内容に、ユノンの背筋は冷たくなった。
タリアスの声音は本気だ。王は、本気で男である自分を孕ませようとしている。信じていないと、形だけの子作りと思っていたのに、王の意識は違ったのだ。
「やああっ、タリアス様っ、その穴に、子はできませんっ!」
「孕ませてみせるさ。お前の中の子種が途切れないよう、千夜、きっちりと抱いてやる」
「あっ、あ……うそ……」
突き上げの勢いは弱まらない。いつの間にかまた静けさが下りる浄めの間に、淫らな濡れた音とユノンの喘ぎ、そしてタリアスの荒い息だけが聞こえている。
「んっ、あっ、ああ、……み、見ないで……」
涙ながらにライルに哀願する。こんな姿は、彼には見られたくはない。
ユノンの頼みも空しく、ライルは暗く険しい目でじっと兄と妻の接合を見つめている。この尖った眼差しを防げるものなど、何もないように思われた。
一番抱かれたい相手に、他の誰かに抱かれ鳴かされているところを見られている。
ユノンは揺さぶられながら、胸が引き裂かれそうだった。
自分が取った行動が招いたことだ。狙い通りタリアスの意識はライルから逸らされたようだが、これが正解かどうかはわからなくなってしまった。
「あんだめ、また出る、出ますっ」
洞全体を太過ぎるもので擦られれば、あっという間に再びの絶頂はやって来る。
それを訴えれば、ライルが精を受ける瓶を手にし、ユノンの性器を握ってその口に向けた。
「あ、あ、あっ……ああ――!」
ぎゅうう、と後ろがかなり強くタリアスを食い締めるのがわかった。
一瞬遅れ、透明な瓶の中にユノンの子種は放たれる。ごく少量の放出だった。ライルは無感情な表情で妻の絶頂を受け止めている。
「はあ、……はあ、あん……」
極まりの余韻で、片脚だけで立たされていたユノンはがくりと倒れそうになった。
その拍子に結合が解かれてしまい、まだいきったままのタリアスの男根がぶるりとユノンの尻を撫でた。
「や、ん……」
「まだだ、ユノン」
休もうとするユノンの身体をタリアスが支え、今度は背面から逞しい腕に膝裏を抱えられた。そうして開脚した状態で抱き上げられる。
「……なっ! やです、恥ずかしい、だめ……」
ユノンは慌てて降りたいと身体を捩るが、落とされれば派手に尻もちをついてしまう。恐怖で上手く抵抗できない。
「ライルも子が欲しくなるよう、お前の痴態をよく見せてやりなさい」
「そんな……。……あうっ!」
身体を少しだけ落とされるようにして、深く挿入された。不意の快感に、足の爪先をぎゅっと丸めて耐える。
「……あ、……んん……」
「さあ、ユノン。新たな神官候補生が選ばれるまで、お前も私の精を受け続けるのだ」
「やああ……」
ライルは瓶を手にし、睨みつけるように行為を眺めている。
見られているのが辛くて、ユノンはなるだけライルを視界に入れないよう努めることにした。
ユノンが涙を散らしながらもう止めてと訴えても、タリアスが許すはずもない。
一度も抜かれないままに子種を受け続け、何度か体位を変えられた。そして気付いた時には、しんと静まった空気の中で絨毯の上に仰向けに寝かされていた。
腹の中が熱く、膨れている感覚がある。
「さあ、起きるんだ」
腹の中に入ったままのタリアスに抱かれるようにして起こされ、身体を支えて立たされた。
「抜くぞ」
喘ぎ過ぎて喉がひりひりする。こくんと頷くと、尻の間からぬるりとしたものが出て行った。
「んあ、……ん……」
太いものを抜かれて空洞になったそこに、空気が入り込んでひやりとした。けれどすぐに温い汁が出てくる感覚があり、背が粟立つ。
「あ……」
後ろから尻を割り開かれ、冷たいものが当てられた。もうわかっている。ライルが手に持つ瓶の口だ。
ごりごりと何度か会陰を擦られ、瓶は離された。
「……う、ん……」
「座りなさい」
どろどろの身体に敷布を被らされ、元のように石の長椅子に座らされた。左には同じように敷布を被ったタリアス、右には既にかっちりと衣服を着こんだライル。
劇場を見下ろせば太鼓の楽隊と頭巾の男たちの姿はなく、頭と両手両足に花輪をつけた少年が、腰に白い布を巻いただけの姿で一人立っていた。
「彼が新たに選ばれた神官候補生だ。男の精を受けながら自らは五体の穢れを出し切り、浄化された。彼はまっさらな存在となったのだ」
タリアスがユノンに囁く。
右か、左か、真ん中か。どこにいた少年かも思い出せない。みな聡明そうな綺麗な少年たちだった。
けれど残った彼の疲労困憊に青ざめたような顔、時折よろめく脚は、儀式の凄絶さを物語っている。
「陛下、お種を」
はっと舞台からすぐ下の席に視線を移すと、ユーティスがタリアスに向かい手を差し出している。タリアスはその手に底に白濁の溜まる瓶を渡した。
一瞬だけ、ユノンは兄と目が合った。しかし何も言葉を交わさず、ユーティスは王族席に一礼し舞台に向かい階段を下りていく。
こんこんと扉を叩く音がし、杯を載せた盆を抱えたベルネラが入って来た。
「大変お疲れ様でございました」
そう言い、冷たい水を配ってくれた。ユノンは受け取りながら、すでに冷えてしまった身体には温かい茶の方が良かったと、ぼんやりと心の中でごちた。
やがてユーティスは壇上に上がり、少年に瓶を手渡した。
受け取った少年は王族席に向かい、恭しく頭を下げた。そして跪き、青く光る泉に向かい瓶を逆向ける。
粘度のある体液は、ゆっくりと瓶の内面を伝い泉へと落ちて行く。まるで神聖なものであるかのように、少年は真剣な眼差しで欲望の果てを見つめている。
ちゃぷん……と、わずかに水面に波が立った。ゆらゆらと、天井に反射する光もさざ波のように揺れている。
いかに王の子種であろうと、あんなものに波を起こすような力があるはずもない。ユノンは大した演出だと感心しながら少年の初仕事を眺めていた。
しっかりと中身を出してから瓶を置くと、少年は両手両足の花輪を外し、泉に捧げた。花輪たちはうねる水面に呑まれ、すぐに沈んでいった。
「湖の神が祝福している」
タリアスが感嘆の色を滲ませ呟く。
「この美しい夏至の日に、新しい神官候補生の誕生を祝い、私たちの子宝の願いを聞き届けてくださろうとしている」
泉の水はますます波立つ。小さな島になった舞台や石の橋にぶつかり、白く弾ける。退場しようと橋を渡る少年の脚は濡れた。
タリアスは嬉し気にユノンを抱き締め、接吻した。先ほどまで一時剣呑としていた夫が喜んでいる。よかった。
けれどユノンにはどうしても、湖が祝福しているようには見えなかった。
ただの演出にしても、小さな波にはどことなく荒々しさが感じられる。祝福というより、泉から感じられるのは負の感情だった。
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