底辺おっさん異世界通販生活始めます！〜ついでに傾国を建て直す〜

異世界初心者

街中デート

　こんなかわいい、しかも領主令嬢が僕に迫って来るなんて何か裏があるに違いない……

　「いつもはファミリア国内の貴族や身分の高いという中年おじさんが言い寄って来るから、私も歳頃の女の子になった気分だわ！」

　「モテるんだね！」

　「違うのよ。領主の娘という立場に寄ってくるのが多いの。私も無下に振って、お父様が困る事になってもいけないし……」

　「そうか……領主の娘も大変なんだね。」

　「そうなのよ！あ！！言ってるそばから……アキラ話を合わせてね！」

　目の前には馬車から降り、腹の飛び出た脂ぎった男がこちらに歩いて来ている。
　
　「おやおや！ニコル様ではありませんか？こんな所で！いや神様の思し召しかな？今日はどうなさいました？」

　ニコルはスカートの裾を両手で持ち、貴族の挨拶をした。

　「ディマジオ様御機嫌麗しゅう！こんな所でお会い出来るなんて感激ですわ！今日はお父様の大事な客人にキリシアの街中を案内して差し上げていた所です。」

　「ほう！ロレーヌ様の大事な客人とな？それはそれは！はじめましてワタクシは公爵のイングヴェイ・ヨハン・ディマジオです。」

　「ご丁寧にありがとうございます。アキラと申します。」

　「ディマジオ様、せっかくお会い出来てもっと楽しいお喋りをしたいのですが、私達にはこの後予定がありまして……残念ですわ。」

　「そうですか。ニコル様もお忙しい身。また後日ゆっくり過ごしましょう。それでは次回の面会日を楽しみにしてますよ。」

　「私もですわ。ディマジオ様とゆっくりお喋り出来る日をお待ちしています。それでは失礼致します。」

　ニコルは再びスカートの裾を少し捲り上げ、挨拶をした。

　ディマジオは、僕にも会釈をして馬車に戻って行った。

　ディマジオの姿が見えなくなるとニコルは口を開いた。

　「あー、あいつに合うなんて！今の嫌味な奴は、この国の代々続く公爵なの！手広く貸金業をしていて、領主といえどもお父様も奴から国家財政のために大金を借りているのよ。」

　可愛らしいニコルの態度の急変に僕は戸惑いを隠せなかった。

　「奴は、借金の返済の猶予をちらつかせて、毎月私との個人面会を要望しているの。その時に私の手や足を嫌らしく触って来て……あーやだ！思い出しただけで気持ち悪い！」

　「返済猶予のために個人面会を断れないんだね……税金で借金を返せないの？」

　「ここ数年は日照りなどで領内の税金があまり入らず……他の領主はキツく取り立てたり容赦なくしてるみたいだけど。ウチはお母様も庶民の出身だし、お父様も困ってる方に優しくて……そういえばあの脂ぎった公爵は、お母様の結婚の時も親子で結婚に反対していたらしいの！あー悔しい！！」