底辺おっさん異世界通販生活始めます！〜ついでに傾国を建て直す〜

異世界初心者

説得

　「襲撃して来た盗賊を全員捕らえたと？」

　「夜で暗かったので、はっきりとは言えませんが、昨日一晩盗賊の仲間の援軍は現れませんでした。しばらくは警戒しないといけないとは感じていますが……」

　「アキラ様、私共の言いたかった事はまさにそれなのです。ザッカルニア領ではここ数年日照りや水害が立て続けに起こり、食料事情が良くありません。食べる物に瀕していますと他人の所有する食べ物を奪おうとする輩が現れます。」

　「奪おうとする者を捕らえるのが、税を受け取っているあなた方の仕事では？」

　「確かにおっしゃる通りです。しかし次々に奪おうとする輩を捕らえて厳罰に処しても、奪おうとする輩は後を断ちません。原因は貧しさなのです。」

　「……確かにそうかも知れません。しかし貧しさから救うのも領主の仕事ではないのですか？」

　「それもまたおっしゃる通りです。しかし私共には、この貧しさを改善出来る方法を知りません。お願いです。アキラ様このザルト村を発展させたように、ザッカルニア領の民のためにも力を貸して貰えませんか？」

　「………」

　確かに言っている筋は通っている。

　食べれないから、人の物を奪う。奪わないようにするには、厳罰ではなく、生きていけるだけの食料である。税を取っているのに、領民の役に立てない領主側の人間こそ諸悪の源ではないのか？

　「貧しい村には、税の免除や減額はしないのですか？」

　「もちろんしっかりと調査をして貧しい村には税の免除や減額を実行しています。ザルト村にも３年間の税の免除をしている筈です。」

　なるほど、苦しい領民からむしり取るほど、悪い領主ではないという事か。

　「横から意見する事をお許し下さい。アキラ様、助けに行かれて下さい。」

　「ミーヒャ！？何で？僕はこの村が気に入って住んでいるんだよ？」

　「もちろん私を含めて村人全員はアキラ様に感謝しています。生き死にの境界にいたザルト村の人々を何の見返りもなく助けて頂いて感謝の言葉もございません。さらにこの村がこんな発展したのもアキラ様のお力のおかげです。」

　「それじゃなんで？」

　「アキラ様しか救えないと思っているからです。私は今まで常に死の恐怖を感じて世界が暗いものと感じていました。しかしアキラ様との出会いから、世界がこんなに明るいものだと知りました。アキラ様は多くの人々に明るい世界を照らす事が出来る方なのです。」

　ミーヒャが言っている意味も分かる。

　「アキラ様お願いです。首都キリシアに来て領主にお会い下さい。ザッカルニアをお救い下さい。」