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新天地

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 女神像の明るい輝きは消えていった。

 しかし私の手元には分厚い本が確かに存在していた。女神様からこの本を授かったのだ。

 宿に戻るなり、受け取った本を広げてみた。本には、この国では見たことのない品々が、説明書きと共に記載されている。

 なになに?洗濯バサミ…物を摘んで固定出来る物か…説明文と構造を理解した。

 「洗濯バサミよ出ろ!」

 とりあえず50個ほど作製してみた。

 これも簡単だが良さそうだ。ハンガー…服を干す時に使う物か…この世界では紐にくぐらせ干している。簡単だが便利な物だ。これも50個ほど作製してみた。

 他にも本に載ってあったペットボトル、ティッシュペーパー、ウェットティッシュ、ビニール袋を作製してみた。

 翌日から、実演販売のように、品物を説明して実演すると、珍しい品々に、日用品は飛ぶように売れていった。人通りの少ない方だった私の店の前には多くの人々が押し寄せ、人集りが常に出来るようになっていた。

 『ここだ!ここだ!人が多いな!』

 馬車に乗った身なりの良い男性が私の店の前で降りてきた。

 開店初日に高級な食器セットなど色々買ってくれた男性だ。

 『今日も買い物に寄らせて貰ったよ。前回買った品々が実に評判良くてね。お客さん、ちょっとごめんなさいよ。商品を見せておくれね。』

 馬車で買い付けに来たこの男性は、またしても色々な商品をあるだけ買い取っていった。

 『私は王都[ルーミエム]を拠点に、手広く商売をしている《イノクチ商会》のイノクチという者だ。前回買った高級な食器も貴族の方々に凄く評判が良くてね。もし良かったら専属契約させて貰いたいのだけど?いかがかな?』

 つまり私達の商品を買い取って、それを王都の人々や貴族に転売しているようだ。買い取ってくれるのは有難いが、安く設定している私達の商品を転売していると聞いてはいい気はしなかった。

 「私共は、細々と自分達で作製して販売してるだけです。王都にまで商売の手を伸ばそうとは考えていません。」

 やんわりと断りを入れた。

 『そうか…残念だが…買いに来たら売ってはくれるんだろ?では定期的に買い物に寄らせて貰うから、その時は是非頼むよ。』

 この件以降、私が作製する品物には、どこかにカシワギ商会のロゴとなる木のマークを入れるようになっていた。いわゆるカシワギブランドだ。しかし良かれと思っていたロゴが後々、尾を引くのであった。



 物件を探していた母親は、上物がない土地だけの物件を見つけてきた。広い通りに面しており、人通りも結構ある。以前ここには、古い木造住宅が建っていたそうだが、跡継ぎが居らず空き家となったらしい。空き家になると家屋の劣化は早いもので朽ちていった建物を近年、建て壊したようだ。相続した血筋の者が、この土地を売り出しているようだ。
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