上 下
16 / 33
新天地

16

しおりを挟む
 残り4セットを作製して持ってきた私は、ポーションを手渡してみた。

 「怪我など身体の悪い所を治す水薬です。試してみられますか?」

 『飲んでもいいのかい?』

 「どこか身体の悪い所がありますか?あるのなら是非飲んでみて下さい。」

 『最近、目が見えにくくなってきてな。じゃ試させて貰うよ。』

 『うわ!はっきり見えるぞ!何が起こったんだ?この水薬の効果かい?』

 『これもまだ在庫があるかい?凄いなこの店は!』

 店の前で、大声で騒いでいると人が次第に集まってきている。店前には、木製のコップ、皿、スプーン・フォークしか置かれてないが、その商品も気になっているようだ。

 ついには、男は木製の食器まで全て買い上げ、弟が男の馬車まで、荷物を運ぶ事になった。

 ガラス製のコップなど高級品は、他に客には手が出ない様子だったが、木製食器は、他の客も購入していき何セットも売れていった。

 順調な初日の売り上げだった。

 翌日以降、母親は露店には同行せず、店舗の相場を調べ、物件を探していた。

 店を出して数日が経つと食器類は、口コミで女性に人気が出ていた。ポーションも冒険者達の間で噂になっているらしく、かなりの数の売り上げがあった。

 順調に売り上げが上がっている事に私達一家は安堵し、これからの生活を考えていた。屋台で露店商を続けるのではなく、やはりしっかりとした店を構えたい。母親が調べてくれた物件によると、購入するには、資金が足らないが、貸物件ならば、このまま売り上げが上がり、手持ち資金が増えるとなんとかなりそうだった。

 商売の帰り道、私達は、これからの商売の発展を祈願するため、見つけた教会に立ち寄った。

 女神像はどこも同じ創りのようだ。女神像に跪き、順調な商売への感謝と今後ますますの発展を祈願して祈りを捧げていた。

 すると聖女スキルを授かった日のように、女神像が明るく輝き、私の目の前に女神様が現れた。ビックリしているのは私だけで、他の家族には見えていないようだ。

 《貴方にスキルの事を説明しなかったために、大変な目にあったようですね。貴方の聖女スキルは【錬金術】と言います。もう使いこなし始めているようですが、貴方が想像した物を、実際に具現化するスキルです。生物や通貨は具現化させる事は出来ません。このスキルを使いこなす上で必要になるものが想像力です。そのヒントに少しでもなればと、この本を渡しておきます。貴方達の行いは、上空から見ています。世界の安寧のために働くのですよ。》
しおりを挟む

処理中です...