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第2部

二日酔い

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 ウィーヴィルもひっくり返って寝ている。ドラゴンがひっくり返った様はなかなか御目にかかれるものではない。

 「おい、ウィーヴィル起きろよ!」

 ウィーヴィルを揺するが、鼻から煙が出るばかりである。

 「おい!」

 『もう飲めんぞ!』

 「飲まなくていいよ。起きろよ!」

 寝起きの悪いドラゴンを起こすのにかなりの時間を要した。

 『飲んでる時は良いが、二日酔いには困ったものだな……』

 「ドラゴンも二日酔いをするなんて初めて知ったよ。」

 ようやく動けるようになった僕達は、竜人族の長老に話を聞きに行く事にした。

 僕達はすっかり竜人族に溶け込んだ様で、道を通る最中にも、あちこちから身体を叩かれていた。ドラゴンには、一定の敬意を払っている感じがしている。

 『おい、サマークル起きてるか?』

 ひときわ大きな横穴の前で、ウィーヴィルは低い声を響かせた。

 「おう、入っていいぞ!」

 横穴の中に黒竜ウィーヴィルは入りきらず、上半身だけを突っ込んだ姿勢であった。

 「で、なんだったかな?」

 「人族でかつて1人しかなし得なかったというSランク冒険者を知っていますか?」

 老竜人サマークルは、考え込んでいる。鱗には所々剥がれた形跡があり、鱗がない部分にはこけが薄っすらと生えている。

 「Sランク冒険者か……いや、やはり知らんな……」

 「そうですか……創造魔法を操り、様々な品物を作製するらしいのですが……」

 「創造魔法とな……私の産まれるはるか昔に、邪悪な魔法で竜人族を奴隷の様に使役していた人族が居た昔話は聞いた事はあるけどな……」
 
 !?

 「それは、どんな昔話ですか?」

 老竜人サマークルは、子供に聞かせるように昔話を語り出した。

 「むかしむかし、ある所に竜人族は幸せに暮らしていました。そこへ1人の人族が現れました。その人族の男にひと睨みされると、竜人族は身体が固まった様に動けなくなりました。動けなくなった沢山の竜人族は、男の作った団子を食べると動けるようになりましたが、男の言いなりとなってしまいました。男は言いなりにした多くの竜人と共に、何処かに行ってしまいました。数年後、男の元から逃げ出す事が出来た、1人の竜人がボロボロになって戻ってきました。人族の男は、耳長族と短足チビ族にも団子を食わせ言いなりとしました。人族の男は、創造魔法と呼ばれる強力な魔法を使い、お供を従え邪悪な巨大トカゲをやっつけてきました。巨大トカゲの財宝を得た人族の男は、それ以降誰にも姿を見せなくなりました。」

 「という話じゃ。」
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