ぽっちゃりおっさん異世界ひとり旅〜目指せSランク冒険者〜

駆け出し冒険者

初狩猟

　［宿り木］で食べた角ウサギのステーキの素材であろう。

　他の冒険者に取られる前に、依頼紙を急いで剥がし、受付で受注する。

　状態が良ければ、［角ウサギの肉］以外に、角、毛皮もギルドが購入してくれるらしい。

　ギルマスの初心者講習で教わった、動物が良く出現する場所に向かう。

　途中、薬草の群生地もあるので、【探索】で見つけた薬草類を片っ端から採取しておく。

　【探索】に点滅した点が表示された。名前表示が出ておらず［薬草類］ではない。

　風下から慎重に近付くと、額に角が生えているウサギ［角ウサギ］であった。

　僕は集中して「火の玉よ！出ろ！」と念じる。

火の玉が［角ウサギ］に向かって一直線に飛んでいった。

　ジュッ！

　と焦げた音がしたが、致命傷にはなっていない。

　続けてもう１発火の玉を発射した。

　２発目の火の玉が命中すると、断末魔をあげて、［角ウサギ］は絶命した。

　初めて動物の命を奪い、僕の鼓動が早まっている。

　焦げた匂いがする［角ウサギ］に近付き、アイテムボックスに収納してみた。

　［角ウサギの肉✖️１］
　［角ウサギの焦げた毛皮✖️１］
　［角ウサギの角✖️１］

　毛皮を剥ぐ必要もなく、解体されて収納していた。実に便利である。
　
　火魔法では、毛皮が焦げ価値が下がる事に気がついた。

　「燃やすのではなく、凍らせるのはどうだろう？」

　と閃き、生えている木に向かって

　「凍れ」と念じてみた。

　枝葉がパリパリと凍りつき

　ピコン♪

　『冷凍魔法レベル１を習得しました。』

　【探索】に次の［角ウサギ］の反応があった。先ほど名前が表示されなかったが、１度採取や討伐を経験すると名前が表示されるようだ。

　［角ウサギ］に向かって「凍れ」と念じてみた。

　パキパキ！

　［角ウサギ］は全身氷漬けになり絶命した。

　アイテムボックスに収納してみると、今度は毛皮に損傷がないようだ。

　時間の許す限り、狩猟していこう。

　［角ウサギ］を何匹か狩猟した後、先程より大きな点滅している点が表示された。

　名前表示がない。［角ウサギ］ではない動物だ。初心者講習で学んだ通り、風下から近付いてみると、大きなイノシシがいた。

　【鑑定】してみると［ブタイノシシ］である。

　集中して「凍れ！」と念じてみた。

　パキパキ！

　身体が大きく全身は凍らない。

　『ピギャー！！』

　［ブタイノシシ］は怒っているようだ。

　今使える魔法でなんとか出来ないか考えた。

　［ブタイノシシ］が僕の存在に気付いて鼻息を荒くしている。

　次の瞬間、勢いよく僕の方に突っ込んで来た。

　僕は［ブタイノシシ］の足元に、土魔法で穴を作った。

　『プギャァー！！』

　狙い通り［ブタイノシシ］は穴に足を取られた。

　今の僕の土魔法では、［ブタイノシシ］の全身を落とすような大きな穴は作れなかった。

　這い出てきそうだ。

　「凍れ！」「凍れ！」

　何度も行うが、身体が大きく致命傷にならない。

　「切り裂け！」

　風魔法を［ブタイノシシ］の首に向けて放った。

　シュパーン！

　首と胴体が切り裂け、赤い血が吹き出ている。

　「エグいな……」と思いつつも、アイテムボックスに収納してみた。

　［ブタイノシシの肉✖️１］
　［ブタイノシシの牙✖️１］
　［ブタイノシシの毛皮✖️１］

　血だらけだった［ブタイノシシ］は解体されて収納されたようで、ひと安心した。

　日が暮れてきており、僕は街に帰る事にした。