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2.娼婦らしくなくとも ※

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(え!?)

「……あ、あの、やっぱり、おいや……でしたか……?」

(調子に乗りすぎたかしら……)

 しゅんとしたアルヤの口元に、手を伸ばしてエーギルは唇のはたを拭う。どうやら白濁が垂れていたらしい。首を振ったエーギルは苦笑いをする。

「いや、気持ち良かったが……。出てしまったからな。もう、俺は帰らなくては」

 ズボンをずりあげようとした彼の下半身はしかし、まだ猛って満足していないと訴えかけている。

「お時間がないのですか?」

「いや、今日は明日の朝まであけていた。もしかしたら、と思ってな」

「もしかしたら?」

「評判のあなたなら、朝までつきあってくれるのではないかと……」

 ため息を吐いたエーギルに、アルヤはきょとんとする。

(ひょっとして……)

「一晩あいてらっしゃるのでしたら、まだこちらはお元気なようですし、その……わたくしもまだですし……そばにいてくださいませんか?」

「だが、もう一度シてしまったからな。どんな形であれ、一度出たらそれでしまいだろう?」

(やっぱり……一度だけだって言って他の娼婦に断られていらしたのね)

 困ったように言ってはいるものの、拒まれることを慣れきった様子のエーギルに、アルヤはまたも胸の奥がきゅうっと鳴る。

(これを言うのは、娼婦らしくないわ。けれど……)

「いいえ……他の方なんて知りませんわ。エーギル様のお時間が許すのでしたら、わたくしを朝まで可愛がってくださいませ」

 意を決してアルヤが言えば、ぽかんとしたエーギルがやがてくしゃりと顔を歪めて苦しそうに笑む。

「あなたは……勘違いしそうになるな。俺にだけ、こんな優しいのかと」

「勘違いではありませんわ。その、わたくし」

「いい、皆まで言うな」

 ふっと笑んだエーギルは、脱ぎかけだったシャツを脱ぎ捨てて、アルヤを押し倒した。そうして胸元の緩んだ彼女のドレスを肩からずらして胸を露わにさせながら、彼はアルヤの唇と重ね合わせる。

(あ。さっき、飲んだのに……)

 案の定、変な味がしたらしい。エーギルは眉間に皺を寄せたが、くくっと喉を震わせて愉快そうに笑った。

「苦いものなのだな。こんなものをあなたは飲んでくれたのか」

 そう言ってまたすぐに唇を重ね合わせると、ぬろぬろと舌を絡めてその口内に残った苦味を分け合うように深く吸う。

「ん……ふ……んんっ!?」

 不意にエーギルの手が乳房に触れて、中央の尖りを指でつまんだ。急な愛撫に驚いて息を荒くしたアルヤに彼は手をとめて、彼女の顔を窺う。

「すまない。ここに触れるのは初めてなんだ。痛くはないか?」

「いえ……き、きもちよくて、びっくりしただけです」

「っそうか」

 ぐっと奥歯を噛んだエーギルは首筋へと舌を這わせはじめた。

「あっん……っ」

 曲げた指の背で硬くなった尖りをこすられると、こり、こりと揺れてピリピリと柔らかな快感をアルヤに伝える。

「あなたの胸は柔らかいな……アルヤ。これはどうだ?」

「ふぁっあ、き、もちいい、ですわ……あっ」

 唇が胸へと到達し、口に含まれて乳首が甘噛みされる。そのまま尖らせた舌で中央の周りをこねるようにねぶられて、アルヤの声は甘くなっていく。

「あっあっ、そんな、は、じめて、だなんて……うそ……あんんっエーギル様……」

 腰を跳ねさせながら喘ぎ声が止まらない。緩急をつけて舌で嬲られると、胎の奥に響いて触れられてもいない秘部から蜜がこぼれた。

「いや、胸に触れるのは初めてだ。だが、こちらは満足してもらえると思う」

「……?」

 ちゅぱっと音をたてて胸から口を離し、エーギルは腹あたりまでずりおろしていたドレスを一気に下に引き抜いて、アルヤを産まれたままの姿にした。ベッドに横たわり無防備な状態の彼女を見て、エーギルは目元を緩ませる。

「綺麗だ」

 穏やかな声で、どきん、とアルヤの胸が跳ねる。

「ありがとう……ございます」

(こんなの、何度も言われ慣れているのに……エーギル様が、かっこいいから……?)

 とくとくとうるさい心臓をおさえながらアルヤが答えれば、エーギルは彼女の股に手を差しこんだ。

「あ……っ」

「もうぬるぬるだな……アルヤは濡れやすいのか?」

「それは……ひゃぁんっあっそれ……あっ」

 秘部の溝を割るように指を這わせて、にゅうっと蜜をすくう。その指先に触れた肉の芽は、胸への愛撫でもはや潤滑液を必要としないほどに濡れそぼっている。いや、エーギルの太く熱い肉棒を舐め慰めているときからすでに、彼女の蜜壺は熱く熟れていたのだろう。

「ふぁっあっぁぅっえ、ぎるさま……っあああっ」

 指が、ねっとりと肉の芽をこねて虐める。固く膨らんだ快楽の芽は指が左右に動かされるたびに、こりゅ、こりゅ、と動き、親指で潰されるとぬめりで滑ってこすられる。そのたびにきゅんきゅんと蜜壺がうねって奥がせつなくなった。

「あ、えーぎる、さま、も、もう……挿れて、くださいませ。はやく……なか、欲しいです」

 愛撫で徐々に開いてきていた股を、意識的にさらに開いてみせたアルヤははしたなくもねだる。エーギルに差し出した秘部はぱっくりと口を開いて、ヒクついた入り口から新たな蜜が垂れるのが丸見えだ。誰だって夢中で腰を沈めたくなるそのお誘いに、エーギルは首を振った。

「まだだ」

「そんな……!」

 開き気味だった股をさらに大きく開かせて、エーギルは彼女の股に顔を寄せる。そうして、指で虐めていた肉芽を今度は舌で嬲り始めた。

「ひゃあああんんんっ!」

 同時に指が中に二本入ってきて、ぐちゅぐちゅと入り口の浅いところを責め立てる。身体の大きいエーギルの指は太く、節くれだった指が二本入っているだけで、細めの男根が挿入されているかのような錯覚を覚える。しかもそれが実に器用に動いて、アルヤの蜜壺の感じるところを確実に探り当ててきた。秘部から漏れる愛液をじゅるじゅると吸い上げながら、舌では肉芽をこね、指は悦いところを繰り返し押されて、アルヤの口からはひっきしなしに嬌声が漏れる。

「あっぁっそんな、ぁっやぁんんっきもち、よすぎて……だめ、だめです! え、ぎるさまぁ……!」

(舌が大きいから!? あそこがまるごとエーギル様に食べられているみたい……!)

 蜜壺をうねらせて指を締め付けながら、アルヤは絶頂が近いことを悟る。男をイかせるのはアルヤの仕事であって、アルヤは奉仕される立場ではない。だから、今まで手淫だけでこんなふうに絶頂させられたことはなかった。その初めての体験をしようとしている彼女は、肉棒で与えられるのでない刺激に、目をチカチカとさせながら喘ぐ。

「やめ、あああっだめ、も、やめ……っ」

「だめだ。俺のを挿れるのに、まだ狭い」

 言いながらエーギルは、指を三本に増やす。それだけで普通の肉棒よりも大きく、太い。きっとそれは、娼婦たちに拒まれてきたエーギルが、彼なりに考えた方法なのだろう。秘部へだけ愛撫をしっかりやり、解れきってから挿入するのだ。

 ぎちぎちになった蜜壺を、指が容赦なく暴いて、舌で執拗に快楽の芽を虐められ、これ以上の快感に耐えるのはもう無理だった。

「だめえええぇえええ……っ!」

 叫び声と共に、アルヤはぎゅうっとエーギルの指を締めつけて、がくんがくんと胎を揺らしながら絶頂に達した。

「あ、あ、…………は、ぁあ、あ……」

 浅く息を吐きながら、絶頂の波を堪えるように受け流すアルヤに、止まっていたエーギルはまた指を動かしてなかをかき混ぜる。

「だめっいま……ぁぁあっ」

 だめ押しの愛撫を受けて、アルヤはがくがくと腰を揺らして痙攣した。長い絶頂がおさまったところでようやく指をゆっくりと抜いて、エーギルは笑んだ。

「少しはアルヤを乱せたか?」

(ちょっとどころか……!)

 息も絶え絶えに呼吸を繰り返すアルヤは、うまく返せずに、胸を上下させている。

「だが、これで俺のも入るだろう」

 エーギルはアルヤの太ももをつかむと、熱い猛りを割れ目に押し付けた。途端に、先ほど絶頂で苦しかったはずなのに、奥は太いものを求めて再びうねる。

「ん……き、てください……」

「ああ」

 甘えた声に応えて、エーギルがぐっと腰を沈める。

「あんっ」

 だが、簡単には入っていかない。彼の男根はあまりに太すぎる。

(握ったときに太いとは思っていたけど……彼の言う通り、しっかり解さなきゃ無理だったか、も……あっ!?)

 ずにゅう、と唐突に巨根が侵入してきた。蜜壺をこれ以上ないくらいに広げて、みちみちになった奥を更に広げようと、肉棒が胎を押し上げる。

「んぁぁあっ」

「痛いか?」

「ちが、あっあああっ」

 最奥まで到達して、胎がごつん、とノックされる。だが、肉棒は彼女の中に納まりきっていない。さきほど絶頂したばかりの身体が、太いもので満たされて強すぎる快楽に喘ぐ。

「やはり根元までは無理か……」

 はくはくと息をしているアルヤをよそに、エーギルは結合部を見下ろしてそんなことを呟いた。

(うそ、これでまだ……!?)

 奥まで隙間なくぎちぎちだ。そう思うのに、まだあるという。根元まで呑み込んだら、一体どうなるのだろう。

 そう思ったとたんに、広がりきった蜜壺がうねった。

「っアルヤ、もう少し緩めてくれ」

「だ、だって……エーギルさまの……熱くて……ぁぅ……う、動いてください。奥を、わたくしの奥を突いて」

 本当ならまだ、大きさに慣れていないから静止したまま待った方がいいのだろう。だが、待ちきれなかった。

「……ゆっくり、な」

 宣言どおり、もどかしいとも思えるほどに、エーギルは腰をゆっくりと動かす。ずるる、と引き抜いてにゅうっと奥まで挿入しなおす。ただそれだけの動作でピストンに工夫も何もないが、太すぎる男根は彼女のよがるポイントを全部刺激して、奥にまで到達したところで胎を揺さぶられて口からは勝手に甘い声が漏れる。

「あ、あ、え、ぎるさま……あっんんっそこ、あぁぁっ」

「こうか?」

「ひああああ……っ」

 奥をグリグリと押されて、胎を揺さぶられる。それがどうしようもなく気持ちがいい。普段なら、いかに客に気持ち良くなってもらうかなど、計算を頭の中で巡らせるのに、今の彼女にはそんな余裕がない。

「もう、そろそろ……激しくしてもいいな」

 宣言とともに、彼の抽送は早くなり始めた。ずるるるる、と体内で響いていた音が、水を跳ねさせたちゅとんちゅとんという音に切り替わる。

「あっあっえぎ、あぁあっきもちぃ、い、えぎるさま、きもちい、ですか? ぁっあああっ」

「っああ」

 途端にピストンは激しくなり、アルヤの太ももが高く持ち上げられてばちゅばちゅと強く腰が打ちつけられる。

「あぁっあっぁっんぁっあっはげし……あんんっ」

 いつのまにか肉棒は根本までしっかり彼女の中に侵入している。肉を抉り、泡立った愛液が二人の間で跳ねてずりゅずりゅと滑る。ベッドは軋んで激しく揺れているが、彼らはもうそんな音は耳に入らず、ただ二人の息遣いと喘ぎ声ばかりに集中していた。

「えぎ、るさま、はだ、くっつけ、て……ああっやっ」

「あなたを……潰すから、だめだ」

 そう言う彼は、上半身を起こしたままアルヤを突き上げている。

「んっ」

 エーギルの拒絶にもかかわらず、アルヤはまるで恋人に甘えるかのように両腕を彼に向かって伸ばした。

「っあなたは……また……っ」

 その腕をつかんで引っ張ると、勢いよくアルヤの身体を起こし、エーギルは繋がったまま彼女を自らの膝の上に乗せる。

「ひゃんっこれ、あっつ、よ……っ」

「これで触れられるだろう」

 背に腕を回したエーギルは、言いながら突き上げを再開する。先ほどと違って根本までは入らないが、対面では角度が変わって別の場所を抉られる。そして体重が乗るせいで、より強く胎がノックされた。

「あんっああっえぎ、るさまぁああっ」

 ぎゅうっと抱き着いてアルヤは必死に叫ぶ。エーギルが『潰す』と言ったように、対面ですら抱き着けば彼の豊満な大胸筋に埋もれてしまいそうだ。だが、行為で汗ばんたその肌が愛おしい。

「は、あ、きもち、い……ま、またあああっイく……んんっぁああっ」

「く……っアルヤ、俺も……!」

 ばちゅんばちゅんと激しく突かれて、アルヤは背をのけぞらせた。

「んあああああ……っ」

 ぎゅううっと蜜壺がうねり、がくんと搾り取るリズムに合わせて、熱い迸りが勢いよく奥に叩きつけられる。

「あ、あ、あ、あ……」

 とぷ、とぷ、と何度か痙攣しながら吐き出された白濁は、アルヤの胎に広がっている。栓をしている肉杭は、熱を放ったがやはりまだ足りないらしい、今すぐピストンを再開するにはやや固さに欠けるものの太さを保っている。

「はあ……」

 絶頂の納まったアルヤは、こてん、とエーギルの胸に頭を預けて、そのまま荒い呼吸を吐く。鼻先には彼の汗のにおいが刺激して、また奥が揺れた。

(エーギル様、こんなにお元気なのに、今まで一回で済まされていたなんて……さぞお辛かったでしょうに)

 彼を哀れに思えば、また胎が揺れて、胸がきゅうっと詰まった。

「アルヤ、そんなふうに締めつけられると……」

 ぐっと眉間に皺を寄せたエーギルが、そっと彼女の身体を離そうと肩に触れる。だが、逆に彼女はエーギルの胸に頭を預けたまま、上目遣いで彼を見つめる。

「まだ……満足なさってらっしゃらないのでは?」

 快楽に耐えかね、涙をこぼした彼女の瞳は潤んでいる。柔らかくも滑らかな肌はしっとりと汗を帯び、彼女の甘い香りを漂わせている。大きな胸を押しつけての美女のお誘いを、断れる男などいないだろう。

「本当に……俺を最後まで相手してくれるのだな」

 言いながらエーギルは、アルヤに唇を落とす。それは次の行為を続けるという答えだった。

 その夜、空が白むまでずっと、アルヤの部屋からは嬌声が響いていた。寝かす暇を与えず、エーギルは吹っ切れたように彼女の抱いた。よがり狂い、胎がエーギルの子種でいっぱいになってなお、何度も突きあげられて、文字通り、アルヤは朝まで抱きつぶされたのだった。


***


 翌朝になって、エーギルは身支度を整えながらアルヤを振り返った。彼女は一晩中責め立てられ、後ろから突かれたり上に乗ったりと激しすぎたため、今は足腰が立たずベッドに寝そべったままだ。本来なら娼婦は部屋の外まで見送りをするのが慣習だが、今朝はどう考えても無理だった。

(わたくし、足腰はけっこう丈夫な方だと思っていたのだけれど……エーギル様は凄いわ……)

 だが、彼が身支度をする背中を見ていると、あのたくましい腕が自分の身体を暴いたのだと思いだし、身体が疼く。

(あんなに抱かれたのに、まだ足りないのかしら。でも……)

 しょせんは一夜の夢である。

(見た目も中身も、とっても素敵な方だと思うけれど……大金を積んだとおっしゃられていたし、もう来られないかもしれないわ)

 そんなことを思いながら、彼の姿を目にやきつけるようにアルヤは見つめる。身支度を終えたエーギルは大股でベッドに近づくと、ベッド前に跪いて、昨日と同じようにアルヤと目線を合わせた。

「アルヤ。その……無理をさせてすまなかった」

 横になったままの彼女に全く怒りもせず、エーギルは労わるように彼女の手をとる。

「いいえ。エーギル様はご満足されましたか?」

 尋ねに対し、彼は苦笑した。

「実のところ、まだ、あなたを抱き足りない」

(うそ、あんなにして……!? 絶倫って彼のことを言うのね!)

「だから、今夜もまたあなたの部屋に来てもいいだろうか」

「え……」

 仕事の顔も忘れて、アルヤはぽかんとする。

 彼女の予約は、連日埋まっている。だというのに、同じ男が二日連続で彼女を買えるわけがない。できたとして、それはとんでもない金を積んで間入りをする必要があるだろう。加えて、ここは普通の娼館とは違うのだから、コネだって必要だ。

「だめだろうか……」

「いえ、わたくし、またエーギル様にお会いできないかって思ってましたの。嬉しいです」

 本音が滑って口から出て、アルヤは自分でどきりとしたが、構わず微笑む。

「……そうか。では、今夜も、あなたを一人占めさせて欲しい」

「はい」

 返事には指先への口づけで返される。

(そんなのできないだろうけど……)

 ちょっぴり残念に思いながらも、エーギルもまた、娼婦に対するリップサービスを言っているのだろうと思い込むことにして、アルヤは微笑んで見せる。

(そうなったら、いいわ……)

 ほのかに淡い期待を胸に、アルヤは部屋から出て行くエーギルを見送った。
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