27 / 84
【フラグ折りも楽じゃない】
家庭派ヒロインのスキル総なめなのでは?
しおりを挟む
「アビゲイルさんに服を貸してもらったの」
さっきまで着ていた制服を畳みながらアウレウスに言う。
「そうでしたか。アビゲイルさん、ありがとうございます」
アウレウスが会釈して礼を告げる。補佐だとはいえ、なんでアウレウスがお礼を言うんだろう。
「いいいいいえ、元はと言えばわ、私のせいですから」
ブンブンと手を振ってアビゲイルは言う。
「あああの、それから、その制服、あああ洗わせてください、しし染みに、なってしまいますから」
「えっでも」
「おお預かりします」
さっと私から制服を奪うと、アビゲイルはシャワー室脇の手洗い場で、制服を洗い始めた。色の濃いソースもついていたが、見る間にその汚れが落ちていく。本当に熟練のメイドみたいな手さばきだ。
平民なら姓がない筈だけど、彼女には『シェロン』という家名があるから、貴族のはずなのに、メイドさながらのこの技術は一体どこで磨いたんだろう? 凄いな!
「凄いね、アビゲイル。ありがとう!」
「あっああ、そんな……わわ私のせいなので……」
ひとしきり汚れを落としたところでそう声をかけると、アビゲイルはまた恐縮する。
と、その時、予鈴が鳴った。
「あっお昼休憩終わっちゃう!」
「あああああすみません、すみません、私のせいで」
ぺこぺこと謝ってアビゲイルは今にも泣きそうだ。
「アビゲイルさんのせいじゃないよ! それに元々ギリギリに食堂来たのは私たちだし……」
あはは、と笑って言う。けど、このまま授業に行くのは流石にお腹がすいちゃうかなあ……。
「先生には、トラブルで授業に遅れることを伝えてあるので、大丈夫ですよ」
アウレウスはいつの間にか手に持っていた袋に、洗われた制服を入れながらそう言う。
「えっそうなの?」
「はい、まだクレア様は昼食を召し上がってませんしね」
私結構急いで着替えた筈なんだけど、あの一瞬で先生に連絡して戻ってきたのか、アウレウス。
「あー……でも、もう食堂締まってる時間じゃない? 食べられるものないよ」
苦笑いして私は言う。食堂の方からは後片付けをしている音がしているから、多分もう新しく作ってもらうのも難しいだろうな。
「私の食事は落ちてませんので、食堂に取り置いてもらっております。そちらをお召し上がりください」
「でもそれじゃあ、アウレウスのご飯がなくなっちゃうよ」
「私は一食程度抜いても、問題ございません」
反論すると、アウレウスは笑って言う。私がだめ! と言おうとしたその時、目の前にバスケットが差し出された。
「あ、ああの、もしよかったら、こちらを食べてください」
「これは?」
びっくりして問うと、アビゲイルはおずおずとそのバスケットを開けてみせる。中にはサンドイッチが入っていた。
「えっこれもしかしてアビゲイルさんの手作り!?」
「きき貴族の娘なのに、こんなみっともなくてすすすみません」
「えっ何が? すごい美味しそうだよ!」
掃除も洗濯もできて、その上料理までできるなんて、家庭派ヒロインのスキルを総なめしてるのでは? 眼鏡取ったら美少女だし、これは着飾ったら一気にモテてしまうパターンの子じゃん。
こんな設定モリモリの子が居たんだなあ! でも、ゲームにこんな子がいたのかどうか、本当に思い出せない。
「あっでも、これ食べちゃったらアビゲイルさんのお弁当なくなっちゃうんじゃない? だったらもらえないよ!」
「いいいいいいえ、私の分は、あるので! ……他の人に……渡すつもりだったんですが、い、いらなくなっちゃったみたいで……」
バスケットを持ったまま、俯いてアビゲイルは呟く。
その姿に、頭が一瞬白くなる。こんなシーンを見たことがある。あれは、ゲームの中で、グランツ・ゲムマの幼馴染が闇落ちした時のシーンだ。
……何で思い出せなかったんだろう。アビゲイルは、闇落ちする二人目の悪役令嬢だ。
さっきまで着ていた制服を畳みながらアウレウスに言う。
「そうでしたか。アビゲイルさん、ありがとうございます」
アウレウスが会釈して礼を告げる。補佐だとはいえ、なんでアウレウスがお礼を言うんだろう。
「いいいいいえ、元はと言えばわ、私のせいですから」
ブンブンと手を振ってアビゲイルは言う。
「あああの、それから、その制服、あああ洗わせてください、しし染みに、なってしまいますから」
「えっでも」
「おお預かりします」
さっと私から制服を奪うと、アビゲイルはシャワー室脇の手洗い場で、制服を洗い始めた。色の濃いソースもついていたが、見る間にその汚れが落ちていく。本当に熟練のメイドみたいな手さばきだ。
平民なら姓がない筈だけど、彼女には『シェロン』という家名があるから、貴族のはずなのに、メイドさながらのこの技術は一体どこで磨いたんだろう? 凄いな!
「凄いね、アビゲイル。ありがとう!」
「あっああ、そんな……わわ私のせいなので……」
ひとしきり汚れを落としたところでそう声をかけると、アビゲイルはまた恐縮する。
と、その時、予鈴が鳴った。
「あっお昼休憩終わっちゃう!」
「あああああすみません、すみません、私のせいで」
ぺこぺこと謝ってアビゲイルは今にも泣きそうだ。
「アビゲイルさんのせいじゃないよ! それに元々ギリギリに食堂来たのは私たちだし……」
あはは、と笑って言う。けど、このまま授業に行くのは流石にお腹がすいちゃうかなあ……。
「先生には、トラブルで授業に遅れることを伝えてあるので、大丈夫ですよ」
アウレウスはいつの間にか手に持っていた袋に、洗われた制服を入れながらそう言う。
「えっそうなの?」
「はい、まだクレア様は昼食を召し上がってませんしね」
私結構急いで着替えた筈なんだけど、あの一瞬で先生に連絡して戻ってきたのか、アウレウス。
「あー……でも、もう食堂締まってる時間じゃない? 食べられるものないよ」
苦笑いして私は言う。食堂の方からは後片付けをしている音がしているから、多分もう新しく作ってもらうのも難しいだろうな。
「私の食事は落ちてませんので、食堂に取り置いてもらっております。そちらをお召し上がりください」
「でもそれじゃあ、アウレウスのご飯がなくなっちゃうよ」
「私は一食程度抜いても、問題ございません」
反論すると、アウレウスは笑って言う。私がだめ! と言おうとしたその時、目の前にバスケットが差し出された。
「あ、ああの、もしよかったら、こちらを食べてください」
「これは?」
びっくりして問うと、アビゲイルはおずおずとそのバスケットを開けてみせる。中にはサンドイッチが入っていた。
「えっこれもしかしてアビゲイルさんの手作り!?」
「きき貴族の娘なのに、こんなみっともなくてすすすみません」
「えっ何が? すごい美味しそうだよ!」
掃除も洗濯もできて、その上料理までできるなんて、家庭派ヒロインのスキルを総なめしてるのでは? 眼鏡取ったら美少女だし、これは着飾ったら一気にモテてしまうパターンの子じゃん。
こんな設定モリモリの子が居たんだなあ! でも、ゲームにこんな子がいたのかどうか、本当に思い出せない。
「あっでも、これ食べちゃったらアビゲイルさんのお弁当なくなっちゃうんじゃない? だったらもらえないよ!」
「いいいいいいえ、私の分は、あるので! ……他の人に……渡すつもりだったんですが、い、いらなくなっちゃったみたいで……」
バスケットを持ったまま、俯いてアビゲイルは呟く。
その姿に、頭が一瞬白くなる。こんなシーンを見たことがある。あれは、ゲームの中で、グランツ・ゲムマの幼馴染が闇落ちした時のシーンだ。
……何で思い出せなかったんだろう。アビゲイルは、闇落ちする二人目の悪役令嬢だ。
0
お気に入りに追加
273
あなたにおすすめの小説


わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑
岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。
もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。
本編終了しました。
性悪という理由で婚約破棄された嫌われ者の令嬢~心の綺麗な者しか好かれない精霊と友達になる~
黒塔真実
恋愛
公爵令嬢カリーナは幼い頃から後妻と義妹によって悪者にされ孤独に育ってきた。15歳になり入学した王立学園でも、悪知恵の働く義妹とカリーナの婚約者でありながら義妹に洗脳されている第二王子の働きにより、学園中の嫌われ者になってしまう。しかも再会した初恋の第一王子にまで軽蔑されてしまい、さらに止めの一撃のように第二王子に「性悪」を理由に婚約破棄を宣言されて……!? 恋愛&悪が報いを受ける「ざまぁ」もの!! ※※※主人公は最終的にチート能力に目覚めます※※※アルファポリスオンリー※※※皆様の応援のおかげで第14回恋愛大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます※※※
すみません、すっきりざまぁ終了したのでいったん完結します→※書籍化予定部分=【本編】を引き下げます。【番外編】追加予定→ルシアン視点追加→最新のディー視点の番外編は書籍化関連のページにて、アンケートに答えると読めます!!
転生ガチャで悪役令嬢になりました
みおな
恋愛
前世で死んだと思ったら、乙女ゲームの中に転生してました。
なんていうのが、一般的だと思うのだけど。
気がついたら、神様の前に立っていました。
神様が言うには、転生先はガチャで決めるらしいです。
初めて聞きました、そんなこと。
で、なんで何度回しても、悪役令嬢としかでないんですか?
身分差婚~あなたの妻になれないはずだった~
椿蛍
恋愛
「息子と別れていただけないかしら?」
私を脅して、別れを決断させた彼の両親。
彼は高級住宅地『都久山』で王子様と呼ばれる存在。
私とは住む世界が違った……
別れを命じられ、私の恋が終わった。
叶わない身分差の恋だったはずが――
※R-15くらいなので※マークはありません。
※視点切り替えあり。
※2日間は1日3回更新、3日目から1日2回更新となります。

駆け落ちした王太子様に今更戻って来られても困ります。
木山楽斗
恋愛
聖女の選抜において、公爵令嬢であるファナティアは平民に敗北を喫することになった。
しかし彼女は、潔く敗北を受け入れており、むしろ平民の聖女を支えようと前向きな気持ちでさえいた。
だが聖女は、職務当日に行方不明となってしまった。
さらに相次いで、王太子もいなくなる。二人はほぼ同じタイミングで、姿を消してしまったのだ。
そのせいで、ファナティアは聖女としての仕事を請け負うことになった。
選抜において二番目の成績だった彼女に、自然と役目は回ってきたのである。
懇意にしていた第三王子ウルグドの助けも借りて、ファナティアはなんとか聖女として務めることができていた。
そんな彼女の元に、王太子が現れる。彼は聖女と駆け落ちしていたが、心を改めて帰って来たという。
ただ当然のことながら、それはファナティアとしても王国としても、受け入れられることではなかった。既に王太子に、居場所などはなかったのである。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

クラヴィスの華〜BADエンドが確定している乙女ゲー世界のモブに転生した私が攻略対象から溺愛されているワケ〜
アルト
恋愛
たった一つのトゥルーエンドを除き、どの攻略ルートであってもBADエンドが確定している乙女ゲーム「クラヴィスの華」。
そのゲームの本編にて、攻略対象である王子殿下の婚約者であった公爵令嬢に主人公は転生をしてしまう。
とは言っても、王子殿下の婚約者とはいえ、「クラヴィスの華」では冒頭付近に婚約を破棄され、グラフィックは勿論、声すら割り当てられておらず、名前だけ登場するというモブの中のモブとも言えるご令嬢。
主人公は、己の不幸フラグを叩き折りつつ、BADエンドしかない未来を変えるべく頑張っていたのだが、何故か次第に雲行きが怪しくなって行き────?
「────婚約破棄? 何故俺がお前との婚約を破棄しなきゃいけないんだ? ああ、そうだ。この肩書きも煩わしいな。いっそもう式をあげてしまおうか。ああ、心配はいらない。必要な事は俺が全て────」
「…………(わ、私はどこで間違っちゃったんだろうか)」
これは、どうにかして己の悲惨な末路を変えたい主人公による生存戦略転生記である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる