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【乙女ゲームのヒロインに転生していた私】
お兄様が迎えにきてくれたよ!
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「アウレウス様、バートン家の方がいらっしゃいました」
「わかった」
部屋の外から掛けられた声に、アウレウスは返事する。ゲームの中じゃわかんなかったけど、もしかしてアウレウスって教会の中では偉い人なのかな。設定では確か、私の2歳上だったよね。
何でサポートキャラなのに、年齢設定まであったんだろ、もしかして隠し攻略キャラ? ないない、だって私全部攻略したもん、そんなルートなかった。多分。
「クレア様。迎えの方がいらっしゃったようです。……歩けますか?」
心配した風にアウレウスが声をかける。
「大丈夫ですよ。行きましょう」
そう言って、ベッドを降りようとした瞬間、かくんと足の力が抜けて、転びそうになった。
すんでのところで、アウレウスが身体を支えてくれて、どうにか転ばずに済む。
「あ、あはは~なんか力抜けちゃって。ごめんなさい、もう大丈夫です」
笑って誤魔化しながら立ち上がろうとすると、アウレウスは私の手を握って難しい顔をした。
「光の魔力の目覚めで、まだ身体が回復しきっていないのでしょう。……失礼します」
「ギャッ」
アウレウスが私を、お姫様抱っこしてきたせいで、淑女にあるまじき声が出てしまった。なにこれ、恥ずかしすぎる、勘弁してよ~!
「ご安心ください、しっかり支えますので」
微笑んでアウレウスが私の顔を見るせいで、彼の髪が私の顔にかかる。やめてくすぐったい、イケメンビーム辛い……正直、乙女ゲームとかが得意じゃなかった以前に、前世の私も今の私も恋愛事なんてしたことがないんだって、困る!
ぬうううう、円周率を唱えて心頭滅却しよ……3.1417……いやだめだ、私、円周率をそんなに知らなかった。
「顔が赤いようですが、熱がおありですか?」
天然なのかな、このイケメン。誤魔化さなきゃ。
「ちょっと暑いだけですよ」
「そうですか? 私が抱き上げてから急に赤くなったように思いましたが」
にこりと微笑むアウレウス。あれ待って、この人わざとか? さっきのわんこ風味どこいった。
「暑いって言ったら暑いの!」
「さようでございますか。クレア様、ぜひこれからも、そのように砕けた話し方をして頂けると助かります」
くすくすと笑っているアウレウスが言う。もしかしてわざと怒らせてタメ口きかせたかったってこと? はぁ~わんこだったり腹黒だったりこの人よくわかんないわね。
「うーん、判った……」
「よろしくお願いします」
喋りながらもアウレウスは、どんどん歩いていて、私を抱えたまま教会の外までやってきた。
「お嬢様!」
「クレア! 大丈夫か?」
抱きかかえられた私を見て駆け寄ってきたのは、メイドのリーンとヒラルドお兄様だった。馬車から降りて、私が来るのを待っていてくれたみたい。
「お兄様、リーン! 私は大丈夫よ。心配かけてごめんなさい」
「いや、お前の謝ることじゃない。で、そちらは?」
ヒラルドお兄様の目線が、アウレウスに注がれる。心なしか怖い。
「お初にお目にかかります。私は神官見習いのアウレウス・ローズと申します。クレア様が歩くのがお辛そうでしたので、このようにお連れしたことをお許しください」
そう謝るのなら、早く降ろしてよ~!
「そうでしたか。神官様たちの手を煩わせてしまい、申し訳ございません。妹は私どもが面倒を見ますので、お引渡し頂けますか?」
うわぁ、ヒラルドお兄様とアウレウスの間に火花が散ってるように見える……ヒラルドお兄様、シスコンだもんなあ。
「いえいえ、煩わしいなんてそんな。よろしければこのまま馬車までお手伝いいたしますよ」
飽くまでニコニコ笑ってるけど、アウレウス何か怖いんだよなあ。
「あの、アウレウス、私もう歩けるから……」
「おや、そうですか? では仕方ありませんね」
仕方なくはないと思うなあ。
アウレウスは少し残念そうな顔で、私を降ろしてくれた。よし、今度は足に力が入るぞ。
「ではクレア様、後程正式にバートン家へ使いを送ります。またお会いしましょう」
「あ、うん。またね」
「また?」
ぴきぴきと青筋を立てているヒラルドお兄様。やめて、後でちゃんと話すから。
「ヒラルド様、クレア様、子爵様が屋敷でお待ちですわ。参りましょう」
リーンがいいタイミングで声をかけてくれたから、すんでのところで揉め事を回避できた。リーン、ナイスアシスト! こっちにこっそりウィンクしてくれる出来る女、可愛いぞ!
「お気をつけてお帰りください」
折り目正しいお辞儀をして、アウレウスは馬車に乗り込んだ私たちを見送ってくれた。
「わかった」
部屋の外から掛けられた声に、アウレウスは返事する。ゲームの中じゃわかんなかったけど、もしかしてアウレウスって教会の中では偉い人なのかな。設定では確か、私の2歳上だったよね。
何でサポートキャラなのに、年齢設定まであったんだろ、もしかして隠し攻略キャラ? ないない、だって私全部攻略したもん、そんなルートなかった。多分。
「クレア様。迎えの方がいらっしゃったようです。……歩けますか?」
心配した風にアウレウスが声をかける。
「大丈夫ですよ。行きましょう」
そう言って、ベッドを降りようとした瞬間、かくんと足の力が抜けて、転びそうになった。
すんでのところで、アウレウスが身体を支えてくれて、どうにか転ばずに済む。
「あ、あはは~なんか力抜けちゃって。ごめんなさい、もう大丈夫です」
笑って誤魔化しながら立ち上がろうとすると、アウレウスは私の手を握って難しい顔をした。
「光の魔力の目覚めで、まだ身体が回復しきっていないのでしょう。……失礼します」
「ギャッ」
アウレウスが私を、お姫様抱っこしてきたせいで、淑女にあるまじき声が出てしまった。なにこれ、恥ずかしすぎる、勘弁してよ~!
「ご安心ください、しっかり支えますので」
微笑んでアウレウスが私の顔を見るせいで、彼の髪が私の顔にかかる。やめてくすぐったい、イケメンビーム辛い……正直、乙女ゲームとかが得意じゃなかった以前に、前世の私も今の私も恋愛事なんてしたことがないんだって、困る!
ぬうううう、円周率を唱えて心頭滅却しよ……3.1417……いやだめだ、私、円周率をそんなに知らなかった。
「顔が赤いようですが、熱がおありですか?」
天然なのかな、このイケメン。誤魔化さなきゃ。
「ちょっと暑いだけですよ」
「そうですか? 私が抱き上げてから急に赤くなったように思いましたが」
にこりと微笑むアウレウス。あれ待って、この人わざとか? さっきのわんこ風味どこいった。
「暑いって言ったら暑いの!」
「さようでございますか。クレア様、ぜひこれからも、そのように砕けた話し方をして頂けると助かります」
くすくすと笑っているアウレウスが言う。もしかしてわざと怒らせてタメ口きかせたかったってこと? はぁ~わんこだったり腹黒だったりこの人よくわかんないわね。
「うーん、判った……」
「よろしくお願いします」
喋りながらもアウレウスは、どんどん歩いていて、私を抱えたまま教会の外までやってきた。
「お嬢様!」
「クレア! 大丈夫か?」
抱きかかえられた私を見て駆け寄ってきたのは、メイドのリーンとヒラルドお兄様だった。馬車から降りて、私が来るのを待っていてくれたみたい。
「お兄様、リーン! 私は大丈夫よ。心配かけてごめんなさい」
「いや、お前の謝ることじゃない。で、そちらは?」
ヒラルドお兄様の目線が、アウレウスに注がれる。心なしか怖い。
「お初にお目にかかります。私は神官見習いのアウレウス・ローズと申します。クレア様が歩くのがお辛そうでしたので、このようにお連れしたことをお許しください」
そう謝るのなら、早く降ろしてよ~!
「そうでしたか。神官様たちの手を煩わせてしまい、申し訳ございません。妹は私どもが面倒を見ますので、お引渡し頂けますか?」
うわぁ、ヒラルドお兄様とアウレウスの間に火花が散ってるように見える……ヒラルドお兄様、シスコンだもんなあ。
「いえいえ、煩わしいなんてそんな。よろしければこのまま馬車までお手伝いいたしますよ」
飽くまでニコニコ笑ってるけど、アウレウス何か怖いんだよなあ。
「あの、アウレウス、私もう歩けるから……」
「おや、そうですか? では仕方ありませんね」
仕方なくはないと思うなあ。
アウレウスは少し残念そうな顔で、私を降ろしてくれた。よし、今度は足に力が入るぞ。
「ではクレア様、後程正式にバートン家へ使いを送ります。またお会いしましょう」
「あ、うん。またね」
「また?」
ぴきぴきと青筋を立てているヒラルドお兄様。やめて、後でちゃんと話すから。
「ヒラルド様、クレア様、子爵様が屋敷でお待ちですわ。参りましょう」
リーンがいいタイミングで声をかけてくれたから、すんでのところで揉め事を回避できた。リーン、ナイスアシスト! こっちにこっそりウィンクしてくれる出来る女、可愛いぞ!
「お気をつけてお帰りください」
折り目正しいお辞儀をして、アウレウスは馬車に乗り込んだ私たちを見送ってくれた。
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