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第二章
第七十話 やれたらやるぐらいの気持ちでちょうど良い
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足元から分泌された銀色のスライムのような金属が周囲に広がっていく。
近くに立っているソフィアとシオンを避けるようにして広がった銀色の金属〈神秘金属〉によって、辺り一面が銀色の大地と化した。
「このぐらいでいいか。そして、コレらを変化させてから〈使役〉っと」
俺の独り言に呼応するようにして銀色で大地が蠢き、各所にて隆起したメルクリウスが分離し形態を変化させていく。
「大蛇に巨大蜘蛛、あとは狼かしら?」
「ヘビとクモは前も見ましたケド、オオカミはさっき倒した影響ですカ?」
「形は適当に選んだだけだから特に理由はないぞ」
「それならネコちゃんも作りまショウ!」
「せっかくだからドラゴンも作りましょうよ、ファンタジーらしく」
「まぁ、いいけどさ」
変化途中のメルクリウスの一部に干渉すると、それぞれを彼女達のオーダー通りの姿形へと変化させた。
「……コレってネコちゃんじゃなくとトラとかライオンな気がします」
「獰猛な面構えね。ドラゴンはドラゴンで、竜というよりは肉食恐竜って感じのデザインね」
「襲撃に使うんだからこっちの方がいいだろ?」
半グレ系超人勢力〈暗龍治焼武琉〉への襲撃のために用意したメルクリウス製金属獣は全部で三十体。
まだまだ作れるが、あまり作りすぎると俺が戦いで使う分の魔力が無くなるので一先ず三十体だけにしておいた。
金属獣達がどれほど活躍してくれるか分からないので、今回の襲撃が今後の金属獣達の運用における指標になってくれるだろう。
「名前は〈金属獣猟団〉にしまショウ!」
「名前付けたのか。まぁ、好きに呼んでくれ」
ソフィア命名ワイルドハント達に〈使役〉による繋がりを通して指示を出すと、少し離れた場所にあるアンタッチャブルの拠点へと侵攻を開始した。
使用したメルクリウスの量の違いか、移動速度には差があるようで、意外にも重そうな大型の個体ほどスピードが速い。
パッと見では速い順に恐竜、虎とライオン、大蛇、巨大蜘蛛、狼ってところか。
この辺りはまさにファンタジーって感じの不思議さだな。
「それじゃあ、私達も行きましょうか」
「キルデス!」
両手にナイフを構えて全身に防御用の重力場を纏わせるシオンと、同じように風の鎧を纏ってから刀型アーティファクト〈紫電妖刀ライキリ〉を鞘から抜き放つソフィア。
物騒な女達、という言葉をギリギリで飲み込むと、異能〈錬金竜〉によって全身を竜型金属鎧へと変化させる。
アーティファクトは……取り敢えず〈黒金雷掌ヤルングレイプ〉だけでいいか。
「正面までは一緒に進むとしよう。そこからは自由行動だ」
「分かったわ」
「ハイデス!」
アンタッチャブルの拠点であるドーム型競技場に向かって歩いていくと、ドーム側からワイルドハント達に向かって大量の遠距離攻撃が放たれているのが見えた。
「思ったよりも数が多いな?」
「モヒカンさんが嘘をついたんでしょうカ?」
「私の〈魔眼〉で嘘はつけなかったはずだから、モヒカンの認識していた戦力に誤りがあったんでしょう」
「そんなところだろうな」
ワイルドハント達に〈使役〉による思念的なイメージで指示を出すと、ワイルドハント達の全身が蠢いて大量の金属針が射出された。
ドームの正面に構築されていた頑丈そうなバリケードが金属針の一斉掃射によって一瞬で崩壊し、射線上にいた超人達も一瞬で肉片と化した。
少し違うかもしれないが、やはり質量兵器はシンプルに強いな。
「……今更だけど奴隷にされていた子達もいたかもね」
「あっ」
確かにその可能性はあるな……まぁ、既に過ぎたことだし仕方がない。
「次から気を付ける」
「そうしてちょうだい。ま、見分けるのに集中してやられるのもどうかと思うから、出来たら救うぐらいの気持ちで行きましょう」
「了解デス」
「了解」
首の黒い線が奴隷階級の証という分かりやすさとはいえ、状況によっては確認し難いからな。
ミイラ取りがミイラになるような事態は勘弁なので、そのぐらいの気持ちのほうが無駄に気負わずに済む。
それじゃあ、掃討を開始するとしようか。
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