君に噛み跡を遺したい。

卵丸

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噛み跡

宣言

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両想いになった旅行から一ヶ月が経ち、絢斗は家族に要を紹介するために一週間前に高級な和食屋を予約して今日がその日だった。姉の遥は知っているが母親も父親も要の事を軽く説明して午後の十二時に大人数が入る個室に氷室家が右側に座っていた。

「絢斗が番を連れてくるなんて、母さん驚いたわ!」

「確かにね、三十路になっても結婚できないと思ってたよ。」

「アンタら酷くねーか?」

母親と遥による酷い発言に絢斗は不貞腐れて父親は小さく苦笑を零していたが父親が絢斗に話しかけてきた。

「でも、相手は娘さんがいるんだろ?娘さんはいきなり絢斗が父親になるのは不安じゃないか?」

「・・・・・・。」

絢斗も結衣の事を気にしていたので後は彼女が許すかが大きい問題だった。絢斗は俯いて黙っていると要からTalkの返事が来た。

[着きました]

「今から箕輪さん達が来るみたいだ。」

絢斗の言葉に皆は各々と身だしなみを確認した後にタイミング良く店員さんに連れられて要達が姿を見せた。

「氷室さん、待たせてすみません。」

「おはよう、来てくれてありがとな」

要達が座るとまず絢斗の父親が箕輪家にご挨拶をした。

「今日はお集まり頂きありがとうございます。」

「今日はよろしくお願いします。」

要の父親が頭を下げると箕輪家(結衣以外)は頭を下げた。その後に氷室家も頭をゆっくり下げた。

運ばれた和食料理を咀嚼しながら互いの事を話して和気あいあいになったタイミングで絢斗は咳払いをして真剣な表情で要の父親の目を見て凛とした声で話した。

「今日は大事なお話がありまます。」

「・・・・・・。」

要の父親は察したのか絢斗の事を真剣な眼差しで見つめているのを見て要に緊張が走った。

「私は要さんと仲良くさせて頂いて真面目な彼と人生を歩んでいきたいと思いました。」

そこまで言ったがその後の言葉が出てこなくて焦っていると要の父親は「ゆっくり話して」と言ってくれたので絢斗は深呼吸をしてからまた話した。

「そして、結衣ちゃんの父親として絶対に幸せな家庭を作ります。」

その後、更に絢斗は深呼吸をした後、立ち上がりゆっくり頭を下げた。

「私に要さんを・・・息子さんを番にさせてください!!」

絢斗は震える声で告白してしまい後悔をしていると誰かが立ち上がって歩く音が聞こえてきた。

「氷室君、顔を上げて」

絢斗は顔を上げると要の父親は彼の左肩にポンと優しく手を置いた。

「僕は要の幸せが第一だから彼に任せているよ・・・だけどね・・・・。」

その後、耳元に低い声で囁かれた。

「不幸にしたらどうなるかは分かっているね?」

絢斗は恐怖で肩を震わせてたがすぐに真剣な眼差しで父親を見て頷いた。

「その上で息子さんを番にしたいので絶対に後悔はさせません。」

絢斗の言葉に要の父親は満足そうに微笑んでただ一言だけ呟いた。

「幸せにしてあげてね。」


***

「えええーっ!?」

「あーっもう、うるせぇな!!」

「・・・・・・あはは。」

挨拶が終わって夜にしずちゃんのBarに来て今日の事を話したら彼女?は驚いて男性丸出しの声で叫んで絢斗は両耳を抑えて怒鳴り、要は呆れ笑いを零した。

「でも遂に番になったのね!」

「・・・ああ、ただ・・・・・。」

絢斗の途切れ悪さにしずちゃんは不思議そうな表情をしていると要が後を付け足すように説明した。

「結衣・・・僕の娘がまだ氷室さんの事をお父さんだと伝わってなくて困ってるんです。」

「あらまぁ、確かにいきなりお父さんが出来ると混乱しちゃいそうね。」


和食屋を出てきた時に要は結衣を抱っこしながら絢斗の事を成るべくわかりやすく説明した。

「結衣、これからは彼が新しいパパになるんだよ。」

「え?」

結衣はご飯を食べて眠たそうにうとうとしながら聞いていたが絢斗を見つめながら呟いた。

「ママ、この人はお友達だよ?パパじゃないよ?」

「えっと~・・・・。」

二人は困ったし、結衣は眠気に負けてしまい要の胸の中でぐっすり寝てしまった。

「かなちゃん、結衣ちゃんを預けるから氷室さんと今後の事を話に行ったら?」

「たか兄・・・ありがとう」

隆志が要から結衣を預けると二人はカフェに入りホットコーヒーを頼んだ。絢斗はコーヒーを一口飲んだ後、優しい声で要に話した。

「要、良かったら俺のアパートで暮らさないか?」

「えっ・・・迷惑・・・」

「じゃないから言ってんだよ。広いから結衣ちゃんも大丈夫だよ。」

絢斗が安心する言葉をかけても難しい顔をしながらコーヒーを啜っていた。

「嫌か?」

要はコーヒーを置いた後、顔を赤く染めて目を泳がせながら小さい声で呟いた。

「・・・・ます」

「聞こえないが?」

「・・・・いつか、家族が増えたらどうします?」

それだけで絢斗は分かってしまい自分の顔も熱くなるのが分かって小声で言った。

「・・・・・・その時はもう少し大きい部屋に引っ越すよ。」

「そっそれと!」

「なっなんだ!?」

要の大きい声に驚いたがめを泳がせて何も言わなくなったので黙って見守っていると要は決心した顔になり更に顔を赤く染めて口を開いた。

「結婚式場は何処にしますか?」

***

「え~その時は私も絶対に呼んでよね!!」

しずちゃんがくねくねと身体を動かしながらきゃあきゃあ騒いでいるのを絢斗は呆れ笑いをし、要は恥ずかしくて俯いていた。騒いだ後にしずちゃんはシェイカーを振って二人にカクテルをテーブルに置いた。

「XYZよ。カクテル言葉は「永遠にあなたのもの」よ」

「・・・・・ったく」

「ありがとうございます。」

絢斗は照れ隠しで不貞腐れたような態度をとり、要は素直にお礼を言ってカクテルを口にした。

「式が決まったらまた教えてね!」

しずちゃんは二人にウインクをすると絢斗は嘔吐くフリをして彼女?に思いっきり頭を叩かれた。

***

「・・・アイツ、手加減出来ないのかよ。」

「普通に氷室さんが悪いですよ。」

二人はしずちゃんの店を出て先に要の自宅まで二人は電車に乗った後、歩いて帰っていた。そして箕輪家が見えてきて玄関に着いた。

「今日はありがとう。」

「こちらこそ、ありがとうございました・・・・少し待っててください。」

「どうした?」

要は鞄の中から丁寧に包まれた緑色の紙袋を自分で開けるとそこからワインカラーのマフラーが出てきた。

『要が開けるんだな。』

絢斗は要を見守っていると要は彼の首にマフラーを巻いてくれたが絢斗の方が身長が高いので要が背伸びをしてたのを見て微笑ましかった。

「・・・・どうでしょうか?」

要は不安そうな顔をしていたが絢斗が抱きしめて耳元で優しく囁いた。

「温かい・・・ありがとう」

要は嬉しさで身体中が温かくなり絢斗の背中に腕を絡めて抱き締め返した。その時、雪がチラホラ降り注ぎ抱き合っている彼らを見守っていた。

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