君に噛み跡を遺したい。

卵丸

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営業のエースは・・・・・。

セイメイジャー

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カランと地下にあるbarのドアを開けると、お手入れされている長い桃色髪をなびかせた紫色のスパンコールのマーメイドドレスを着た女性(男性)が絢斗に気づくと手を振って笑顔で挨拶した。

「いらっしゃい~ 絢ちゃん♪」

「よぉ、静雄しずお。」

すると彼女?は腰に手を当ててプクーと頬を膨らませて絢斗に怒った。

「もう!!本名じゃなくて、しずちゃんって呼んでって言ってるでしょう!!!」

「ごめん、ごめん」と適当に謝っている絢斗にジト目でお冷を出してくれたが腕を組んでまだ怒っていた。

「アンタ、彼女が出来たらこんな適当じゃ駄目だからね?」

「悪かった、悪かった。・・・ギムレット頼める?」

しずちゃんははため息をついてシェイカーを振ってグラスにカクテルを注いだ。

「ギムレットよ。」

「・・・ありがとう」

するとしずちゃんは絢斗の顔をじっくり見て、両手に顎を置いて気になる事を聞いた。

「なんか、あったの?」

「えっ!?」

まさかの言葉に驚いているとしずちゃんは自信満々の表情で絢斗に言った。

「顔に悲しいって書いてあるわ!」

「なんでわかるんだ?」

「ふふふ、オ・ン・ナ・の感よ♡」

「・・・いや、お前オカマだろ。」

「お姉さんって言えよ、ごるぅらあぁぁぁ!!」

完全に男の声で怒ったしずちゃんが両手でテーブルをバンッと叩いてギムレットがタカタカ動くし、絢斗も恐怖のあまり両肩をビクッと震えてしまった。

「・・・・ごめん、しず姉さん」

「・・・ったく、っで何があったの?お姉さんに聞かせて♡」

しずちゃんがぶりっ子ポーズでウインクすると絢斗は渋々、要のこと話した。

「・・・営業部にΩのエースの話しただろ?」

「うん、うん。」

「アイツの項に噛み跡があるんだけど、番が要るのか聞いたら居ないみたいで襲われた時に噛まれたみたいでさ・・・しかもアイツ、小さいお子さんがいるんだよね・・・。」

「それを思って、絢ちゃんはどうしたいの?」

「・・・・・・同じエースとして仲良くなりたいよ。」

「・・・・・それだけ?」

「・・・・・それだけ」

「・・・番になりたくないの?」

「・・・・多分、アイツαの事が嫌いだよ。」

「あらま~・・・だから、失恋に私の所に来てアルコールで忘れる作戦ね。」

「べっ別に好きとかじゃなくてっ笑顔は可愛いと思うし、仕事関係で仲良くなりたいし、仕事の愚痴を語りたいし、あっでも、アイツ飲みすぎるとぶっ倒れるしな・・・しかもあの会社αが多いから危ないし・・・・。」

その話をしずちゃんはジト目で見つめながらニヨニヨしていた。

「アンタ、早口になってるわよ?」

「えっ!?」

「気付いてなかったのね・・・取り敢えず、仲良くなってから番になっても良いんじゃないかしら?」

「でも、噛み跡有るし・・・・」

「はぁ~?ンなもん項以外を噛んで「これで俺のもんだぜ!」って発言したら良いのよ!」

しずちゃんのイケボに少し戸惑っていたが、彼女?はビシッと人差し指で指して絢斗に向かって叫んだ。

「じゃないと、アンタ一生孤独よ!!」

「うぐぅぅ・・・・・!!」

しずちゃんの的確な言葉にグサッとダメージをくらい絢斗はギムレットを一口飲んでため息をついた。

「・・・分かってるんだけどさ・・・・・どうしたらいいのか分からなくて・・・・。」

「じゃあ、共通の趣味を探すとか?なんか無いの?」

「・・・・・・確か、セイメイジャーって言ってたな。」

「なにそれ?」

「わかんねー」

「取り敢えず、調べてみたら?」

絢斗は鞄からスマホを取り出して「セイメイジャー」と検索してみた。

「やっぱり、戦隊モノか・・・・ん?」

絢斗は敵幹部のキャラの画像に苦笑するしかなかった。

「あはは・・・何かわかるわ・・・・。」

「何が?・・・・ってこの狐の奴、絢ちゃんにソックリじゃない!あはははははは!」

「いや、笑いすぎでしょ!」
 
敵幹部の妖怪のキュビビーンは九本の銀色の尻尾に銀色の尖った耳にオールバックの髪に瞳の色は絢斗は青色で奴は黄色で違うがそれ以外は完全に瓜二つだった。

「アンタが和服着たら完全に分からないでしょうね!」

「そっそんな事は無いだろ!!」

それでも、笑い続けるしずちゃんを横目で睨んで注文を頼んだ。

「笑ってないで次はカンパリオレンジ頼む。」

その注文にしずちゃんはニヤニヤしながら呟いた。

「絢ちゃん、カンパリオレンジの言葉知ってる?」

「えっ知らないけど?」

「ふふふ、カンパリオレンジの言葉は「初恋 」よん♡」

「なっ!」

ついに絢斗は顔を赤くしてわなわなさせると、トドメと言わんばかりにしずちゃんは言葉を続けた。

「因みにギムレットの言葉は「遠い人を思う」なの。今はまだ遠い存在でも、絢ちゃんの真面目な優しさでエースちゃんを射止めなさい!」

しずちゃんはバチコンとウインクをするとカクテルを作りに行った。

「・・・・・射止めるか・・・・・。」

その呟きはシェイカーのシャカシャカの音によって消されてしまった。


***

日曜日の朝、いつもは五時ぐらい起床している要だが弱いのにお酒を飲んでしまい二日酔いになっていた。

「うぅ~・・・ううぅ~・・・・・・」

「かなちゃん、今日は行けなさそう?」

ペットボトルの水を持ってきてくれた隆志の言葉に要は頭を抱えながらペットボトルを持って立ち上がった。

「結衣が・・・楽しみ・・に・・・してた・・・・んだ・・・・・行く・・・うぐぅぅぅ。」

凄く痛むのか青白い顔で水を飲んでパジャマから私服に着替えようとした所でパジャマ姿の結衣がひょっこりと二人の前に現れた。 結衣に気づいた要は成る可く微笑み挨拶した。

「・・・・おはよう、結衣・・・・今日セイメイジャーショー楽しみだな・・・・・うぐ。」

しんどそうな要を見て結衣は真面目な顔で二人に言った。

「結衣、別にセイメイジャーショー見に行きたくない!」

その言葉に二人は驚いて結衣を見ていたが、頭を抱えている要が理由を聞いた。

「どうして?楽しみにしてたじゃないか。」

結衣は俯いて、身体を左右に揺らしながら小さい声で答えた。

「・・・ママのともだちが明日はゆっくりしてほしいって言ってたから今日はママをゆっくりさせたいの・・・。」

その言葉に頭の痛みが一瞬、消えて要は感動して泣きかけた。

「結衣・・・・ママの為に・・・・・・ってママの友達って誰?」

その言葉に隆志は思い出し、一旦向こうに行き財布から名刺を取り出した。

「この人がかなちゃんが酔ってるの教えてくれたんだよ。」

隆志から名刺を貰うと、そこには大嫌いな人種アルファの「氷室 絢斗」と書かれていた。

『あ~全部思い出した。こいつが飲みに誘わなかったら今頃、結衣とセイメイジャーショーに行けたのに・・・氷室絢斗め~余計なことしやがって 後、友達じゃねえ!!』

名刺を強く握ってしわくちゃになりかけてると結衣が要のパジャマの袖を弱々しく握ってきた。

「・・・・・もうすぐ、セイメイジャー始まるから一緒に観よ?」

『陰陽師戦隊 セイメイジャー!!』

『キュビビビビ!!今日こそお前達を倒してやる!!』

「頑張れ~セイメイジャー!」

要は結衣を膝の上に座らせて「セイメイジャー」のテレビを見て応援していた。しかし、キュビビーンの尻尾攻撃で五人ともやられてしまった。

「ママ、セイメイジャーがやられちゃうよ。」

「そうだね、大ピンチだ!」

『キュビビビビ、なんだよ今日は一番弱いなぁ!!』

「あわわ、どうしよう。」

『・・・氷室絢斗もこんな表情で笑うのだろうか・・・・。』

キュビビーンが大笑いをしているとつい思ってしまって要自信が驚いてしまった。

『何考えているんだ僕は!!』

要は顔を左右にブンブン振って記憶から消そうとしたが中々消えてくれなかったが結衣の声で消えてくれた。

「みんな、無事!!」

「えっ!?」

『どうしてお前達が二人いるんだ!?』

キュビビーンが二人ずついるセイメイジャーに驚いていると倒れている方がポンッと消えて人型の紙切れに変身した。

『なっ何、式神だとぉー!?』

『そうさ、まんまと騙されたね、キュビビーン』

セイメイレッドがパチンと指を鳴らすとメラメラと燃える五芒星を出して攻撃をした。

『セイメイ五芒星ファイヤー!!』

その攻撃が見事にクリーンヒットしてキュビビーンの一本の尻尾を燃やした。

『熱い、熱いクッソー覚えてろよ!!』

キュビビーンは燃やされて涙目でセイメイジャー達を睨んで捨て台詞を吐いてドロンと消えてしまった。

『今日も平和は守られたな。』

そしてセイメイジャー達は「あははは」と笑いあっていた。

「勝って良かったね結衣。」

要が聞くと結衣は不満そうな表情で文句を言っていた。

「ブルーの活躍少なかった。」

「・・・そうだね、結衣はブルーが一番好きだったね。」

結衣はセイメイブルーこと涼宮 時雨すずみや しぐれの爽やかな顔が大好きでイケメンで強いことでお姉様方からの人気も凄かった。時雨の俳優は今最も売れている瀬田川 聡せたがわ さとしと言う人が演じている。

「結衣ちゃんって面食いだよね。」

「そうだよね。」

隆志の言葉に頷くしかなかったが、要は別に面食いではないので考えたくも無いが多分どれか分からないパパ似だと思うと違う意味で頭が痛くなった。

「ママ、大丈夫?」

心配そうに結衣が要の方を向いて言うと要は笑顔で頭を撫でてあげた。

「心配してくれてありがとう。ママは元気だよ。」

「・・・・・。」

それでも、悲しそうな顔をしていたので要は結衣に明るく囁いた。

「今日、ホットケーキ作る人?」

その言葉に結衣は目を輝かせて手をブンブン挙げた。

「はい、はい、ホットケーキ作りたい!!」

「じゃあ、今から朝ごはんのホットケーキ作るよー!」

「わぁーい!!」

要は結衣を降ろして立ち上がると、ふと気になる言葉を思い出した。

『結衣が氷室絢斗を知ってるって事は・・・姪っ子じゃないってバレてるんじゃ!?』

要は恐る恐る、隆志の耳元で呟いた。

「たか兄さ、氷室さんに結衣を紹介した時なんて答えたの?」

すると隆志は不思議そうな顔をして言った。

「えっ何って娘とは言って無いけど、結衣ちゃんのママって言ったけど?」

その言葉に更に頭を抱えてしまった。いきなり頭を抱えた弟に隆志はあわあわしていた。

「かなちゃん!?」

『氷室絢斗に質問攻めされたらどうしよう・・・・。』

「ママーまだ~。」

結衣の声に「今、行くからねー」と叫んでトボトボ歩いてホットケーキを作りに行った。
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