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営業のエースは・・・・・。
子供
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ヒート・・・三ヶ月に一度に現れる発情期の事、ヒートになると繁殖行為以外のことが出来なくなってしまう。番がいないΩのフェロモンで番がいないαを誘惑してしまう事もある。
「ですので、Ωが安心に暮らせる為に噛まなくてもフェロモンを抑えるスプレーを・・・」
要は昨日、残業をして考えたプレゼン内容を自分達の会社の人達に説明していた。プレゼン内容は1週間前に課長に申し訳なさそうに頼まれた。
***
『箕輪君、営業部でΩは君しか居ないから社長に頼まれた、Ωの為の新商品を考えてくれないかな?』
要は少し、ムッとしたが課長に営業の笑顔を返して、Ω為の商品を考えたが難しくて兄の隆志に相談したら
『普通にかなちゃんがコレが有ればいいのに~と思うものを考えれば良いと思うけどなぁ~。』
と余り良い答えが返ってこなくて溜息を吐いたが、ふと昔の事を考えた。
『確か、あの時は先輩達が僕のフェロモンで襲われて項を噛まれたんだから・・・高い薬を買わなくても済む様なやつが欲しいな・・・。』
そして考えたのが一日フェロモンを感じさせないスプレーだった。後は理由と材料と効果を考えてる途中で結衣の写真を見て癒されてる時に絢斗に見られてしまった。
***
「材料に出来ればクエン酸を使うことで・・・」
絢斗は要の完璧なプレゼンに圧巻としていて横に立っていた。
『多分、俺のフォロー要らないなぁ・・・。』
「これで私のプレゼンは終わらせて頂きます。ご質問が有れば、挙手でお願いします。」
すると、手を挙げたのはαの社員であまり良くない質問をしてきた。
「流石にαが可哀想じゃないかな?だってアレってΩが勝手にフェロモンを出してる訳でしょう?なのにスプレーで抑える事でαが生きづらくなるじゃないか。これじゃあ結局αが結婚しにくくなるでしょう?」
要は少しだけ、彼を睨んでから営業の笑顔でαの社員に成る可く分かりやすく答えた。
「ですが、ヒートの時は訳も分からずにフェロモンを出してしまう事が有りまして、薬を飲むのが苦しい時がありますのでやはり、スプレーをかけるだけでフェロモンを落ち着かせる物が必要だと思います。」
するとαの社員は少し小馬鹿にした様に要を揶揄かった。
「いや、ヒートの時は休めばいいじゃないですか?普通に迷惑だし?」
その言葉に要の表情が険しくなったのに気付き、絢斗が間合いに入った。
「ヒートでも休めない人もいると思いますし、私もαですが、少しでもフェロモンを抑えてくれた方が事故にならずに済みますし有難いですので私は箕輪さんの商品はとても良いと思います。・・・他に質問ある方は?」
絢斗が無理矢理一つ目の質問を終わらせると次は女性社員が嫌味が無い質問をしてくれた。
「このスプレーは服にかける予定ですか?それとも直にですか?」
「そうですね、個人的には服にかける予定で・・・」
その後もαの社員以外、まともな質問が続きプレゼンは無事に終了した。
***
絢斗と要の間に重たい空気が漂っていて、絢斗は少し冷や汗をかいた。やっぱり、αの社員の言葉が気に食わなかったらしく珍しく要は苛立ちを隠さずに廊下を早歩きしていた。
「・・・箕輪、今日はお疲れ様。」
「・・・・・お疲れ様です。フォローありがとうございます。」
「あー・・・あのさ、あの人が言ってた事気にする事じゃ無いからな。後ろ盾が強いから威張ってるんだよ。社長の息子だしさ。」
今日のαの男性社員は社長の息子でよくβとΩを揶揄い関係ない仕事を二つの性に押し付けやりたい放題をしていた。しかしαだから個人の仕事は完璧にこなし、営業部では無いがトップで有る事は間違い無かった。
「・・・・・・・・別に気にしてませんけど。」
苛苛した口調で早口に答えたので直ぐに嘘だと解り、絢斗は要の右肩を置いて手で盃を持つポーズをして呑みに行くのを誘った。
「確か、箕輪は明日休みだろう?一杯どうかな?」
その言葉に怪訝そうな表情になって絢斗は慌てて言葉を紡いだ。
「俺の奢りだ。プレゼン頑張ったご褒美に自分を甘やかすのも大切だよ。」
要は少しだけ間をおいてジト目で絢斗を見つめて可愛くない言葉を呟いた。
「高い酒を頼みますので宜しくお願いします。」
***
個室の居酒屋で要は真っ赤な顔でビールをぐびぐび飲んで、ダン!っとジョッキをテーブルに置いて、愚痴を酔っ払いながら叫んでいた。
「ざけんなよ!あのばぁか息子、何が休めばだ!前はヒートのΩにズル休みとかほざきやがって、言ってることが違うじゃろうがい!ボケェ、カス、ブサイク!!!」
「・・・・・そんなに飲んで大丈夫か?」
実は要はこのビールを三杯飲んでいて絢斗の金なので唐揚げや焼き鳥や枝豆やポテトフライを遠慮なく頼んで、がっついて食べながら愚痴を吐いていた。
「大丈夫です。ヒック、Ωだからって侮らないで下さい!」
その後、絢斗のつくねを勝手に美味しそうに食べて、絢斗に注意をされたらベルを鳴らして、つくねを頼んでくれたが結局は絢斗の金なので変な感じがした。
「・・・・箕輪って酔っ払うと別人になるな。」
「・・・・・別人?別に酔ってないし!?」
「いや、酔ってる奴が言うセリフじゃないか。」
要は唐揚げのレモンを絢斗の皿に渡してビールと共にガツガツ平らげながら絢斗を睨みつけていた。
「・・・・何、睨んでるんだ?」
「・・・・・・あれに似てるなぁ~と思って・・・・・。」
「あれってなんだよ?」
すると要は「にひひ」とふにゃりと笑い似ている者の名前をボソッと呟いた。
「妖怪キュビビーン・・・。ふへへへへ・・・・・・・」
不気味な笑いをした後テーブルに顔を打って、そのままスースーと寝息を絶てて爆睡をしてしまった。それを見て呆れるしかなかった。
「・・・・・・キュビビーンって何だよ。」
だが、要の笑顔を見れて満更でもない絢斗だったがこのままでは良くないと思い、抵抗はあるが要の鞄からスマホを取り出し指紋認証する為に親指を押さえて、開くことに成功して自宅に電話をかけた。
『もしもし、かなちゃんどうしたの?』
若い男性の声に抵抗したが今の状況を話すことにした。
「箕輪さんの家族の方でしょうか?」
『はっはい、そうですけど?』
「すみません、私、箕輪さんと同じ会社の氷室と言う者なんですけど、今日仕事帰りに呑みに行って、彼が酔っ払って寝てしまいまして、私は箕輪さんの自宅が何処なのか分からないので居酒屋「はっちゃん」までお迎え行けますでしょうか?夜忙しいのに申し訳ありません。」
『たーくん誰からの電話?』
『分かりました。わざわざありがとうございます。では其方に向かいますね。』
小さく、女の子の口足らずな声が聞こえてきて驚いたが多分待受画面にしている姪っ子の結衣だと思った。
「・・・・ゆぅーい、セイメイジャーにあえるよぉ・・・・・。」
「セイメイジャー?」
隆志は車に乗って運転をしていたが、赤信号で後ろ座席に長い黒髪を降ろして、黄色の花柄のワンピースみたいなパジャマを着た少女が眠たそうに座ってるのが見えた。
「結衣ちゃんっ乗ってきたの!?」
「・・・・ママのところに行くんでしょう?」
「どうしてわかったの?」
「・・・・レディの感かしらん?」
結衣はセイメイピンクのセリフを披露していたがシートベルトをしてないことに気付き、ちゃんと自分でしていた。
「結衣ちゃんは偉いね。」
「うん、結衣は4才だもん。」
要の様にふにゃりと笑うと大好きなセイメイブルーのぬいぐるみと武器を持って大人しく座っていた。
「居酒屋 はっちゃん」の駐車場に停めると、車から出ていくと結衣も着いてきて、危ないから戻りなさいと言ったら、泣きそうな表情になったので仕方なく結衣を抱っこして「居酒屋 はっちゃん」に向かった。
隆志は向かっていると、店のベンチに要と銀色の髪をきっちりオールバックにしている綺麗系な男性が座っていた。
「すみません、要の兄の箕輪隆志です。今日はわざわざ、ありがとうございます。」
「いえいえ、私も箕輪さんのお酒の加減を知らずに倒れるまで飲ませてしまってすみません。申し遅れましたは氷室絢斗と申します。」
絢斗は胸ポケットから名刺ケースを出して隆志に名刺を渡すと隆志も「これはご丁寧に」と呟いて名刺を貰った。
『・・・う~ん、氷室さんって誰かに似てるんだよな・・・一体誰だろうか?』
隆志は考えながら絢斗を見つめていると、胸元にいる結衣が興奮した表情で絢斗の事を指さしてさっきまで、眠たそうにしてた子とは思えない音量で叫んだ。
「ようかいキュビビーン!!」
「「・・・・・・え?」」
二人の間抜けな声がハモった後、結衣は絢斗に向かって叫びまくっていた。
「今から人間たちをもふもふ封印する為にここに来たのか!」
「えっ・・・いや・・・・その」
「でも、セイメイジャーが来るからお前のえーと・・・あっあっあうじは出来ないぞ!!」
「・・・・・悪事って言いたいの?」
「そう、悪事だ!!・・・セイメイジャーが来る前にこれでも喰らえ!!」
すると結衣は青い扇子型の武器を振り回して絢斗に攻撃をしようと頑張ったが隆志に抱かれていたので届かなくって「セイメイブルー氷の乱舞!!」とセリフと攻撃音が居酒屋の外に虚しく響いた。
「こら、結衣ちゃん危ないから止めなさい!」
隆志は結衣を叱ると結衣の肩がピクンと上がって、渋々扇子型の武器を手元に戻した。
「・・・たーくん、ごめんなさい。」
「・・・謝るなら、氷室お兄さんに謝ろうね。」
「・・・・キュビビーンじゃないの?」
「うん、寧ろママのお仕事友達だよ。」
「ともだち・・・・。」
戸惑っている絢斗の顔を見つめて、結衣はぺこりと頭を下げた。
「ママのともだち、ごめんなさい。」
「・・・ふはは、良いよ、でも結衣ちゃんは逞しいねキュビビーンを倒す為に武器を使うなんて、かっこいいのはママ譲りかな?」
絢斗は結衣を彼女はふにゃりと微笑み絢斗に元気な声で言った。
「結衣のママお仕事してる時もかっこいいの?」
「うん、一番カッコイイよ。」
「ママ褒められて結衣も嬉しい!!」
彼女の笑顔は要に似ていて顔が熱くなったが気付かないフリをして絢斗はベンチで寝ている要を親が子供がする様におぶった。
「氷室さん、重くないですか?」
「ええ、大丈夫ですよ。お兄さんは結衣ちゃんを持ってるし、車で来たんですよね?」
「はい、あの紺色の車です。」
二人は駐車場まで歩いて、要を助手席に座らせて結衣は自分で後ろ座席に乗ってシートベルトとしてぬいぐるみと武器を大切そうに持っていた。
「今日は、要の事をありがとうございました。」
「いえいえ、箕輪さんは明日休みなのでゆっくりさせて下さい。」
「・・・はい。では氷室さんも気を付けて、さようなら。」
「はい、運転気を付けて。」
絢斗は要を乗せた車を見届けると静かにため息を吐いた。
「・・・・結衣ちゃん、姪じゃ無いじゃんか。」
『多分、襲われた時に出来た子かも知れないな・・・・。』
「・・・・もう一杯飲もう・・・。」
絢斗は一人寂しく知り合いのバーに向かった。
「ですので、Ωが安心に暮らせる為に噛まなくてもフェロモンを抑えるスプレーを・・・」
要は昨日、残業をして考えたプレゼン内容を自分達の会社の人達に説明していた。プレゼン内容は1週間前に課長に申し訳なさそうに頼まれた。
***
『箕輪君、営業部でΩは君しか居ないから社長に頼まれた、Ωの為の新商品を考えてくれないかな?』
要は少し、ムッとしたが課長に営業の笑顔を返して、Ω為の商品を考えたが難しくて兄の隆志に相談したら
『普通にかなちゃんがコレが有ればいいのに~と思うものを考えれば良いと思うけどなぁ~。』
と余り良い答えが返ってこなくて溜息を吐いたが、ふと昔の事を考えた。
『確か、あの時は先輩達が僕のフェロモンで襲われて項を噛まれたんだから・・・高い薬を買わなくても済む様なやつが欲しいな・・・。』
そして考えたのが一日フェロモンを感じさせないスプレーだった。後は理由と材料と効果を考えてる途中で結衣の写真を見て癒されてる時に絢斗に見られてしまった。
***
「材料に出来ればクエン酸を使うことで・・・」
絢斗は要の完璧なプレゼンに圧巻としていて横に立っていた。
『多分、俺のフォロー要らないなぁ・・・。』
「これで私のプレゼンは終わらせて頂きます。ご質問が有れば、挙手でお願いします。」
すると、手を挙げたのはαの社員であまり良くない質問をしてきた。
「流石にαが可哀想じゃないかな?だってアレってΩが勝手にフェロモンを出してる訳でしょう?なのにスプレーで抑える事でαが生きづらくなるじゃないか。これじゃあ結局αが結婚しにくくなるでしょう?」
要は少しだけ、彼を睨んでから営業の笑顔でαの社員に成る可く分かりやすく答えた。
「ですが、ヒートの時は訳も分からずにフェロモンを出してしまう事が有りまして、薬を飲むのが苦しい時がありますのでやはり、スプレーをかけるだけでフェロモンを落ち着かせる物が必要だと思います。」
するとαの社員は少し小馬鹿にした様に要を揶揄かった。
「いや、ヒートの時は休めばいいじゃないですか?普通に迷惑だし?」
その言葉に要の表情が険しくなったのに気付き、絢斗が間合いに入った。
「ヒートでも休めない人もいると思いますし、私もαですが、少しでもフェロモンを抑えてくれた方が事故にならずに済みますし有難いですので私は箕輪さんの商品はとても良いと思います。・・・他に質問ある方は?」
絢斗が無理矢理一つ目の質問を終わらせると次は女性社員が嫌味が無い質問をしてくれた。
「このスプレーは服にかける予定ですか?それとも直にですか?」
「そうですね、個人的には服にかける予定で・・・」
その後もαの社員以外、まともな質問が続きプレゼンは無事に終了した。
***
絢斗と要の間に重たい空気が漂っていて、絢斗は少し冷や汗をかいた。やっぱり、αの社員の言葉が気に食わなかったらしく珍しく要は苛立ちを隠さずに廊下を早歩きしていた。
「・・・箕輪、今日はお疲れ様。」
「・・・・・お疲れ様です。フォローありがとうございます。」
「あー・・・あのさ、あの人が言ってた事気にする事じゃ無いからな。後ろ盾が強いから威張ってるんだよ。社長の息子だしさ。」
今日のαの男性社員は社長の息子でよくβとΩを揶揄い関係ない仕事を二つの性に押し付けやりたい放題をしていた。しかしαだから個人の仕事は完璧にこなし、営業部では無いがトップで有る事は間違い無かった。
「・・・・・・・・別に気にしてませんけど。」
苛苛した口調で早口に答えたので直ぐに嘘だと解り、絢斗は要の右肩を置いて手で盃を持つポーズをして呑みに行くのを誘った。
「確か、箕輪は明日休みだろう?一杯どうかな?」
その言葉に怪訝そうな表情になって絢斗は慌てて言葉を紡いだ。
「俺の奢りだ。プレゼン頑張ったご褒美に自分を甘やかすのも大切だよ。」
要は少しだけ間をおいてジト目で絢斗を見つめて可愛くない言葉を呟いた。
「高い酒を頼みますので宜しくお願いします。」
***
個室の居酒屋で要は真っ赤な顔でビールをぐびぐび飲んで、ダン!っとジョッキをテーブルに置いて、愚痴を酔っ払いながら叫んでいた。
「ざけんなよ!あのばぁか息子、何が休めばだ!前はヒートのΩにズル休みとかほざきやがって、言ってることが違うじゃろうがい!ボケェ、カス、ブサイク!!!」
「・・・・・そんなに飲んで大丈夫か?」
実は要はこのビールを三杯飲んでいて絢斗の金なので唐揚げや焼き鳥や枝豆やポテトフライを遠慮なく頼んで、がっついて食べながら愚痴を吐いていた。
「大丈夫です。ヒック、Ωだからって侮らないで下さい!」
その後、絢斗のつくねを勝手に美味しそうに食べて、絢斗に注意をされたらベルを鳴らして、つくねを頼んでくれたが結局は絢斗の金なので変な感じがした。
「・・・・箕輪って酔っ払うと別人になるな。」
「・・・・・別人?別に酔ってないし!?」
「いや、酔ってる奴が言うセリフじゃないか。」
要は唐揚げのレモンを絢斗の皿に渡してビールと共にガツガツ平らげながら絢斗を睨みつけていた。
「・・・・何、睨んでるんだ?」
「・・・・・・あれに似てるなぁ~と思って・・・・・。」
「あれってなんだよ?」
すると要は「にひひ」とふにゃりと笑い似ている者の名前をボソッと呟いた。
「妖怪キュビビーン・・・。ふへへへへ・・・・・・・」
不気味な笑いをした後テーブルに顔を打って、そのままスースーと寝息を絶てて爆睡をしてしまった。それを見て呆れるしかなかった。
「・・・・・・キュビビーンって何だよ。」
だが、要の笑顔を見れて満更でもない絢斗だったがこのままでは良くないと思い、抵抗はあるが要の鞄からスマホを取り出し指紋認証する為に親指を押さえて、開くことに成功して自宅に電話をかけた。
『もしもし、かなちゃんどうしたの?』
若い男性の声に抵抗したが今の状況を話すことにした。
「箕輪さんの家族の方でしょうか?」
『はっはい、そうですけど?』
「すみません、私、箕輪さんと同じ会社の氷室と言う者なんですけど、今日仕事帰りに呑みに行って、彼が酔っ払って寝てしまいまして、私は箕輪さんの自宅が何処なのか分からないので居酒屋「はっちゃん」までお迎え行けますでしょうか?夜忙しいのに申し訳ありません。」
『たーくん誰からの電話?』
『分かりました。わざわざありがとうございます。では其方に向かいますね。』
小さく、女の子の口足らずな声が聞こえてきて驚いたが多分待受画面にしている姪っ子の結衣だと思った。
「・・・・ゆぅーい、セイメイジャーにあえるよぉ・・・・・。」
「セイメイジャー?」
隆志は車に乗って運転をしていたが、赤信号で後ろ座席に長い黒髪を降ろして、黄色の花柄のワンピースみたいなパジャマを着た少女が眠たそうに座ってるのが見えた。
「結衣ちゃんっ乗ってきたの!?」
「・・・・ママのところに行くんでしょう?」
「どうしてわかったの?」
「・・・・レディの感かしらん?」
結衣はセイメイピンクのセリフを披露していたがシートベルトをしてないことに気付き、ちゃんと自分でしていた。
「結衣ちゃんは偉いね。」
「うん、結衣は4才だもん。」
要の様にふにゃりと笑うと大好きなセイメイブルーのぬいぐるみと武器を持って大人しく座っていた。
「居酒屋 はっちゃん」の駐車場に停めると、車から出ていくと結衣も着いてきて、危ないから戻りなさいと言ったら、泣きそうな表情になったので仕方なく結衣を抱っこして「居酒屋 はっちゃん」に向かった。
隆志は向かっていると、店のベンチに要と銀色の髪をきっちりオールバックにしている綺麗系な男性が座っていた。
「すみません、要の兄の箕輪隆志です。今日はわざわざ、ありがとうございます。」
「いえいえ、私も箕輪さんのお酒の加減を知らずに倒れるまで飲ませてしまってすみません。申し遅れましたは氷室絢斗と申します。」
絢斗は胸ポケットから名刺ケースを出して隆志に名刺を渡すと隆志も「これはご丁寧に」と呟いて名刺を貰った。
『・・・う~ん、氷室さんって誰かに似てるんだよな・・・一体誰だろうか?』
隆志は考えながら絢斗を見つめていると、胸元にいる結衣が興奮した表情で絢斗の事を指さしてさっきまで、眠たそうにしてた子とは思えない音量で叫んだ。
「ようかいキュビビーン!!」
「「・・・・・・え?」」
二人の間抜けな声がハモった後、結衣は絢斗に向かって叫びまくっていた。
「今から人間たちをもふもふ封印する為にここに来たのか!」
「えっ・・・いや・・・・その」
「でも、セイメイジャーが来るからお前のえーと・・・あっあっあうじは出来ないぞ!!」
「・・・・・悪事って言いたいの?」
「そう、悪事だ!!・・・セイメイジャーが来る前にこれでも喰らえ!!」
すると結衣は青い扇子型の武器を振り回して絢斗に攻撃をしようと頑張ったが隆志に抱かれていたので届かなくって「セイメイブルー氷の乱舞!!」とセリフと攻撃音が居酒屋の外に虚しく響いた。
「こら、結衣ちゃん危ないから止めなさい!」
隆志は結衣を叱ると結衣の肩がピクンと上がって、渋々扇子型の武器を手元に戻した。
「・・・たーくん、ごめんなさい。」
「・・・謝るなら、氷室お兄さんに謝ろうね。」
「・・・・キュビビーンじゃないの?」
「うん、寧ろママのお仕事友達だよ。」
「ともだち・・・・。」
戸惑っている絢斗の顔を見つめて、結衣はぺこりと頭を下げた。
「ママのともだち、ごめんなさい。」
「・・・ふはは、良いよ、でも結衣ちゃんは逞しいねキュビビーンを倒す為に武器を使うなんて、かっこいいのはママ譲りかな?」
絢斗は結衣を彼女はふにゃりと微笑み絢斗に元気な声で言った。
「結衣のママお仕事してる時もかっこいいの?」
「うん、一番カッコイイよ。」
「ママ褒められて結衣も嬉しい!!」
彼女の笑顔は要に似ていて顔が熱くなったが気付かないフリをして絢斗はベンチで寝ている要を親が子供がする様におぶった。
「氷室さん、重くないですか?」
「ええ、大丈夫ですよ。お兄さんは結衣ちゃんを持ってるし、車で来たんですよね?」
「はい、あの紺色の車です。」
二人は駐車場まで歩いて、要を助手席に座らせて結衣は自分で後ろ座席に乗ってシートベルトとしてぬいぐるみと武器を大切そうに持っていた。
「今日は、要の事をありがとうございました。」
「いえいえ、箕輪さんは明日休みなのでゆっくりさせて下さい。」
「・・・はい。では氷室さんも気を付けて、さようなら。」
「はい、運転気を付けて。」
絢斗は要を乗せた車を見届けると静かにため息を吐いた。
「・・・・結衣ちゃん、姪じゃ無いじゃんか。」
『多分、襲われた時に出来た子かも知れないな・・・・。』
「・・・・もう一杯飲もう・・・。」
絢斗は一人寂しく知り合いのバーに向かった。
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