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73、ミーアさんのレシピ
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「凄い! とっても美味しいわ!」
私は思わず声を漏らした。
目の前の食卓には、ミーアさんが料理長達と作ってくれた朝食が並んでいる。
スープを一口飲んで私は驚いた。
(普通の野菜スープに見えるのに……)
アドニスや伯爵様も一口飲んで頷いている。
「確かに、王宮の料理とは全く違うが。見事に調和のとれた味だ」
「左様ですね殿下。素朴ですが、とても味わいがある」
私は伯爵様の言葉にうんうんと首を縦に振る。
お父様やお母様も感心していた。
料理長のコンラッドさんが、ミーアさんと一緒にお父様の傍に立っている。
コンラッドさんが感心したように言葉を漏らした。
「旦那様、ミーアさんはうちの厨房に欲しいぐらいの料理人ですよ。何をおいても味覚が鋭い。私もツベルクの料理は何度も口にしましたが、これほど美味いのは初めてですよ。調味料や香辛料の分量が絶妙だ、思わず舌を巻きました」
ミーアさんは、コンラッドさんの言葉に顔を真っ赤にしている。
「そ、そんな。私なんて」
私の隣の席に座っているエルナが、嬉しそうに私の袖を引っ張った。
「ね、お姉ちゃん。お母さんのお料理、とっても美味しいでしょ?」
「ふふ、本当ねエルナ」
エルナは私のお客様ということで、アドニスやお父様のお許しを得て私の隣に座っている。
エルナの愛らしい口の端に、刻まれた香草が付いていたので、私はそれを指で取ってあげた。
「ありがとう、お姉ちゃん!」
嬉しそうにまたスープを飲むエルナ。
すると、もう一方の隣に座るレアン君が不満そうにこちらを見ている。
「僕のお姉様だぞ……」
はわ、何なのこの可愛い生き物は。
レアン君の口元に何かついてたら、お姉ちゃんそれを取って食べちゃいたいぐらい。
こほん、ブラコンもいい加減にしないとね。
いつかレアン君に好きな女の子が出来た時に、とっても意地悪なお姉ちゃんになってしまいそうで怖い。
鳥肉のステーキも、ソースがとても美味しくてみんな舌鼓をうった。
コンラッドさんが言っていたみたいに、料理が上手な人はきっと味覚が鋭いんだよね。
とっても簡単な料理に見えるのに、いろんなスパイスが絶妙に組み合わさってる。
ミーアさんは調理場で借りたのであろうエプロンのポケットから、メモ帳のようなものを取り出してお父様に差し出した。
「あ、あの、公爵様が復興事業で商人ギルドの方々を取り仕切られるとお伺いしました。どうかこれをお使いください」
お父様は椅子を立つと、ミーアさんの前に立ってそれを受け取る。
「ふむ、これはツベルク料理のレシピだな」
それは、とても古いものに見えた。
ミーアさんは頷いた。
「差し出がましいようですが、料理に必要な材料や作り方の秘訣が書かれています。ツベルクの代表的な料理はすべてそこに書かれています、ギルドの方にお渡しください。母から譲り受けたものに私なりの工夫を書き加えてあります。私にはお渡し出来るものは、これしか御座いませんから」
伯爵様がお父様を見る。
「確かに商人ギルドを通じてこのレシピを製本すれば、各地の料理人達にもこの料理に近いものを作らせることが出来るでしょう」
私は席を立ってミーアさんの傍に歩み寄る。
「そんな! ミーアさんがお母様から頂いた大切なレシピなのでしょう?」
作り方や秘訣が書かれているって、料理人とって命にも近いものだろう。
私の言葉にミーアさんは微笑むと首を横に振った。
「いいんです。公爵様はシャルロッテ様のお父君、シャルロッテ様がいなければ私は今生きてはいません。エルナと私にとってシャルロッテ様は特別なお方、母も許してくれるはずです」
私は思わず声を漏らした。
目の前の食卓には、ミーアさんが料理長達と作ってくれた朝食が並んでいる。
スープを一口飲んで私は驚いた。
(普通の野菜スープに見えるのに……)
アドニスや伯爵様も一口飲んで頷いている。
「確かに、王宮の料理とは全く違うが。見事に調和のとれた味だ」
「左様ですね殿下。素朴ですが、とても味わいがある」
私は伯爵様の言葉にうんうんと首を縦に振る。
お父様やお母様も感心していた。
料理長のコンラッドさんが、ミーアさんと一緒にお父様の傍に立っている。
コンラッドさんが感心したように言葉を漏らした。
「旦那様、ミーアさんはうちの厨房に欲しいぐらいの料理人ですよ。何をおいても味覚が鋭い。私もツベルクの料理は何度も口にしましたが、これほど美味いのは初めてですよ。調味料や香辛料の分量が絶妙だ、思わず舌を巻きました」
ミーアさんは、コンラッドさんの言葉に顔を真っ赤にしている。
「そ、そんな。私なんて」
私の隣の席に座っているエルナが、嬉しそうに私の袖を引っ張った。
「ね、お姉ちゃん。お母さんのお料理、とっても美味しいでしょ?」
「ふふ、本当ねエルナ」
エルナは私のお客様ということで、アドニスやお父様のお許しを得て私の隣に座っている。
エルナの愛らしい口の端に、刻まれた香草が付いていたので、私はそれを指で取ってあげた。
「ありがとう、お姉ちゃん!」
嬉しそうにまたスープを飲むエルナ。
すると、もう一方の隣に座るレアン君が不満そうにこちらを見ている。
「僕のお姉様だぞ……」
はわ、何なのこの可愛い生き物は。
レアン君の口元に何かついてたら、お姉ちゃんそれを取って食べちゃいたいぐらい。
こほん、ブラコンもいい加減にしないとね。
いつかレアン君に好きな女の子が出来た時に、とっても意地悪なお姉ちゃんになってしまいそうで怖い。
鳥肉のステーキも、ソースがとても美味しくてみんな舌鼓をうった。
コンラッドさんが言っていたみたいに、料理が上手な人はきっと味覚が鋭いんだよね。
とっても簡単な料理に見えるのに、いろんなスパイスが絶妙に組み合わさってる。
ミーアさんは調理場で借りたのであろうエプロンのポケットから、メモ帳のようなものを取り出してお父様に差し出した。
「あ、あの、公爵様が復興事業で商人ギルドの方々を取り仕切られるとお伺いしました。どうかこれをお使いください」
お父様は椅子を立つと、ミーアさんの前に立ってそれを受け取る。
「ふむ、これはツベルク料理のレシピだな」
それは、とても古いものに見えた。
ミーアさんは頷いた。
「差し出がましいようですが、料理に必要な材料や作り方の秘訣が書かれています。ツベルクの代表的な料理はすべてそこに書かれています、ギルドの方にお渡しください。母から譲り受けたものに私なりの工夫を書き加えてあります。私にはお渡し出来るものは、これしか御座いませんから」
伯爵様がお父様を見る。
「確かに商人ギルドを通じてこのレシピを製本すれば、各地の料理人達にもこの料理に近いものを作らせることが出来るでしょう」
私は席を立ってミーアさんの傍に歩み寄る。
「そんな! ミーアさんがお母様から頂いた大切なレシピなのでしょう?」
作り方や秘訣が書かれているって、料理人とって命にも近いものだろう。
私の言葉にミーアさんは微笑むと首を横に振った。
「いいんです。公爵様はシャルロッテ様のお父君、シャルロッテ様がいなければ私は今生きてはいません。エルナと私にとってシャルロッテ様は特別なお方、母も許してくれるはずです」
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