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65、調理場の中で
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私はエルナの頭を撫でると、卵を持ってきた若い料理人さんに尋ねる。
「あの……その卵、私が使ってもいいかしら?」
料理人さんはいきなり私に話しかけられて、びっくりしながら頭を下げる。
隣に立つ年かさの料理人さんと顔を見合わせて答えた。
「シャルロッテお嬢様がお使いになるんですか?」
「ええ、駄目かしら?」
二人とも私の言葉に慌てたように、卵が入ったカゴを差し出した。
「いいえ、お嬢様がお使いになりたいのでしたら!」
「どうぞ、お使いください!!」
二人は私の側に立つメルファにカゴを渡す。
そして若い料理人さんが、少し頬を染めて隣の料理人さんに耳打ちしてるのが聞こえた。
「うひゃ~、俺初めてお嬢様からお声をかけて貰いましたよ!」
「こら、トーマス調子に乗るな」
どうやら若い料理人さんはトーマスって言うみたい。
職人らしく短髪の栗毛で、気軽に話が出来そうな明るいお兄さんっていう感じ。
18歳ぐらいかしら?
こっちを見ているので、こちらも笑い返してみたら真っ赤な顔をしていた。
メルファがカゴに入った卵と私を見比べると、不思議そうに首を傾げる。
「お嬢様……が、お料理をされるんですか?」
酷いよメルファ。
お嬢様『が』の部分に棘があるよ。
そんなに不安そうな顔で私を見ないで。
でも考えてみたら当然かも。
私が料理が出来るなんてみんな思わないよね。
ちょっと失敗したかな……。
だけどエルナが期待に満ちた目で私を見上げている。
今更、出来ないなんて言えないよ。
「……あ、あのね、以前ご本で勉強したの。機会があったら作ってみたいなって、メルファとエリンも手伝ってくれる?」
メルファとエリンは顔を見合わせていたけど、何とか納得してくれた。
「もちろんです、お嬢様!」
ミーアさん達の料理は、ツベルク地方のスープと鳥肉のステーキみたい。
ミーアさんの手際はさすが料理屋さんをしていただけあって手早くて鮮やか。
丁寧なんだけど素早くて動きに無駄がない。
(凄いなぁ、プロの料理人さんってやっぱり違うよね)
料理長達も、ミーアさんの指示通りに食材の下処理を手際よく終わらせていく。
私は大きな厨房の中で空いている場所を探して、メルファに卵を置いてもらった。
邪魔にならないようにしないとね。
エルナが大きな目で私を見ている。
「ねえ、シャルロッテお姉ちゃん! 何を作ってくれるの?」
「ふふ、まだ内緒よエルナ」
エルナがちょっと頬を膨らませて私を見上げるのが可愛い。
ミーアさんや我が家の料理人達に比べたら、私が作れるものなんて限られてるけど、エルナが喜んでくれるといいなって思う。
まずは材料が揃ってるかだよね。
そう思って私はメルファに必要な物を伝えていく。
卵にミルクにお砂糖、それから小さめの滑らかな陶器の器。
ほかにも幾つか必要なものがあるか尋ねる。
メルファは頷いて聞いてくれた。
「大丈夫ですお嬢様、それなら全部調理場に揃っていると思います」
良かった、大丈夫みたい。
私が頼むと、エリンがこれから割る卵を入れる大きめの器を用意してくれた。
まずはこちらも下準備からだよ。
そう思って私がもう一度ドレスの袖を捲って、卵を手に取ろうとしたらメルファが心配そうに言った。
「お嬢様、私がやりましょうか?」
私はエルナのように、ちょっと頬を膨らます。
心配しないでメルファ、私だって卵ぐらい割れるよ。
私は過保護なメルファをジト目で見ながら卵を一つ手に取った。
「あの……その卵、私が使ってもいいかしら?」
料理人さんはいきなり私に話しかけられて、びっくりしながら頭を下げる。
隣に立つ年かさの料理人さんと顔を見合わせて答えた。
「シャルロッテお嬢様がお使いになるんですか?」
「ええ、駄目かしら?」
二人とも私の言葉に慌てたように、卵が入ったカゴを差し出した。
「いいえ、お嬢様がお使いになりたいのでしたら!」
「どうぞ、お使いください!!」
二人は私の側に立つメルファにカゴを渡す。
そして若い料理人さんが、少し頬を染めて隣の料理人さんに耳打ちしてるのが聞こえた。
「うひゃ~、俺初めてお嬢様からお声をかけて貰いましたよ!」
「こら、トーマス調子に乗るな」
どうやら若い料理人さんはトーマスって言うみたい。
職人らしく短髪の栗毛で、気軽に話が出来そうな明るいお兄さんっていう感じ。
18歳ぐらいかしら?
こっちを見ているので、こちらも笑い返してみたら真っ赤な顔をしていた。
メルファがカゴに入った卵と私を見比べると、不思議そうに首を傾げる。
「お嬢様……が、お料理をされるんですか?」
酷いよメルファ。
お嬢様『が』の部分に棘があるよ。
そんなに不安そうな顔で私を見ないで。
でも考えてみたら当然かも。
私が料理が出来るなんてみんな思わないよね。
ちょっと失敗したかな……。
だけどエルナが期待に満ちた目で私を見上げている。
今更、出来ないなんて言えないよ。
「……あ、あのね、以前ご本で勉強したの。機会があったら作ってみたいなって、メルファとエリンも手伝ってくれる?」
メルファとエリンは顔を見合わせていたけど、何とか納得してくれた。
「もちろんです、お嬢様!」
ミーアさん達の料理は、ツベルク地方のスープと鳥肉のステーキみたい。
ミーアさんの手際はさすが料理屋さんをしていただけあって手早くて鮮やか。
丁寧なんだけど素早くて動きに無駄がない。
(凄いなぁ、プロの料理人さんってやっぱり違うよね)
料理長達も、ミーアさんの指示通りに食材の下処理を手際よく終わらせていく。
私は大きな厨房の中で空いている場所を探して、メルファに卵を置いてもらった。
邪魔にならないようにしないとね。
エルナが大きな目で私を見ている。
「ねえ、シャルロッテお姉ちゃん! 何を作ってくれるの?」
「ふふ、まだ内緒よエルナ」
エルナがちょっと頬を膨らませて私を見上げるのが可愛い。
ミーアさんや我が家の料理人達に比べたら、私が作れるものなんて限られてるけど、エルナが喜んでくれるといいなって思う。
まずは材料が揃ってるかだよね。
そう思って私はメルファに必要な物を伝えていく。
卵にミルクにお砂糖、それから小さめの滑らかな陶器の器。
ほかにも幾つか必要なものがあるか尋ねる。
メルファは頷いて聞いてくれた。
「大丈夫ですお嬢様、それなら全部調理場に揃っていると思います」
良かった、大丈夫みたい。
私が頼むと、エリンがこれから割る卵を入れる大きめの器を用意してくれた。
まずはこちらも下準備からだよ。
そう思って私がもう一度ドレスの袖を捲って、卵を手に取ろうとしたらメルファが心配そうに言った。
「お嬢様、私がやりましょうか?」
私はエルナのように、ちょっと頬を膨らます。
心配しないでメルファ、私だって卵ぐらい割れるよ。
私は過保護なメルファをジト目で見ながら卵を一つ手に取った。
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