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23、約束(アドニス視点)
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「なあ、エルヴィン。どうせ復興させるなら、カルム子爵の土地も手に入れたいものだな」
地図を見ながら俺は、エルヴィンにそう尋ねた。
カルム子爵の土地の中で戦禍にあった部分は狭いが、ここを買い取れれば開発地が完全につながる。
行き来をする道を作るには最適だろう。
「そうですね。いいでしょう、私から一度カルム子爵に話を通してみましょう」
俺は今回の復興事業にあたっての書類仕事の山に、辟易しながら一息ついた。
「あいつは、きちんと大人しくしてるんだろうか?」
俺の言葉にエルヴィンが首を捻った。
「シャルロッテ様の行動だけは読めませんからね。そこが魅力的なのですが」
まったくこいつは、本当にあいつのことを狙ってるんじゃないかと時々気がかりになる。
……いや待て、俺がなんであんな奴のことで気がかりになるんだ、くだらない。
すると扉があわただしくノックをされる。
エルヴィンが扉を開けると、侍女長のメリエッタが飛び込んでくる。
「大変で御座います。シャルロッテ様がまた王妃陛下のお怒りに触れたようです」
「どういうことだ? あいつは家にいるはずだろうが!」
俺の問いに、メリエッタが状況を簡単に説明し始める。
どうやら母上の侍女達から聞いたようだ。
この手の噂はあっという間に広がるからな。
息を切らしながら説明するメリエッタの言葉を聞いて、俺は立ち上がった。
「来い、エルヴィン!」
「はい殿下」
俺は王宮の出口に向かって駆けていく。
通路の角を曲がり駆け抜ける俺達を見て、侍女達が何やら噂をしているが知ったことではない。
王宮を出ると、真っ青な顔をして馬車に乗り込むあいつの姿が見えた。
「おい! シャルロッテ!」
俺の顔をみると、青ざめた顔のままボロボロと涙を流し始める。
「あ、アドニス」
……殿下が抜けてるぞ、こいつは時々不敬だ。
俺はシャルロッテを俺に部屋に連れていくと、ドッカリと椅子に腰を掛けた。
そしてシャルロッテを睨んだ。
「お前は、俺との約束を一日だって守れんのか?」
約束をしたのは今日の朝だぞ、まったく。
「だっ、だって……ごめんなさい。約束守れなかった」
ベソベソと泣くシャルロッテの顔を、エルヴィンがハンカチを出してまた綺麗に拭いてやっている。
こいつはいつか、エルヴィンのハンカチをみんな奪っていきそうだ。
俺は泣きべそをかくシャルロッテをもう一度睨む。
「……もういい」
「え?」
シャルロッテがこちらを向いて鼻をちょっとだけすすった。
今朝のネグリジェ姿といい、女らしさっていうものがないのか。
俺はシャルロッテを抱きしめた。
「ふぁ、あ、あの殿下」
「つぶれたカエルみたいな声を出すな。暫くこうさせろ」
馬鹿な女だ、誰が見ているというんだ。
母上に俺のことを報告しようがしまいが、誰が見ている? 誰にも分かりはしない。
泣くほど怖かったのなら、黙って従えばいい。
信じてるなどと、あの母上の前でよくそんなことが言えたもんだ。
こいつは本当の大馬鹿だ。
「あ、あの酷いです。つぶれたカエルなんて、それは約束は破ったけど……」
頬を染めて俺に抗議をする女が、何故か愛おしく感じる。
俺はどうかしてるのだろうか。
「許してやる。お前は約束は破ったが、もっと大切なものを守った、そうじゃないのか? シャルロッテ」
俺にはまだ、信じるということが何なのかはよく分からない。
だが、こいつといると温かい気持ちになる。
これが信じるということなら、それも悪くはない。
俺は侍女長のメリエッタに声をかける。
「せっかく、こいつが来たんだ。あれを用意させろメリエッタ」
地図を見ながら俺は、エルヴィンにそう尋ねた。
カルム子爵の土地の中で戦禍にあった部分は狭いが、ここを買い取れれば開発地が完全につながる。
行き来をする道を作るには最適だろう。
「そうですね。いいでしょう、私から一度カルム子爵に話を通してみましょう」
俺は今回の復興事業にあたっての書類仕事の山に、辟易しながら一息ついた。
「あいつは、きちんと大人しくしてるんだろうか?」
俺の言葉にエルヴィンが首を捻った。
「シャルロッテ様の行動だけは読めませんからね。そこが魅力的なのですが」
まったくこいつは、本当にあいつのことを狙ってるんじゃないかと時々気がかりになる。
……いや待て、俺がなんであんな奴のことで気がかりになるんだ、くだらない。
すると扉があわただしくノックをされる。
エルヴィンが扉を開けると、侍女長のメリエッタが飛び込んでくる。
「大変で御座います。シャルロッテ様がまた王妃陛下のお怒りに触れたようです」
「どういうことだ? あいつは家にいるはずだろうが!」
俺の問いに、メリエッタが状況を簡単に説明し始める。
どうやら母上の侍女達から聞いたようだ。
この手の噂はあっという間に広がるからな。
息を切らしながら説明するメリエッタの言葉を聞いて、俺は立ち上がった。
「来い、エルヴィン!」
「はい殿下」
俺は王宮の出口に向かって駆けていく。
通路の角を曲がり駆け抜ける俺達を見て、侍女達が何やら噂をしているが知ったことではない。
王宮を出ると、真っ青な顔をして馬車に乗り込むあいつの姿が見えた。
「おい! シャルロッテ!」
俺の顔をみると、青ざめた顔のままボロボロと涙を流し始める。
「あ、アドニス」
……殿下が抜けてるぞ、こいつは時々不敬だ。
俺はシャルロッテを俺に部屋に連れていくと、ドッカリと椅子に腰を掛けた。
そしてシャルロッテを睨んだ。
「お前は、俺との約束を一日だって守れんのか?」
約束をしたのは今日の朝だぞ、まったく。
「だっ、だって……ごめんなさい。約束守れなかった」
ベソベソと泣くシャルロッテの顔を、エルヴィンがハンカチを出してまた綺麗に拭いてやっている。
こいつはいつか、エルヴィンのハンカチをみんな奪っていきそうだ。
俺は泣きべそをかくシャルロッテをもう一度睨む。
「……もういい」
「え?」
シャルロッテがこちらを向いて鼻をちょっとだけすすった。
今朝のネグリジェ姿といい、女らしさっていうものがないのか。
俺はシャルロッテを抱きしめた。
「ふぁ、あ、あの殿下」
「つぶれたカエルみたいな声を出すな。暫くこうさせろ」
馬鹿な女だ、誰が見ているというんだ。
母上に俺のことを報告しようがしまいが、誰が見ている? 誰にも分かりはしない。
泣くほど怖かったのなら、黙って従えばいい。
信じてるなどと、あの母上の前でよくそんなことが言えたもんだ。
こいつは本当の大馬鹿だ。
「あ、あの酷いです。つぶれたカエルなんて、それは約束は破ったけど……」
頬を染めて俺に抗議をする女が、何故か愛おしく感じる。
俺はどうかしてるのだろうか。
「許してやる。お前は約束は破ったが、もっと大切なものを守った、そうじゃないのか? シャルロッテ」
俺にはまだ、信じるということが何なのかはよく分からない。
だが、こいつといると温かい気持ちになる。
これが信じるということなら、それも悪くはない。
俺は侍女長のメリエッタに声をかける。
「せっかく、こいつが来たんだ。あれを用意させろメリエッタ」
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