17 / 126
17、部屋の中には
しおりを挟む
「シャルロッテ、お前はこれから数日間じっとしていろ。屋敷から出るなよ、それが仕事だ」
何それ酷い! まるで私が邪魔者みたい。
アドニスの言葉に苦笑しながら、伯爵様が口を開く。
「シャルロッテ様、念のためにです。支援物資の運搬方法の変更や、公爵様が復興を指揮する話はすぐに噂になります。レオナール殿下が何か手を打つとしたら、この数日が一番危険でしょう。シャルロッテ様に危険が及ぶようなことが、無いとは断言できませんから」
伯爵様が優しく肩に手を置いて、そうフォローしてくれた。
「いつもお側でシャルロッテ様を守って差し上げたいのですが、暫くは殿下も私も忙しくなりますから」
「だ、大丈夫です。じっとしてますから、お仕事頑張ってくださいませ」
反則だよ、伯爵様に嫌だなんて言えないし。
本当に私を心配そうに見つめてくれる青い瞳に、吸い込まれそうになる。
私の言葉を聞いて、アドニスは満足そうに頷いた。
「分かればいい。ダルスンとは打ち合わせもある、毎日顔は出してやるから心配するな」
そう言って結局、アドニスは屋敷を後にした。
私はお父様と、屋敷の前でアドニス達を見送る。
すっかり頬を膨らませた私を見て、お父様は仕事、仕事と言ってロートンさんとさっさと屋敷に戻っていく。
どうやら我が家の狸は、触らぬ神に祟りなしを心得ているようだ。
アドニスが「お前にもやってもらうことがあるぞ」なんて言うから、私にも出来ることがあるんだって張り切ってアドニスの言葉を待ってたのに……
……私がティアだったらアドニスも頼ってくれるのかな。
そう思うと少し悲しくなる。
そんな私をメルファが心配そうに見つめていた。
「シャルロッテ様、どうされたんですか?」
「あ、ごめんねメルファ。何でもないよ!」
そう言えば、また伯爵様のハンカチのことを忘れてた!
早く洗濯をしないと、染みになっちゃうよ。
鼻水の染みなんてついたハンカチなんて、伯爵様の前に出せるわけないよね。
「メルファ、昨日私が着ていたドレスはどうしたの?」
「はい、シャルロッテ様。今朝洗濯するつもりで、お部屋のクローゼットの中にしわにならないようにかけてあります。それがどうか致しましたか?」
まだ間に合ったみたい。
あのハンカチだけでも、自分で洗いたい気分だよ。
「あ、あの。暫く私お屋敷を出られないことになったから、気晴らしにメルファの洗濯を手伝おうかなって」
「駄目です! そんなところメイド長様に見られたら私、お尻が赤くなるまで叩かれます」
そうなんだ……
メルファにとっては、シャルロッテより怖い人がいるみたい。
私はヒソヒソと伯爵様のハンカチのことをメルファに伝えた。
メルファはそれを聞いてにっこりと笑う。
「任せて下さい! シャルロッテ様の鼻水の染みは、綺麗にしておきますから!」
メルファ、声が大きいよ!
私達はドレスを取りに私の部屋に向かった。
すると部屋の扉が開いている。
「変ですね、きちんと閉めて出たのに」
「そうよね」
私とメルファは、思わず顔を見合わせて中をのぞき込んだ。
何それ酷い! まるで私が邪魔者みたい。
アドニスの言葉に苦笑しながら、伯爵様が口を開く。
「シャルロッテ様、念のためにです。支援物資の運搬方法の変更や、公爵様が復興を指揮する話はすぐに噂になります。レオナール殿下が何か手を打つとしたら、この数日が一番危険でしょう。シャルロッテ様に危険が及ぶようなことが、無いとは断言できませんから」
伯爵様が優しく肩に手を置いて、そうフォローしてくれた。
「いつもお側でシャルロッテ様を守って差し上げたいのですが、暫くは殿下も私も忙しくなりますから」
「だ、大丈夫です。じっとしてますから、お仕事頑張ってくださいませ」
反則だよ、伯爵様に嫌だなんて言えないし。
本当に私を心配そうに見つめてくれる青い瞳に、吸い込まれそうになる。
私の言葉を聞いて、アドニスは満足そうに頷いた。
「分かればいい。ダルスンとは打ち合わせもある、毎日顔は出してやるから心配するな」
そう言って結局、アドニスは屋敷を後にした。
私はお父様と、屋敷の前でアドニス達を見送る。
すっかり頬を膨らませた私を見て、お父様は仕事、仕事と言ってロートンさんとさっさと屋敷に戻っていく。
どうやら我が家の狸は、触らぬ神に祟りなしを心得ているようだ。
アドニスが「お前にもやってもらうことがあるぞ」なんて言うから、私にも出来ることがあるんだって張り切ってアドニスの言葉を待ってたのに……
……私がティアだったらアドニスも頼ってくれるのかな。
そう思うと少し悲しくなる。
そんな私をメルファが心配そうに見つめていた。
「シャルロッテ様、どうされたんですか?」
「あ、ごめんねメルファ。何でもないよ!」
そう言えば、また伯爵様のハンカチのことを忘れてた!
早く洗濯をしないと、染みになっちゃうよ。
鼻水の染みなんてついたハンカチなんて、伯爵様の前に出せるわけないよね。
「メルファ、昨日私が着ていたドレスはどうしたの?」
「はい、シャルロッテ様。今朝洗濯するつもりで、お部屋のクローゼットの中にしわにならないようにかけてあります。それがどうか致しましたか?」
まだ間に合ったみたい。
あのハンカチだけでも、自分で洗いたい気分だよ。
「あ、あの。暫く私お屋敷を出られないことになったから、気晴らしにメルファの洗濯を手伝おうかなって」
「駄目です! そんなところメイド長様に見られたら私、お尻が赤くなるまで叩かれます」
そうなんだ……
メルファにとっては、シャルロッテより怖い人がいるみたい。
私はヒソヒソと伯爵様のハンカチのことをメルファに伝えた。
メルファはそれを聞いてにっこりと笑う。
「任せて下さい! シャルロッテ様の鼻水の染みは、綺麗にしておきますから!」
メルファ、声が大きいよ!
私達はドレスを取りに私の部屋に向かった。
すると部屋の扉が開いている。
「変ですね、きちんと閉めて出たのに」
「そうよね」
私とメルファは、思わず顔を見合わせて中をのぞき込んだ。
0
お気に入りに追加
3,916
あなたにおすすめの小説
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?
悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます
久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。
その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。
1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。
しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか?
自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと!
自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ?
ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ!
他サイトにて別名義で掲載していた作品です。
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
侯爵令嬢の置き土産
ひろたひかる
恋愛
侯爵令嬢マリエは婚約者であるドナルドから婚約を解消すると告げられた。マリエは動揺しつつも了承し、「私は忘れません」と言い置いて去っていった。***婚約破棄ネタですが、悪役令嬢とか転生、乙女ゲーとかの要素は皆無です。***今のところ本編を一話、別視点で一話の二話の投稿を予定しています。さくっと終わります。
「小説家になろう」でも同一の内容で投稿しております。
悪役令嬢はモブ化した
F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。
しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す!
領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。
「……なんなのこれは。意味がわからないわ」
乙女ゲームのシナリオはこわい。
*注*誰にも前世の記憶はありません。
ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。
性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。
作者の趣味100%でダンジョンが出ました。
お妃さま誕生物語
すみれ
ファンタジー
シーリアは公爵令嬢で王太子の婚約者だったが、婚約破棄をされる。それは、シーリアを見染めた商人リヒトール・マクレンジーが裏で糸をひくものだった。リヒトールはシーリアを手に入れるために貴族を没落させ、爵位を得るだけでなく、国さえも手に入れようとする。そしてシーリアもお妃教育で、世界はきれいごとだけではないと知っていた。
小説家になろうサイトで連載していたものを漢字等微修正して公開しております。
悪役令嬢の取り巻き令嬢(モブ)だけど実は影で暗躍してたなんて意外でしょ?
無味無臭(不定期更新)
恋愛
無能な悪役令嬢に変わってシナリオ通り進めていたがある日悪役令嬢にハブられたルル。
「いいんですか?その態度」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる