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17、部屋の中には

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「シャルロッテ、お前はこれから数日間じっとしていろ。屋敷から出るなよ、それが仕事だ」

 何それ酷い! まるで私が邪魔者みたい。
 アドニスの言葉に苦笑しながら、伯爵様が口を開く。

「シャルロッテ様、念のためにです。支援物資の運搬方法の変更や、公爵様が復興を指揮する話はすぐに噂になります。レオナール殿下が何か手を打つとしたら、この数日が一番危険でしょう。シャルロッテ様に危険が及ぶようなことが、無いとは断言できませんから」

 伯爵様が優しく肩に手を置いて、そうフォローしてくれた。

「いつもお側でシャルロッテ様を守って差し上げたいのですが、暫くは殿下も私も忙しくなりますから」

「だ、大丈夫です。じっとしてますから、お仕事頑張ってくださいませ」

 反則だよ、伯爵様に嫌だなんて言えないし。
 本当に私を心配そうに見つめてくれる青い瞳に、吸い込まれそうになる。
 私の言葉を聞いて、アドニスは満足そうに頷いた。

「分かればいい。ダルスンとは打ち合わせもある、毎日顔は出してやるから心配するな」

 そう言って結局、アドニスは屋敷を後にした。
 私はお父様と、屋敷の前でアドニス達を見送る。

 すっかり頬を膨らませた私を見て、お父様は仕事、仕事と言ってロートンさんとさっさと屋敷に戻っていく。
 どうやら我が家の狸は、触らぬ神に祟りなしを心得ているようだ。

 アドニスが「お前にもやってもらうことがあるぞ」なんて言うから、私にも出来ることがあるんだって張り切ってアドニスの言葉を待ってたのに……
 ……私がティアだったらアドニスも頼ってくれるのかな。

 そう思うと少し悲しくなる。
 そんな私をメルファが心配そうに見つめていた。

「シャルロッテ様、どうされたんですか?」

「あ、ごめんねメルファ。何でもないよ!」

 そう言えば、また伯爵様のハンカチのことを忘れてた!
 早く洗濯をしないと、染みになっちゃうよ。
 鼻水の染みなんてついたハンカチなんて、伯爵様の前に出せるわけないよね。

「メルファ、昨日私が着ていたドレスはどうしたの?」

「はい、シャルロッテ様。今朝洗濯するつもりで、お部屋のクローゼットの中にしわにならないようにかけてあります。それがどうか致しましたか?」

 まだ間に合ったみたい。
 あのハンカチだけでも、自分で洗いたい気分だよ。

「あ、あの。暫く私お屋敷を出られないことになったから、気晴らしにメルファの洗濯を手伝おうかなって」

「駄目です! そんなところメイド長様に見られたら私、お尻が赤くなるまで叩かれます」

 そうなんだ……
 メルファにとっては、シャルロッテより怖い人がいるみたい。
 私はヒソヒソと伯爵様のハンカチのことをメルファに伝えた。
 メルファはそれを聞いてにっこりと笑う。

「任せて下さい! シャルロッテ様の鼻水の染みは、綺麗にしておきますから!」

 メルファ、声が大きいよ!
 私達はドレスを取りに私の部屋に向かった。
 すると部屋の扉が開いている。

「変ですね、きちんと閉めて出たのに」

「そうよね」

 私とメルファは、思わず顔を見合わせて中をのぞき込んだ。
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