癒し手は異世界の救世主

やの有麻

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第2章 四葉の役割

2ー20 アルバドとマルファス④

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沈黙が続いた時、またドアのノック音が響く。



「こんにちはアルバド。イリースよ。」
「ガガヴィルだ。いるか?」


伝書鳩で呼んだ残り2人がドアの外にきたらしい。アルバドはハダキの口元にタオルを巻いて声がでないようにする。そしてハダキに『隠蔽ハイディン』を唱え姿を隠す。


「あぁやっと来たか!入って良いぞ!」


ガチャっとドアが開き2人が中に入ってきた
。すると1人の女性がギョッとした目でマルファスを凝視した。


「なななっ何でこんな所にオオカラスがいるのよ!?」
「ああ、こいつは俺の従魔だ。マルスって言うんだ。優秀だぞ!」
「まぁ魔鳥好きのアルバドの事だ。今に始まった事じゃない。」


中に入ってきた男性、ガガヴィル・ルーテルが呆れ顔で発言する。それを聞いて納得したように頷く女性、イリース・イルミターナ。

この二人も唯一アルバドが認めた信頼してる人たちだ。


「あれ?ハダキくんは?まだ着かないの?」
「確か武器の手入れをするとかで遅くなるそうだよ。」
「そうか。・・・ところで何があった?俺達を呼ぶって事は緊急指令でも入ったか?」
「あぁ・・・その事なんだけど、その前に2人に聞きたいことがある。」


それからハダキに質問した内容と同じく質問していく。

すると2人は特に怪しい話を聞いてないらしい。


「すまんが、俺は妖精の森とも呼ばれてる深い森で魔物退治をしていた。世間話は疎い。」
「私は猫種の獣人のいる村で繁殖期を迎えたとの事で保育所のような事をしてました・・・私も世間話は疎いです・・・すみません。」
『・・・ガァ(こいつらは嘘を言ってないようだ。ガガヴィルという奴は血生臭い獣の臭いでイリースは乳臭い。それと猫独特のフェロモンの匂いがする。)』
「そうか・・・では、ここまでの道のりで気になった事はないか?」


そういうと2人は互いに首を傾けた。言われてる意味がわからないのだろうか!


「・・・えっと・・・とりあえず、ここにくる間にバッタリとガガヴィルさんに出くわして一緒にきましたよ?」
「・・・あぁそうだな。・・・ここにくる間に?・・・そういえば王都に入る時に厳重警戒だったな。俺とイリースは身分証を出したら「用件は何だ」と問われただけで素直に「アルバドに呼ばれた」と言ったら中に入れたぞ。何かあったのか?」
「!!・・・そっそうか・・・。」
『ガァガァ(ふむ。こいつらは何もしらないようだ。大丈夫だ。とりあえずハダキをどうにかしろ。俺の身分も伝えても構わん。)』
「はい。・・・『隠蔽ハイディン』解除!」


アルバドが唱えるとイリースとガガヴィルのすぐ前に檻に入ったハダキが現れた。


「キャッ!?えっハダキくん!?!?」
「・・・アルバド、こいつ何やったんだ?」
「とりあえず今の現状を話す前に、紹介したいがいる。」
「「?」」


2人はアルバドが何を言ってるのかサッパリ理解できないという顔をする。
するとマルファスはグググッと元の大きさに戻っていく。
その姿を唖然と見つめてしまう2人。


「すまんな隠して。この方は大魔鳥マルファス様だ。聞いたことはあるよな?」
「「・・・はぁ?」」



2人の間抜けな一言が被る。ちょっと傑作だ。


『ククク・・・人間はコロコロ表情が変わって面白いな。』
「そんな事言わないで下さいマルファス様・・・。俺だって始め話に追い付くのに無い脳をフル回転してやっと現実を受け止めたんですからね!」


アルバドは恨めしそうにマルファスをジト目で見て訴える。それすらマルファスにとってツボのようで笑い上戸のようにクスクス笑う。


『おい、そろそろ3人を現実に戻してやれ。』
「あぁ・・・えーあの3人に目覚ましの雨を『レイン』!」


すると一瞬バザーッと雨が降って止んだ。まるでバケツに水を溜め思いっきりぶっかけた感じになった。


「うわっぷ!?なっ何だ!?!?」
「ひゃあーーー冷たい!!!」
「うむむーーー!!!」


あっ、ハダキの口のタオル取り忘れていた。


「魂は戻ってきたか?どうだ、頭が冷えてクリアになっただろ?」
「アルバド・・・もっとマシな方法はなかったのか?」
「・・・何を言ってる。とりあえず、ハダキを見ろ。」


ハッと我に返った2人はハダキの姿を見て怪訝に思ったのか苦しそうな顔をしていた。


「今、絶壁都市がここ要塞都市に戦を仕掛けているんだ。・・・それと同時に近くにあるプリアラの町が魔獣キングベアーに襲われてるらしい。・・・ハダキは何らかの情報を得ているらしくてな。拘束させてもらってるんだ。」
「やだっ!プリアラの町が襲われてるって本当ですか?あそこは私の第二の故郷!今すぐ応援へ行かなくては!!」
「待てイリース。今はマルファス様の仲間が偵察に赴いてる。だから少し待って落ち着け。」
「・・・アルバド、先程の質問は・・・」
「すまんな。少し試した。まさかハダキが今回の事に絡んでるとは思いもよらなかったがな・・・」
「ハダキ・・・お前・・・」
「むぐむぐぅ~‼」


何か真っ青になりながらハダキが訴えていた。アルバドはとりあえずハダキの口に縛ってたタオルを解いた。


「ぐっ、けほっげほっ!!」
「・・・話してくれるかハダキ。ギンギに何を言われた?」
「はっ、はっ、アルバド・・・ごめん、謝って済む事じゃないんだけど・・・はっ早くラーヤ村へ行って!!!」
「なっなんで!?」
「ごめん・・・説明は後!いっ急いで!」


なんだか切羽詰まった様子でハダキはアルバドに訴えてきた。


『・・・仕方ない。今回は特別だぞ?ヨツバの身が危ないなら急ぐに越したことはない。』
「えっ?マルファス様、なにをっ!?」


一瞬にして黒い影が4人を床から全身を包み込み暗闇の世界に入っていった。




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