癒し手は異世界の救世主

やの有麻

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第1章 いざ異世界へ

1ー4 都会は恐ろしや・・・

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「・・・俺はクロウ・ヴィッセド。佐官大佐の位にいる。獣族の狼種にあたる。」
「私はアヤン・シャルルクと申します。下士官曹長の位にいます。獣族の豹種になります。」


2人は正座から右膝を付き直し左手を胸元に持っていき上半身を45度曲げ最敬礼をする。
そして黒い尖った耳とフサフサの尻尾を持つクロウは頭を下げたまま語り始めた。茶色い丸い耳に内側に丸めた長細い尻尾を持つアヤンはクロウの言葉に耳を傾けた。


「俺達は要塞都市ギルディアンの騎士に所属している。約1ヶ月前に、ここラーヤの村に大量の餓鬼、ゴブリンやオーガが押し寄せてるという情報を受けたのだ。」


要塞都市ギルディアンは応龍が守護する土地の中でも中心都市としても有名で広い範囲の土地を所有している。「要塞」と付いてるように街を高い塀で囲っているのが特徴的で、一番栄えている。

そこの騎士団にクロウとアヤンは所属しているらしい。
騎士団にも位があり、上から「将官」、「佐官」、「尉官」、「准士官」、「下士官」、「兵卒」とあり、その中でもまた名称があるらしい。クロウは佐官、アヤンは下士官という事なので、位は高い方なんだろう。


「ラーヤの村には俺の種族が多く住んでるので、俺が指揮して討伐部隊を作成した。そしていざ出陣しようとした時・・・」


100人強部隊を形成し要塞都市から出た所に、目の前にもう一部隊がいた。


「そんな少人数では予期せぬ事が起こった場合、手の付けようがなくなるぞ」


もう一部隊を率いてる人物がクロウに話しかけてくる。


「これはギンギ少将。わざわざ餓鬼ごときに少将が出陣なさらなくても我々の部隊のみで片付きます」
「もしもの為だよ。私たちはクロウ大佐の後を付いてくだけだ。」


彼の名はギンギ・アホロイン。人族で貴族生まれのボンボンで金と権力で将官になった成り上がりだ。きな臭い奴で騎士団の中では嫌われている。だが自分たちより位が高いので誰も口出しができないでいた。


「さぁ何をしている。ラーヤ村までの地図を持ってるだろう。後を追うので案内人せよ」
「・・・承知しました。」



このギンギが物事に関わると大事になると騎士団で噂されている。

・・・事実。
ある街へ偵察にいった部隊にギンギの率いる部隊も付いていき、後、偵察部隊は全滅。街は全壊。ギンギ部隊は数人生き残り都市へ帰還してきた。
その時、ギンギは少し鎧に傷が付いていただけでほぼ無傷だったという。
ギンギの話では飛獣ワイバーンの団体が街を襲ったとのこと。ギンギは部隊の端で指揮していただけだという。
でも実際は飛獣は来ておらずギンギが街を支配しようとして、それに反発した偵察部隊は不意を突かれ全滅したのが事実である。

王はその事を知らず、ギンギを称賛するばかりで王からの信頼は厚い。だからギンギはやりたい放題。何をしても文句を言う奴がいないからだ。


その悪名高いギンギが付いてくるという事は、ラーヤ村を襲うつもりなのだろうか。それとも他に何か狙いがあるのだろうか。
どちらにせよ、何を言おうが付いてくるようなので何も言わず出発する。





そして案の定村が近づいたのを見計らい火術で家を焼き払いだし、それが合図にクロウの率いる部隊とギンギの率いる部隊で戦闘が始まった。

結果は惨敗。村人やクロウの部隊が全員倒れたのを確認してギンギの部隊は撤退していった。クロウは最後の力を振り絞って近くにいたウサギ耳の子供を抱き抱え火事から身を守った。

そこへ四葉と応龍が来て雨が降り火事が収まり怪我は全て治り村人の何人かは助かった。

・・・という経緯があったとクロウは重苦しい表情で語ってくれた。



「都会は恐ろしい所ですね。」
『ふむ・・・なんと残酷な事を考える輩だ。』
「応龍さん、何とかならないのですか?」
『まずこのラーヤ村を何とか復興させねばならん。このままでは生き長らえた者が生きていけぬ』
「では復興の手伝いをするんですね。では暫くこの村に滞在するんですね。」


応龍はクルルと鳴いて頷く。

すると、ふとクロウの方を見ると呆気にとられていた。他の人を見ると皆があんぐりしていた。


「えっ⁉皆さんどうしましたか?」
「・・・・・・いま、おうりゅうと言ったか?」
「あっはい。・・・あっ・・・・・・」


やっと今の状況を確認できた。応龍というのはこの土地の守護神のような存在で、その神のような存在が今目の前にいたら誰もが驚くよね。


「あ~そうです。こちらに居られる方は応龍さんです。」


皆があんぐりしていた。

いち早く立ち直ったのはクロウだった。そしてまた最敬礼をしだした。


「まさか応龍様直々に来ていただけるとは。お会いできて光栄です!」


真夜中というのにも関わらず大声で叫びだした。それを聞いてアヤンや村人たちはやっと我に帰ったのか皆が最敬礼をしだした。


『ふむ、そう畏まらずともよいぞ。我は結局戦を停める事ができなかったのだから。不甲斐ない。我こそ謝罪せねばならぬ。そして今生きてる者らよ、良く生き残ってくれた。感謝する。』
「勿体ないお言葉です。謝罪なんてとんでもない。そして、感謝するのもこちらが感謝せねばならない事。今更ながら、そちらの女性は一体・・・?」
「私は・・・ヨツバ・アマミヤと言います。一応人族です。」
「ヨツバ様、此度は感謝しきれないほどの感謝を。有難うございました。この命、一生貴女に捧げます。」
「・・・ん?今なんて?」



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