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番外編…アルトゥン編

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つがいを見つけた事によって達成感もあり、上機嫌でユエリャン王国へと戻る。



「こ、これは・・・!!何が・・・あったのだ!?」

ユエリャン王国は変わり果てていた。見た目は変わらない。変わったのはドラゴンの頭数が異様に少ないのだ。・・・何があった?

『おうさま・・・』
『やっと帰って来た王様・・・』
『早く城へ王女様が』
「あ、姉上がどうしたのだ?」

国に住んでた妖精は急かすばかりで明細を話さない・・・とにかく姉に何かあった事は確かのようだ。
急いで城へと飛んで行く。

「姉上ぇーーー!!」
「あぁ・・・やっと来たかアルよ。」
「あ、あねうえ・・・?」

姉はドラゴン用のベッドにうつ伏せになって横になっていた。・・・変わり果てていた。鱗は何ヵ所か剥がれて肌が見えており、角が欠け、顔は痩せこけていた・・・

「いっ、たい、・・・一体何が・・・」
「・・・何千年に一度起こる、ドラゴン特有の、流行り、病が広がったのよ。・・・あなたが地上にい、てくれて・・・良かったわ・・・」
「なっ!?そんな!我はこの国の王だぞ!!王だというのに・・・よ、妖精たちは何故我に知らせなかったのだ!!!」
「私が・・・口止めし、たからで、すよ・・・。もう王族の、血を受け継ぐの、は・・・私と、貴方だけだから・・・」
「なっなんだって・・・?じ、じゃあ弟妹たちは・・・」
「・・・」
「あ、あねうえ・・・」

絶望一色・・・
姉はもう・・・いつ天へ召されるかわからない状態・・・我、1頭だけ生き残るのか・・・?

「アル・・・番は、見つかった、の、ですか?」
「!・・・は、はい・・・だが、相手の都合でまだ・・・連れてくる事は叶いませんでした。」
「そう・・・良かったわ。国の母が見つかったのなら・・・国は安泰、だわ・・・ふ、ふふ・・・ああ、良かったわ。ありが、とうアル。よく・・・長い、あ、いだ・・・探してく、れましたね・・・」
「姉上・・・どうか・・・まだ我の側に居てください。あまりにも・・・まだ頭の中で整理が・・・うっ・・・」
「大丈夫よ。まだ2~3年、は大丈、夫よ。貴方に、引き継ぎをする、までは・・・生き延びるわ。」
「・・・姉上・・・うぅぅ。」

思わず自分が情けなくなり姉にすがってしまった・・・悔しい。我は番を探すのに夢中で国の事は疎かにしてしまった。その代償がとても大きい・・・よりによって我のいない時に流行り病が広がるとは・・・もう少し配慮していれば、沢山の同族が亡くなる事はなかったのに・・・



先に気づいたのは末弟だった。ユエリャン王国は広い為、兄弟と騎士たちで見回りをしている。我が拠点としている土地は王都。そこからかなり離れた、緑が他の領土より豊かな町から流行り始め、そこからあっという間に広がったらしい。数でいうと・・・4億といたドラゴンは・・・僅かな時でたったの9千頭まで減ってしまった・・・唯一の救いは世界樹のある土地だけは絶対防御の結界を張り無事だった事。あそこには、すぐにでも生まれそうな卵が何万と大切に保管されている所だ。
我らは世界樹から生まれる。どういう仕組みなのかは不明だが夫婦がまぐわった後に子が成ると世界樹に新たな卵が実る。世界樹は枯れる事なく国を支えてくれてる大切な聖樹だ。
そこに聖樹を世話をしているドラゴンが4千頭。・・・ほぼそこにいたドラゴンが生き残った形になってしまった。



それから姉に聞きながら職務を全うする。特に被害が多い町には騎士たちが赴き、被害が少なかった町へと一時避難させた。不足な分は王都にある保管庫から配っている。
慌ただしい日々が続いたが姉の体を気遣うとそうのんびりとはしていられなかった。 ますます衰えていく姉に少しでも安心してもらえるよう国をまとめなくては・・・



・・・そして帰国して5年が経ち、やっと落ち着きを取り戻した。姉は宣言通り3年後に息を引き取ってしまった。最後に我に頼み事を遺言として残して逝った。

「あの箱の中に、兄弟の、まだ病に伏せる前に集めた鱗と牙が入っている。・・・勿論、私のも入っておる。・・・それで今度、あと6年後に嫁いでくる番の国と同盟を結ぶ、献上品を作るのだ。装飾品でも武器でも・・・なんでもいい。番と深く繋がる為に、番の母国とも繋がりを作るといい。わかったな。」
「姉上・・・はい。必ず良い物を作り同盟を結べるよう努力致します。」
「・・・これだけは言うまいと思ってた事があるの。本当はね・・・定かではないが、地上に流行り病の特効薬がある可能性があったの。・・・流行り病が広まった時、真っ先に貴方に知らせようとしたの。・・・でも今この事を話してしまったら貴方はすぐに国に帰ってきてしまうと思い言えなかったの。ごめんなさいね。」
「っ!いいえ!いいえ!・・・そんな・・・我の事を思っての行動なんですよね。・・・そのお蔭で番を見つける事ができました!・・・姉の配慮がなかったらきっと・・・時期が合わなければ番と・・・インヴェルノと会うことはできなかっただろう。」
「あら。イン、ヴェルノ、と言うのね。うふふ。冬という意味ね。きっと雪のように白く淑やかな子なんでしょうね・・・」
「冬・・・そういえばインヴェルノとの出会いは寒空の中だったな。・・・確かに肌は白く、柔らかかった。まだ幼子だった・・・」
「あぁ・・・一度、会って・・・見たかっ、た・・・わね。」
「あ、姉上!しっかり!」
「・・・アルトゥン・・・あとは、頼みますよ・・・貴方一頭残して・・・残酷な事をしてしまって申し訳ないわ・・・ど、どうか番の、イン、ヴェルノ・・・と、仲良く、ね・・・」

・・・姉は笑って最期を遂げた。
姉を弟妹たちが眠ってる墓の隣に遺骨を埋める。流行り病で亡くなったという事で火葬して残った骨のみを拾い埋葬する。きっと・・・弟妹も同じように埋葬されたであろう。
今回の流行り病は過去最多の被害が起こった。国王が愚王だったが為に起きた出来事・・・なんとも情けない。
我は今まで以上に責務を全うせねばならない。我が番にこんな情けない所を見せるわけにはいかないからな。

「拝見、失礼致します。今日から我が陛下の右腕とならせて頂きます。ムスタと申します。」
「拝見、失礼致します。今日から我が陛下の左腕とならせて頂きます。ヴァルコイネンと申します。」
「「我が陛下に忠誠を!!」」
「あぁ。宜しく頼む。」

姉が亡くなり暫く経った頃。我の付き人となる2頭のドラゴンが拝見の間に現れた。ムスタは漆黒、ヴァルコイネンは純白の、この国でも色が混ざってない純粋な色の鱗を持つドラゴンは少ない。この2頭は騎士の中で最も腕の立つ2頭で、我の付き人になりたいと名乗り出てきた。我が国で滅多に戦争等は起こらないが、いざ何かあった時の為にと、共に行動を取りたいと言われた。
・・・素直に嬉しいと思った。この国に流行り病が広がった時に国王である我が不在だった事は知れ渡っている。『病に逃げた王』、『愚王』、『無能王』など避難の声が広まっていた。それでも我に就こうとは・・・とんだ変わり者というわけだな。あぁ、変わり者上等。着いてきてもらおうではないか。



そして月日はあっという間に流れ・・・少しずつ生き残った同族に受け入れてもらいながらいつもの様に業務に励む・・・
すると身体の中に暖かな魔力の流れを感じた。・・・まさか!

「・・・ドラゴンさん。僕は16歳になりました。こちらへ来て頂けませんか。」

!やっと!やっと番からの連絡が来た!
急いでムスタとルコイを呼び地上へ、アルタイル王国へと急ぐ。



インヴェルノの魔力を辿り、とある広場にと足を運ぶ。そこにはアルタイル王国の国王とその家族らしき者たちが勢揃いしていた。そのうちの1人、妖精からの祝福を多いに受けている者がいた。・・・あぁ、あれが我が番。美しく成長してくれたようだ。魔力は更に膨大になり、顔も身体も凛々しくなっていた。
そしてインヴェルノの前に舞い降り、後ろに付き人も降りた。

話しかけインヴェルノの懐に頭を埋めた。すると抱き締めてきた。・・・あぁ、初めて会った時と変わらない、甘くて良い匂いがした。とても落ち着く・・・

ん?家族に我を紹介したい?そ、そうだったな、配慮が足りなかったようだ。言われるまで気付かなかったとは・・・我は無自覚に浮かれていたようだ・・・
とりあえず人の姿になるのが礼儀だろう。ドラゴンの姿では恐れられる可能性があるからな。

互いに自己紹介を済ませる。するとインヴェルノの親、前王が「我が宝を大切に悲しませる事もなく幸せに出来るか」と問われた。
・・・愚問だな。即答してやった。「一生愛すると誓う」と。すると我の言葉を聞いて我が番が顔を赤らめた。・・・うむ、初奴ういやつめ。
そして、姉の遺言通り我が家族の鱗と牙を使い折れる事のない剣と壊れる事のない盾をユエリャン王国一の鍛治職人に作ってもらい、それをムスタに持たせ、アルタイル王国の国王陛下に手渡した。「同盟を結んだ」と強調すると皆が呆気にとられていた。・・・そんなに意外な事だったのだろうか。
そして又もや我が番は顔を赤らめながらこちらを凝視してきた。あまりに可愛かったので「襲うぞ?」と耳元で囁いたら俯いてしまった。
あー・・・なんなのだこの生き物は。人間とはこんな初々しい生き物なのか?いや、こ奴だけなのだろう。・・・頭の中で理性と欲求と葛藤してしまった。う、うむ、侮れんな。
それからハネムーンを上げると言いユエリャン王国へと我が番を連れて去ろうとする。

・・・ん?ウィンザというインヴェルノの付き人が我が国に着いていきたいと懇願してきた。・・・珍しい人間もいるのだな。まぁインヴェルノも知り合いが居た方が心が休まるだろうと思い、ドラゴンの姿に戻り2人の人間を背に乗せアルタイル王国を離れた。

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