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第5話 万理衣の正体。そして武寅の想い
しおりを挟む夕方。
目が覚めると未だに彼は私の背中で寝息をたてていた。腕のホールドは解かれてたので彼を起こさないように身体を起こし部屋を出る。
そして店の正門に「休業」と張り紙を貼る。
来てくれた客には申し訳ないが仕方ない。
・・・私は満月の夜になると、先祖帰りしてしまい、猫の姿になったり、または猫耳尻尾のついた獣人となってしまうので、夜だけ身を隠す場所へと行く。
普段は家に引きこもれば問題ないのだが今は彼がいるから仕方がない。怪我人を追い出す程薄情者ではない。
何かの縁で店に辿り着いたのだろうから、その縁を大切にしなければならない。
・・・例え裏家業との繋がりがあったとしても・・・
++++++
俺が目が覚めたら彼は横で眠っていた。
目が覚め少し経つとアラームが鳴った。彼はまだ眠たかったらしく隣でモソモソしていた。手で顔を擦ったりして猫みたいで可愛くみえた。
ずっと眺めていたいと思っていたら急に抱き着いてきた。
女も、もちろん男にも無関心な俺だったが、彼に抱き着かれた時に少し心がざわついた。フェロモンの様な甘い香りが腰にキて下半身が反応するのを必死に堪える。
ぎゅうぎゅうと抱き着いて、ふと目が覚めたのか彼はガバッと起き上がった。シャツに短パンというかなり薄着だったが、俺に抱き着いた事で恥ずかしかったのか顔が首元が手が腕が、身体全身が真っ赤に染まっていく。その姿を細目で眺めて思わず笑いそうになる。
あぁ、なんて可愛らしい人だ。
それから変な猫耳の付いた仮面を顔に付け身支度をして、俺の顔を覗いてホッとした顔をして毛布を俺にかけて部屋を出ていった。
彼が部屋から出てった後、俺は気持ちが爆発しそうになった。
何だあの可愛さは!そしてあの匂い!香水でもつけてるのか?それとあの容姿。細くて俺の身体にすっぽり収まる細さ。腰付き。更にあの顔。中性の顔立ち。どっかの国のハーフか?日本人離れした美形だった。
ああ・・・これはマズイな・・・早く組に帰らなければならないのに、彼から離れがたくなった・・・もっと側にいたい。
ここは2階なんだろう、下の階から賑やかな声が聞こえる。そして美味しそうな料理の匂い。
1階は飲食店なのだろうか。だが外は暗い。居酒屋かバーでもやってるのだろう。
モヤモヤしながら、いつの間にか寝てしまってたらしい。
次に目を覚ますとカーテン越しに太陽の光をうっすら感じ朝だと気付く。だいぶ体調が良くなり起き上がる。まだ足元がおぼつかないが壁を伝いながら下の階へ行く。
足音で気付いたのか話しかけてきた。物腰柔らかそうな優しい声だった。
明るい所で見る彼の姿は・・・とても美しかった。
白髪混じりの肩まである黒髪で、顔には鼻から上を覆い隠す仮面をしているが彼にピッタリで違和感を感じさせない。
そして服装。バーテンダーの様なブラウスにベストを来て黒いスーツズボンを履いていて凄く似合ってた。
・・・彼の服装と店の雰囲気は場違いじゃないかと思ったが、彼は仮面に合わせての服装をしてるらしく仕方がないのだろう。
俺が見惚れて突っ立ってると彼は何か食べれるかと聞いてきたので頂くと返事をする。するとすかさずカウンター席の椅子を引いて座るよう促してきた。それに従い座ると満足そうに微笑んで料理を作ってくれた。
お粥の入った小さな鍋と茶碗とれんげを机の上に用意され、俺は手を合わせて「いただきますす」という。するとまた彼は微笑んだ。
仮面越しで口元しか見えないから本当に微笑んでるのか営業スマイルなのかわからなかったが、彼が微笑むと不思議と心が安らぐ。
食べ終わるとお茶を出してくれた。そして互いの名前を言い合い、彼、万理衣は俺の身体を気遣い今日から万理衣の部屋にあるベッドで寝てくれと言ってきた。心の中でガッツポーズをとる。
人生でこんなにも気になる人ができるなんて思いもよらず気分が浮き立つ。
ところが万理衣は今日から1週間店を休み夜に外出すると言い出した。
何故だ?もしかして俺の気持ちに気が付いたのか?まだアピールも何もしてないのに!
・・・なんだか店を休むのは訳有りのようだった。言いずらそうだったので何も聞かない。
それより仮面の事を聞いてみた。
すると顔に酷い傷があると言い出した。
・・・俺が見た時にはそんな目立つ傷はなかったように見えたのだが、これも訳有りなのだろうと思いとりあえず謝った。
そのあと万理衣に支えてもらいながら万理衣の部屋に案内してもらった。とても質素な感じだったが男性の一人暮らしならこんなものかと思った。
ベッドまで支えてもらい腰かけると万理衣は出ていこうとしたのでストップをかけた。
何かあったら呼んでくれと言われたので思わず「万理衣」と呼び捨てしてしまった。案の定苦笑いをされた。
隣の部屋で寝るなら一緒に寝ようと言ったら気まずそうにしたので昨日の事を話した。すると俺が手を離さなかったからと言い訳をしてきたので、ふらつく足で万理衣に近付き手を握って「これでいいか」と聞いたら諦めて一緒に寝る事になった。無意識に微笑んでしまったらしく万理衣が少し驚いていた。
それからシャワーを浴びたいと言ったので手を離した。そして万理衣が来るまでベッドに腰を掛けて待ってると呆れられた。
怪我をしている左肩を労ってもらい万理衣は右側に俺に背中を向けて横になった。壁際だったので少しずつ距離を縮めたら怒られた。
狭いと言われたので俺は万理衣の腰に腕を回し自分に引き寄せた。すると、やはり良い匂いが漂ってきたので思わず犬のように匂いを嗅いでしまった。それをまた怒られる。
仮面をとらないのかと言ったら嫌みを言われた。仮面に手を伸ばしたら本気で怒られたので諦めてまた腰に腕を回しギュッと抱き着く。
人の温もりとフェロモンのような香りと俺の身体にピッタリフィットする万理衣を抱え、気持ちよく眠る事ができた・・・
+++++++
部屋から私服を取りだし、もう一度彼の顔を覗いた。血色も良くぐっすり眠っていたので静かに部屋を後にする。
仮面を着けて外出するといつも注目の的になる。ハロウィンなど何かイベントをやってればこんなに目立つ事はないのだが、やはり目立ってしまう。
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