上 下
153 / 313
高年期[一学期編]

閑話休題…幸福な時間 前編。

しおりを挟む
~こちらは子鷹狩爛の視点です。~


前編は子鷹狩くんの回想入ります。後編は薫風との1日の話です。そして後編はエロ入ります。


一応閑話ですので飛ばしても話は繋がります。








*********



俺は子鷹狩爛。侯爵家の長男として生まれ長男として育った。礼儀から始まり小学校に上がる時には領土をどうまとめるかと領主の仕事を少しずつ教わってきた。




親が敷いたレールをただただ進んでいた。いつか知らない令嬢と結婚し侯爵家を嫁いで何も変わらない日々を過ごすのだろうと感情が何も沸かずただただ生活をしていた。





幼馴染みがいる。幼稚園の頃からの知り合いで、二階堂新と天野政美という。2人とも平民だった。・・・身分はそんなに気にしなかった俺は殆んど新と政美と行動を共にしていた。俺の両親も平民だからと卑下にせず家に呼んでも執事たちは丁寧な対応をしてくれた。






・・・幼稚園の高学年の時、とある地位の低い貴族達に嫌がらせを受けた。新と政美を平民だからと言って罵声を浴びせてきた。新も政美も顔立ちが良く幼稚園では中々の人気者だった為、それを疎んで飼育室の方へと呼びつけ蔑んできたのだ。・・・なんと愚かな。




だが言い返すにも後に俺がいない間に2人に何かあったら困る。貴族は俺だけ。・・・どうしたらいいか悩んでたその時、一人の男が石を投げてきた。あんなゆっくりな動作じゃ避けるの簡単だな。




ひょいと避ける。そして新が文句を言うと相手も言い返してきた。・・・あーめんどくさい。






その時、大きな音が聞こえる。音の方へと視線を向けるとそこには棒を持った小さな男の子が立っていた。・・・音を立てたのはこの子か?





ん?ウサギが怪我を?ああ、さっき投げてきた石がウサギに当たったのか。これは予想外。




男の子はウサギの怪我を気にしてるらしく俺らの助けにきたわけではないとキッパリ言い張った。だが取り囲んでた下級貴族が言葉を理解してないのかターゲットを男の子に向けて文句を言い始めた。・・・話が一向に進まないのを察知したのか男の子はウサギの元へ行く。だか進路妨害してきた下級貴族。男の子の腕を掴み言い合いをし始めた。・・・何故だか下級貴族の方が顔を真っ赤にし怒鳴り始めた。




・・・すると大きな音を聞き付けた先生たちが集まり解散となった。去り際に新が男の子の名前を聞いていた。




八乙女薫風。見た目は女の子と間違えそうなのに名前も女の子っぽかった。それを言ったら頬を叩かれた。痛くは無かったから手加減してくれたのだろう。




新も政美も薫風を気に入ったらしく休み時間になる度に薫風を探しては話しかけ仲良くなった。俺も、薫風の事は気に入っていた。




1年はあっという間に過ぎ小学に上がり薫風に会えなくなった。新も政美も別の学校へ行ってしまい一人になってしまった。だが3年に上がった時にまた会えた。



入学式の時に薫風を見つけた。すぐわかった。凄く嬉しかった。新や政美と会う時よりも嬉しかった。・・・何故だろうな。



声をかけると驚いた顔で俺の名前を口ずさんだ。薫風も覚えててくれたみたいだ。嬉しい。



手を差し伸べると誰かに遮られた。・・・薫風の雰囲気に似てる同じ学年の八乙女流依だった。・・・八乙女?ああ、この2人は兄弟か。薫風の兄がまさか同い年だとはな。今気付いた。






流依は薫風に溺愛してるのか近づこうとすると壁を作って俺に近づけさせないようにしている。




・・・流依は俺と少し似ているところがある。あまり人を寄せ付けない、信頼できる人しかつるまないが特に他人への興味が全くない。




ところが弟にはこの対応。まぁ俺も薫風には何故か構いたくなる何かに惹かれて一緒にいたいと思う程薫風の事が気になる。




流依の目を盗んで薫風をエスコートする。何故か怪訝な顔して見つめられたが気にしない。ああ、はたからみたら見たら女性をエスコートしてる形だから気になるのか?仕方ない。俺がそうしたいのだから。




・・・傲慢?そんなことない。気になった奴を優しくおもてなしするのは当然だ。気にする必要がない。





それから学年長になり、薫風も同じらしく一緒に生徒会室へ行く。・・・すると何故か生徒会長、風間和彦が薫風を気に入ってしまった。





やはり薫風は誰か人を惹き付ける何かがあるのだろう。俺もその魅力に引き寄せられたのだろう。




年々薫風は背が高くなり顔立ちも女性寄りの中性顔から大人びて美男子へと成長していく。たった4年だが隙あらば薫風に話しかけ学年長になれば当たり前の様にエスコートして当たり前の様に隣をキープしていった。



中学は何故か薫風は同じ中学へは進学せず農業中学へと行ったらしい。・・・予想外だった。兄の流依も少し残念がってたが薫風に甘い流依は薫風のしたいように好きにさせてるらしい。







・・・そして高校になり、驚いた事に、幼馴染みの新と、一年後に天野が平民から貴族に上がり同じエリート校、聖陵高等学校でご対面した。





まぁ小学の時も中学の時も変わらず俺の家へ招待したりして関係は続いていたから別に驚く事はないだろうが、まさか同じ学校、しかも新とは同じクラスになるとは思わなかった。






「同じ学校に来たんだな。」

「まぁな。爛が一緒の方が楽しいからな。」

「子鷹狩くん相変わらずだねぇ~いつもそんなツンツンしてるのー?」

「なんの事だ?」

「髪型もそうだしー性格も?」

「・・・」

「プハッ!言われてるぞ爛!」

「政美なら何言われても構わん。気にもしてないしな。」

「クールぅ~!子鷹狩くん格好いいねー!」





幼稚園ぶりの2人に思わず顔がほころぶ。こいつらなら気を使わず接する事ができる。






そして俺と新が3年になり立候補で新が生徒会長、俺が副会長、政美が会計へと入った。




そしてついに薫風が同じ学校へと入学してきた。





予想外に理事長として風間和彦が現れた。風間は家の事情で夏休みが終わった頃に学校から姿を消していた。なんでも家が没落したのを風間が立て直して今は公爵家の領主をやっていると聞いたことがある。・・・それが何故この学校の理事長に?





理事長の挨拶を見ていて、一瞬顔が綻んだ。その視線には・・・薫風がいた。前髪に金のメッシュを入れて、顔立ちは更に魅力的に美男子に育っている薫風がそこにいた。






・・・まさか薫風に会う為に理事長になったのか?そんなに薫風に執着してるのか?






新も政美も、兄の流依も、そして風間理事長も、皆が薫風を狙っているらしい。





強敵ばかりに軽く頭を抱える。薫風の人柄がいいのか、顔や容姿がいいのか、オーラのようなものがあるのか皆が薫風に好意を寄せている。






これはオチオチしてられないな。だからと言って猛烈アピールするわけにもいかない。・・・新が薫風を追いかけてる、その影でアピールするしかないだろう。





始めの好機は政美が切っ掛けを作った。ある昼休み、生徒会室でいつものメンツで昼食を食べてると、やけに政美がソワソワしていた。問い詰めると、薫風が政美の所へ行き音楽祭で歌った歌を教えて欲しいと言ってきたらしい。放課後、防音室で待ち合わせとの事で俺も同行させてもらう。




政美に先に防音室へ行ってろと言われ大人しく待つ。・・・するとドアから人影がみえた。だが中々入って来なかったので俺から迎えに行く。薫風と政美が俺を見て苦笑いしている。・・・声をかけ薫風だけ腕を引っ張り中へと引き入れる。慌てて政美も入ってきた。ッチ。早く扉を閉めればよかった。





それから薫風が政美から楽譜を貰いピアノを弾き始めた。・・・上手い。やはり薫風は音楽の才能があるんだろうな。何度か政美に指摘されてたがすぐに直して完璧に弾き始める。




それから薫風がとんでもない事を言い出した。政美に歌えって?・・・あいつは昔から歌だけは壊滅的だ。頭も運動神経もずば抜けて良いのに歌は最悪だ。・・・空気を読んでか薫風が気まずそうに自分が歌うから間違ってたら指摘しろと言って歌い出す。





・・・あ~・・・そう、これだ。薫風の歌声だ。声変わりして低くなっているが耳障りの良い凛とした癒される声をしている。




政美と感想を言うと素直にお礼を言う薫風。・・・あぁ、抱き締めたい衝動に駆られた。



それから薫風は満足するまで何度も同じ曲を歌い、政美が薫風が合唱で歌った曲も歌ってとお願いして薫風が歌い出した。・・・あぁこのままずっと聞いていたいな。





日が落ちてきて帰宅時間が迫ってきたという事でお開きになる。最後に薫風が政美に歌のお礼がしたいと言い出した。



そうだな。俺も薫風の歌声を聞かせてもらったお礼・・をしなければな・・・



始めに仕掛けたのは政美だった。お礼ねぇ~と言って薫風の不意をついてキスをした。呆気にとられてるのか無抵抗だ。・・・のちに自分がキスされてるのに気付き政美を退けた。




薫風が政美に反論してる隙に後ろに回り込み腕を引っ張り顎を掴み口づけをする。2度目のせいか唇を離すと怪訝な顔をされた。・・・もう一度しようとしたら政美に邪魔されすることができなくなった・・・




次の日には新がグレて薫風に言い寄ったらしいが流依から放課後、防音室で生徒会会議をしようと言われた。・・・新、抜け駆けしようとしたようだが御愁傷様だな。




それからは変わらず流依や最近やたらと親しくなった鳥羽や五十嵐秘書に阻まれて薫風と二人きりになることがめっきり減ってしまった・・・


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

よくある婚約破棄なので

おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。 その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。 言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。 「よくある婚約破棄なので」 ・すれ違う二人をめぐる短い話 ・前編は各自の証言になります ・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド ・全25話完結

クソ雑魚新人ウエイターを調教しよう

十鳥ゆげ
BL
カフェ「ピアニッシモ」の新人アルバイト・大津少年は、どんくさく、これまで様々なミスをしてきた。 一度はアイスコーヒーを常連さんの頭からぶちまけたこともある。 今ようやく言えるようになったのは「いらっしゃいませー、お好きな席にどうぞー」のみ。 そんな中、常連の柳さん、他ならぬ、大津が頭からアイスコーヒーをぶちまけた常連客がやってくる。 以前大津と柳さんは映画談義で盛り上がったので、二人でオールで映画鑑賞をしようと誘われる。 マスターの許可も取り、「合意の誘拐」として柳さんの部屋について行く大津くんであったが……?

中イキできないって悲観してたら触手が現れた

AIM
恋愛
ムラムラして辛い! 中イキしたい! と思ってついに大人のおもちゃを買った。なのに、何度試してもうまくいかない。恋人いない歴=年齢なのが原因? もしかして死ぬまで中イキできない? なんて悲観していたら、突然触手が現れて、夜な夜な淫らな動きで身体を弄ってくる。そして、ついに念願の中イキができて余韻に浸っていたら、見知らぬ世界に転移させられていた。「これからはずーっと気持ちいいことしてあげる♥」え、あなた誰ですか?  粘着質な触手魔人が、快楽に弱々なチョロインを遠隔開発して転移させて溺愛するお話。アホっぽいエロと重たい愛で構成されています。

ダンシング・オメガバース

のは
BL
異世界転移したけれど、僕の知ってるオメガバースとなんか違う! なんだってこの島のイケメンたちは、僕にダンスを見せつけるんだ。 僕は先生に相談した。 先生は、右も左もわからぬ僕を拾って保護してくれた人で、僕の担当医のようなものである。 彼が言うには、この島のバース性は独自の進化を遂げていて、ダンスで互いを誘惑するらしい。 しかも検査を重ねるうちに僕のバースは徐々にオメガを示し始めた。 自分のバース性を受け入れられずにいる僕にも、とうとう発情期がやってくる。 こんなとき触れてほしいのは先生だ。だけど、先生は僕のフェロモンの影響を受けない。 このままつらい片思いがずっと続くんだと思っていた。 先生が、僕の前から突然姿を消すまでは。 ※他サイトにも掲載しております。 ※表紙は生成AIをベースにして、髪型、ポーズ、服装等、多少手を加えたものを使用しております。

過労死で異世界転生したのですがサキュバス好きを神様に勘違いされ総受けインキュバスにされてしまいました

ムーン
BL
ブラック企業に勤めていた俺はある日突然死んでしまった。女神様に転生させてもらえたところまでは良かったのだが、その内容が問題だった。 女神はサキュバスもののエロ本を買っていた俺の好みを曲解し、男版のサキュバス……インキュバスに転生させた。しかも女神様の心付けで男にモテるように、 いわゆる総受け体質にされてしまった。 そのせいでモンスターに性的な意味で襲われるようになったけれど、ヤンデレ気味の弟やドSな勇者様、術や道具を使って落とそうとしてくる精霊使いにいきなり求婚してきた優しいオーガ……彼らに前世では経験できなかった愛情と快楽を与えられ、俺は過酷な世界で生きることを決めた。 人間の女性を襲えないから男から精液をもらうしかないと言い訳して、淫乱になっていくのは俺の流されやすい性格ではなくインキュバスの身体のせいだと言い訳して、抱かれる悦びに溺れていく。 ──── ────── ※暴力・流血・凌辱表現注意 ※攻めが複数居る。主人公が嫌がっても痛がっても犯されることがある。などが苦手な方は避けてください。 ※なんでもいいよ! 酷い目に遭う子が好きだよ! という趣味がないなら避けてください。 ※別投稿の作品と同世界の物語ですが、キャラ・ストーリー共にほぼリンクしないので気にしないでください自己満足です。

寝込みを襲われて、快楽堕ち♡

すももゆず
BL
R18短編です。 とある夜に目を覚ましたら、寝込みを襲われていた。 2022.10.2 追記 完結の予定でしたが、続きができたので公開しました。たくさん読んでいただいてありがとうございます。 更新頻度は遅めですが、もう少し続けられそうなので連載中のままにさせていただきます。 ※pixiv、ムーンライトノベルズ(1話のみ)でも公開中。

大魔法師様は運命の恋人を溺愛中。

みるくくらうん
BL
R18溺愛BL作品★  田舎の孤児院から、伯母の元で奴隷として過ごし、ひょんなことから地方特待生として王都の学校に進学することになったフィン・ステラ。  劣悪とも言える環境から王都に来たフィンは、住む家を探すよりも先に、憧れだったミスティルティン魔法図書館で教科書を手に入れようと行動を取る。  そこで出会ったハイエルフと何故か恋人になる展開になったが、実はそのハイエルフはミスティルティン魔法図書館を統括する大貴族の長にして王族特務・大魔法師であるリヒト・シュヴァリエだった。  リヒトの寵愛をひたすら受け愛を育む、溺愛系BL。 ------------------- 性描写★付けてます。 殴り書き小説ですが、楽しんでいただければと思います。 2021/07/25 シリーズ二作目配信開始しました☆

BL短編集②

田舎
BL
タイトル通り。Xくんで呟いたショートストーリーを加筆&修正して短編にしたやつの置き場。 こちらは♡描写ありか倫理観のない作品となります。

処理中です...