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高年期[二学期・後編]
空気が甘いのですが・・・
しおりを挟む「・・・」
はい、今日?二度目の目覚めです。外は明るいようでカーテンの隙間から光が指してます。・・・僕、起きれるかな?
うつ伏せから腕を立てて身体を起こ・・・ぅ、な、何だ?
「おはよう薫風。」
「お、おはようございます・・・」
「もう少し寝てなよ。今日はずっとベッドの中にいよう?」
「・・・」
な、なんか甘い・・・甘い雰囲気が漂ってきたのですが・・・。起き上がれなかったのは僕の背中に風間くんの腕が乗っていたから。・・・いつ起きたの?僕より前?
「・・・元より僕は動けないようですから。」
「ふふ、ごめんよ、あまりに気持ち良くてね・・・薫風に負担をかけてしまったね。お腹は空いてるかい?」
「いえ、とりあえず水分を摂りたいです。」
「わかった。・・・ああ、水が無くなってしまったね。薫風はそのまま寝てて少し待ってて。」
「・・・はい。」
ふふっと微笑みながらバスローブを羽織り部屋から出ていった。
・・・?
なんか風間くんが優しい?なんでだろう。・・・そもそも、リセット後の行為の後は全て執事に任せてたよね?それなのに昨日は・・・シーツの交換以外は風間くんがやってたような・・・記憶は曖昧だけど、そんな気がする。
コンコン・・・
「失礼致します。薫風様、お加減はいかかですか?」
「あ、足利さん。平気です。・・・動けませんが。」
「ご迷惑をおかけして申し訳ございません。しかし、和彦様、充分に睡眠を取れたご様子で・・・安心しました。」
「確かに目の隈が少し薄れてるようでしたね。・・・足利さんは、平気ですか?」
「はい。お陰さまで私も充分身体を休める事ができました。これも薫風様のお陰でございます。」
「・・・余程酷かったんですね。お疲れ様です。」
「有難うございます。・・・和彦様は、やはり記憶が無くなっても、どこかで薫風様を求めていたようで、夜も眠りが浅く、執務中もあまり集中できてない様子でした。」
「・・・」
「すみません、贔屓かもしれませんが和彦様は、根元は変わらないようです。薫風様・・・どうか和彦様を宜しくお願い致します。」
うん、贔屓?とは思わないけど、別れてから変わった気がするよ。
・・・学校での僕の噂は、終息はしてないが悪い噂はなくなったみたいだしね。まぁ新しい噂は絶えないけど、まぁ仕方ないよね。僕、何だかんだやらかしちゃってるからね。
「和彦さんが、前の様に・・・僕の事を想ってくれたら、また恋人に戻りたいと思ってます。」
「薫風様!では和彦様を許してくださるのですか?」
「え?許すもなにも・・・僕は何も怒ったりしてませんよ?」
「え?」
「・・・ああ、初めの頃は確かに怒りましたが、人間そんなに感情を長く持続なんてできませんから。そもそもまだ怒ってるなら僕はここにはいませんから。」
「薫風様・・・ああ、あなた様はなんて慈悲深い方なんでしょう。・・・わかりました。でしたら私もが和彦様をその気になるよう努めさせて頂きます!」
「は?」
な、なんか変な方へ解釈されてないか?てか人の感情なんて他人がどうこうできないよね?なんか目がギラギラして使命感に溢れてるような雰囲気が出てるんですが・・・そしてその状態で部屋を出ていってしまった・・・だ、大丈夫か?
________
「薫風・・・私が前に送ったピアス、また付ける気はないかい?」
「は?」
急に何を言い出すんだ風間くん?・・・ピアス?あのピアス?・・・え、何故?
てには並々入った水を抱え風間くんが帰ってきた。そして第一声に言い出したのだ。ピアス・・・風間くんの恋人の証であり僕にとって虫除けの意味もある物。それを何故今?
「な、何を急に?」
「薫風・・・私は昨日やっと自覚したよ。私は薫風と恋人に戻りたいと。」
「・・・都合がいいからですか?」
「!それは違う・・・薫風とずっと傍にいたい。薫風に恋をしている・・・好きなんだ薫風。私と、ちゃんと恋人になってほしい。契約書なんて必要ない、ずっと傍にいてほしい。これは本当の気持ちだ。」
「っ・・・」
信じられない。またあんな欲を吐き出すための道具の様に扱われたら・・・そんな風に考えてしまう自分に嫌気がさす。
「・・・」
「噂は消した。まぁ今は違う噂がたっているが・・・そのうち消えるだろう。まだ私を受け入れられないなら薫風が信じられるよう努力しよう。・・・このピアスを受け取ってほしい。そして信じられるようになったら装着してほしいな。・・・いいか?」
「・・・はい。それでしたら。受けとります。」
「ああ、有難う薫風。」
腕に抱えていた者を机に置きベッドに乗り上げ僕の上に覆い被さってきた。・・・うん、暖かい。
・・・だが、手の動きが怪しくなったのに気付きストップをかける。それを不機嫌そうに睨まれてしまった。
「・・・」
「和彦さん・・・あの、僕、今夜予定がありまして・・・」
「何かあるの?私より優先しなければならないのか?」
「はい。・・・子鷹狩先輩にお願いされて、ホテルのレストランで歌う予定があるのです。」
「・・・ああ、そういえば初めの頃はよく子鷹狩くんに呼び出されて行ってたね。最近はなかったのに何でまた?」
「ホテルのオーナーにお願いされたんです。お客様からの要望が絶えず対応に困ってるとの事で・・・僕も気晴らしに引き受けてしまった以上、お願いされた時には行かなければ。」
「そんな責任感を感じなくてもいいんじゃないか?それより・・・」
「・・・駄目です。ドタキャンはよくありません。」
「ど、たきゃん?」
「直前で約束を取り消すことです。人としては信用に関わりますからできません。・・・ですから、もうしません。」
「・・・あと、一回だけ。」
「うっ・・・」
なんかあざとくないか?リセット前の風間くんでもこんなに甘えてこなかったぞ?・・・いや、変わらないか?
そして惚れた弱味・・・なし崩しにもう一回?許す事になった。あー僕のバカぁー~~~・・・
────────
「・・・風間理事長までもが来るとは知らなかったぞ八乙女。」
「・・・」
結果、こーなる。
腰がたたなくなり結果、風間くんに横抱きされて登場する事になった。・・・椅子に座って歌えばいいから・・・まぁ大丈夫だろう。本当は立って歌った方が声に力が入って迫力のある歌声になるんだけど・・・まぁ今日選んだ曲は静かな曲ばかりだから大丈夫だろうと踏ん切り断らず登場したのだが・・・な、なんだろうこの険悪な雰囲気。・・・子鷹狩くんと風間くんって仲が悪かったっけ?
「八乙女をお連れくださり有難うございます。引き受けますのでどうぞ、お帰り願います。」
「冷たいな子鷹狩くん。昔は親しく話してたではないか。」
「それは貴方の取り方でしょう。俺は風間理事の読めない態度が気に入らないんですが。」
「ふふ、はっきり言うね。・・・まぁ、薫風は渡せないよ。私の席がないのであれば薫風と一緒に台に乗れば良いことだ。」
「それでは大騒ぎになります!・・・はあ、時間もない事ですので、まずは薫風、最後に音合わせをするか?風間理事には席を設けますのでそちらにどうぞ。」
「ああ、ありがとう。」
「はい、音合わせをしたいので、お願いしても良いですか。」
「こっちだ。・・・風間理事は他の者が案内しますのでそちらに。ここからは働いてる者以外は立ち入り禁止ですので。」
「今日ぐらい、いいではないか。私は薫風を誰にも触らせたくないのだが?」
「・・・」
「・・・」
はい、僕置いてきぼりにされてます。・・・どーでもいいから早くして?
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