上 下
312 / 313
高年期[二学期・後編]

空気が甘いのですが・・・

しおりを挟む




「・・・」




はい、今日?二度目の目覚めです。外は明るいようでカーテンの隙間から光が指してます。・・・僕、起きれるかな?




うつ伏せから腕を立てて身体を起こ・・・ぅ、な、何だ?






「おはよう薫風。」

「お、おはようございます・・・」

「もう少し寝てなよ。今日はずっとベッドの中にいよう?」

「・・・」




な、なんか甘い・・・甘い雰囲気が漂ってきたのですが・・・。起き上がれなかったのは僕の背中に風間くんの腕が乗っていたから。・・・いつ起きたの?僕より前?





「・・・元より僕は動けないようですから。」

「ふふ、ごめんよ、あまりに気持ち良くてね・・・薫風に負担をかけてしまったね。お腹は空いてるかい?」

「いえ、とりあえず水分を摂りたいです。」

「わかった。・・・ああ、水が無くなってしまったね。薫風はそのまま寝てて少し待ってて。」

「・・・はい。」



ふふっと微笑みながらバスローブを羽織り部屋から出ていった。






・・・?



なんか風間くんが優しい?なんでだろう。・・・そもそも、リセット後の行為の後は全て執事に任せてたよね?それなのに昨日は・・・シーツの交換以外は風間くんがやってたような・・・記憶は曖昧だけど、そんな気がする。




コンコン・・・





「失礼致します。薫風様、お加減はいかかですか?」

「あ、足利さん。平気です。・・・動けませんが。」

「ご迷惑をおかけして申し訳ございません。しかし、和彦様、充分に睡眠を取れたご様子で・・・安心しました。」

「確かに目の隈が少し薄れてるようでしたね。・・・足利さんは、平気ですか?」

「はい。お陰さまで私も充分身体を休める事ができました。これも薫風様のお陰でございます。」

「・・・余程酷かったんですね。お疲れ様です。」

「有難うございます。・・・和彦様は、やはり記憶が無くなっても、どこかで薫風様を求めていたようで、夜も眠りが浅く、執務中もあまり集中できてない様子でした。」

「・・・」

「すみません、贔屓かもしれませんが和彦様は、根元は変わらないようです。薫風様・・・どうか和彦様を宜しくお願い致します。」






うん、贔屓?とは思わないけど、別れてから変わった気がするよ。




・・・学校での僕の噂は、終息はしてないが悪い噂はなくなったみたいだしね。まぁ新しい噂は絶えないけど、まぁ仕方ないよね。僕、何だかんだやらかしちゃってるからね。






「和彦さんが、前の様に・・・僕の事を想ってくれたら、また恋人に戻りたいと思ってます。」

「薫風様!では和彦様を許してくださるのですか?」

「え?許すもなにも・・・僕は何も怒ったりしてませんよ?」

「え?」

「・・・ああ、初めの頃は確かに怒りましたが、人間そんなに感情を長く持続なんてできませんから。そもそもまだ怒ってるなら僕はここにはいませんから。」

「薫風様・・・ああ、あなた様はなんて慈悲深い方なんでしょう。・・・わかりました。でしたら私もが和彦様をその気になるよう努めさせて頂きます!」

「は?」





な、なんか変な方へ解釈されてないか?てか人の感情なんて他人がどうこうできないよね?なんか目がギラギラして使命感に溢れてるような雰囲気が出てるんですが・・・そしてその状態で部屋を出ていってしまった・・・だ、大丈夫か?




________





「薫風・・・私が前に送ったピアス、また付ける気はないかい?」

「は?」




急に何を言い出すんだ風間くん?・・・ピアス?あのピアス?・・・え、何故?




てには並々入った水を抱え風間くんが帰ってきた。そして第一声に言い出したのだ。ピアス・・・風間くんの恋人の証であり僕にとって虫除けの意味もある物。それを何故今?






「な、何を急に?」

「薫風・・・私は昨日やっと自覚したよ。私は薫風と恋人に戻りたいと。」

「・・・都合がいいからですか?」

「!それは違う・・・薫風とずっと傍にいたい。薫風に恋をしている・・・好きなんだ薫風。私と、ちゃんと恋人になってほしい。契約書なんて必要ない、ずっと傍にいてほしい。これは本当の気持ちだ。」

「っ・・・」




信じられない。またあんな欲を吐き出すための道具の様に扱われたら・・・そんな風に考えてしまう自分に嫌気がさす。





「・・・」

「噂は消した。まぁ今は違う噂がたっているが・・・そのうち消えるだろう。まだ私を受け入れられないなら薫風が信じられるよう努力しよう。・・・このピアスを受け取ってほしい。そして信じられるようになったら装着してほしいな。・・・いいか?」

「・・・はい。それでしたら。受けとります。」

「ああ、有難う薫風。」




腕に抱えていた者を机に置きベッドに乗り上げ僕の上に覆い被さってきた。・・・うん、暖かい。




・・・だが、手の動きが怪しくなったのに気付きストップをかける。それを不機嫌そうに睨まれてしまった。




「・・・」

「和彦さん・・・あの、僕、今夜予定がありまして・・・」

「何かあるの?私より優先しなければならないのか?」

「はい。・・・子鷹狩先輩にお願いされて、ホテルのレストランで歌う予定があるのです。」

「・・・ああ、そういえば初めの頃はよく子鷹狩くんに呼び出されて行ってたね。最近はなかったのに何でまた?」

「ホテルのオーナーにお願いされたんです。お客様からの要望が絶えず対応に困ってるとの事で・・・僕も気晴らしに引き受けてしまった以上、お願いされた時には行かなければ。」

「そんな責任感を感じなくてもいいんじゃないか?それより・・・」

「・・・駄目です。ドタキャンはよくありません。」

「ど、たきゃん?」

「直前で約束を取り消すことです。人としては信用に関わりますからできません。・・・ですから、もうしません。」

「・・・あと、一回だけ。」

「うっ・・・」





なんかあざとくないか?リセット前の風間くんでもこんなに甘えてこなかったぞ?・・・いや、変わらないか?



そして惚れた弱味・・・なし崩しにもう一回?許す事になった。あー僕のバカぁー~~~・・・






────────





「・・・風間理事長までもが来るとは知らなかったぞ八乙女。」

「・・・」




結果、こーなる。




腰がたたなくなり結果、風間くんに横抱きされて登場する事になった。・・・椅子に座って歌えばいいから・・・まぁ大丈夫だろう。本当は立って歌った方が声に力が入って迫力のある歌声になるんだけど・・・まぁ今日選んだ曲は静かな曲ばかりだから大丈夫だろうと踏ん切り断らず登場したのだが・・・な、なんだろうこの険悪な雰囲気。・・・子鷹狩くんと風間くんって仲が悪かったっけ?




「八乙女をお連れくださり有難うございます。引き受けますのでどうぞ、お帰り願います。」

「冷たいな子鷹狩くん。昔は親しく話してたではないか。」

「それは貴方の取り方でしょう。俺は風間理事の読めない態度が気に入らないんですが。」

「ふふ、はっきり言うね。・・・まぁ、薫風は渡せないよ。私の席がないのであれば薫風と一緒に台に乗れば良いことだ。」

「それでは大騒ぎになります!・・・はあ、時間もない事ですので、まずは薫風、最後に音合わせをするか?風間理事には席を設けますのでそちらにどうぞ。」

「ああ、ありがとう。」

「はい、音合わせをしたいので、お願いしても良いですか。」

「こっちだ。・・・風間理事は他の者が案内しますのでそちらに。ここからは働いてる者以外は立ち入り禁止ですので。」

「今日ぐらい、いいではないか。私は薫風を誰にも触らせたくないのだが?」

「・・・」

「・・・」





はい、僕置いてきぼりにされてます。・・・どーでもいいから早くして?

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

3人の弟に逆らえない

ポメ
BL
優秀な3つ子に調教される兄の話です。 主人公:高校2年生の瑠璃 長男の嵐は活発な性格で運動神経抜群のワイルド男子。 次男の健二は大人しい性格で勉学が得意の清楚系王子。 三男の翔斗は無口だが機械に強く、研究オタクっぽい。黒髪で少し地味だがメガネを取ると意外とかっこいい? 3人とも高身長でルックスが良いと学校ではモテまくっている。 しかし、同時に超がつくブラコンとも言われているとか? そんな3つ子に溺愛される瑠璃の話。 調教・お仕置き・近親相姦が苦手な方はご注意くださいm(_ _)m

俺は兄弟に愛されすぎている…

日高 アンズ
BL
両性の主人公総受けのBLです。 とにかく作者の欲望を積み込む予定です(笑)。 フリーターの冴えない主人公が、血の繋がらないハイスペック兄弟達に監禁される話し。 5人兄弟です。 誤字。脱字などがあったら申し訳ないです。 少し分かりにくい表現あるかもしれません。

俺は成人してるんだが!?~長命種たちが赤子扱いしてくるが本当に勘弁してほしい~

アイミノ
BL
ブラック企業に務める社畜である鹿野は、ある日突然異世界転移してしまう。転移した先は森のなか、食べる物もなく空腹で途方に暮れているところをエルフの青年に助けられる。 これは長命種ばかりの異世界で、主人公が行く先々「まだ赤子じゃないか!」と言われるのがお決まりになる、少し変わった異世界物語です。 ※BLですがR指定のエッチなシーンはありません、ただ主人公が過剰なくらい可愛がられ、尚且つ主人公や他の登場人物にもカップリングが含まれるため、念の為R15としました。 初投稿ですので至らぬ点が多かったら申し訳ないです。 投稿頻度は亀並です。

俺にはラブラブな超絶イケメンのスパダリ彼氏がいるので、王道学園とやらに無理やり巻き込まないでくださいっ!!

しおりんごん
BL
俺の名前は 笹島 小太郎 高校2年生のちょっと激しめの甘党 顔は可もなく不可もなく、、、と思いたい 身長は170、、、行ってる、、、し ウルセェ!本人が言ってるんだからほんとなんだよ! そんな比較的どこにでもいそうな人柄の俺だが少し周りと違うことがあって、、、 それは、、、 俺には超絶ラブラブなイケメン彼氏がいるのだ!!! 容姿端麗、文武両道 金髪碧眼(ロシアの血が多く入ってるかららしい) 一つ下の学年で、通ってる高校は違うけど、一週間に一度は放課後デートを欠かさないそんなスパダリ完璧彼氏! 名前を堂坂レオンくん! 俺はレオンが大好きだし、レオンも俺が大好きで (自己肯定感が高すぎるって? 実は付き合いたての時に、なんで俺なんか、、、って1人で考えて喧嘩して 結局レオンからわからせという名のおしお、(re 、、、ま、まぁレオンからわかりやすすぎる愛情を一思いに受けてたらそりゃ自身も出るわなっていうこと!) ちょうどこの春レオンが高校に上がって、それでも変わりないラブラブな生活を送っていたんだけど なんとある日空から人が降って来て! ※ファンタジーでもなんでもなく、物理的に降って来たんだ 信じられるか?いや、信じろ 腐ってる姉さんたちが言うには、そいつはみんな大好き王道転校生! 、、、ってなんだ? 兎にも角にも、そいつが現れてから俺の高校がおかしくなってる? いやなんだよ平凡巻き込まれ役って! あーもう!そんな睨むな!牽制するな! 俺には超絶ラブラブな彼氏がいるからそっちのいざこざに巻き込まないでくださいっ!!! ※主人公は固定カプ、、、というか、初っ端から2人でイチャイチャしてるし、ずっと変わりません ※同姓同士の婚姻が認められている世界線での話です ※王道学園とはなんぞや?という人のために一応説明を載せていますが、私には文才が圧倒的に足りないのでわからないままでしたら、他の方の作品を参照していただきたいです🙇‍♀️ ※シリアスは皆無です 終始ドタバタイチャイチャラブコメディでおとどけします

愛されなかった俺の転生先は激重執着ヤンデレ兄達のもと

糖 溺病
BL
目が覚めると、そこは異世界。 前世で何度も夢に見た異世界生活、今度こそエンジョイしてみせる!ってあれ?なんか俺、転生早々監禁されてね!? 「俺は異世界でエンジョイライフを送るんだぁー!」 激重執着ヤンデレ兄達にトロトロのベタベタに溺愛されるファンタジー物語。 注※微エロ、エロエロ ・初めはそんなエロくないです。 ・初心者注意 ・ちょいちょい細かな訂正入ります。

[R-18] 奴隷のレッスン:騎士団所属の末っ子王子は、イケメン奴隷に身も心も奪われる

山葉らわん
BL
【縦読み推奨】 ■ 第一章(第1話〜第9話)  アラディーム国の第七王子であるノモクは、騎士団長ローエの招きを受けて保養地オシヤクを訪れた。ノモクは滞在先であるローエの館で、男奴隷エシフと出会う。  滞在初日の夜、エシフが「夜のデザート」と称し、女奴隷とともにノモクの部屋を訪れる。しかし純潔を重んじるノモクは、「初体験の手ほどき」を断り、エシフたちを部屋から追い返してしまう。 ■ 第二章(第1話〜第10話)  ノモクが「夜のデザート」を断ったことで、エシフは司祭ゼーゲンの立合いのもと、ローエから拷問を受けることになってしまう。  拷問のあと、ノモクは司祭ゼーゲンにエシフを自分の部屋に運ぶように依頼した。それは、持参した薬草でエシフを治療してあげるためだった。しかしノモクは、その意図を悟られないように、エシフの前で「拷問の仕方を覚えたい」と嘘をついてしまう。 ■ 第三章(第1話〜第11話)  ノモクは乳母の教えに従い、薬草をエシフの傷口に塗り、口吻をしていたが、途中でエシフが目を覚ましてしまう。奴隷ごっこがしたいのなら、とエシフはノモクに口交を強要する。 ■ 第四章(第1話〜第9話)  ノモクは、修道僧エークから地下の拷問部屋へと誘われる。そこではギーフとナコシュのふたりが、女奴隷たちを相手に淫らな戯れに興じていた。エークは、驚くノモクに拷問の手引き書を渡し、エシフをうまく拷問に掛ければ勇敢な騎士として認めてもらえるだろうと助言する。 ◾️第五章(第1話〜第10話)  「わたしは奴隷です。あなたを悦ばせるためなら……」  こう云ってエシフは、ノモクと交わる。 ◾️第六章(第1話〜第10話)  ノモクはエシフから新しい名「イェロード」を与えられ、またエシフの本当の名が「シュード」であることを知らされる。  さらにイェロード(=ノモク)は、滞在先であるローエの館の秘密を目の当たりにすることになる。 ◾️第七章(第1話〜第12話)  現在、まとめ中。 ◾️第八章(第1話〜第10話)  現在、まとめ中。 ◾️第九章(第一話〜)  現在、執筆中。 【地雷について】  「第一章第4話」と「第四章第3話」に男女の絡みシーンが出てきます(後者には「小スカ」もあり)。過度な描写にならないよう心掛けていますが、地雷だという読者さまは読み飛ばしてください(※をつけています)。  「第二章第10話」に拷問シーンが出てきます。過度な描写にならないよう心掛けていますが、地雷だという読者さまは読み飛ばしてください(※をつけています)。

兄弟がイケメンな件について。

どらやき
BL
平凡な俺とは違い、周りからの視線を集めまくる兄弟達。 「関わりたくないな」なんて、俺が一方的に思っても"一緒に居る"という選択肢しかない。 イケメン兄弟達に俺は今日も翻弄されます。

【完結】ハードな甘とろ調教でイチャラブ洗脳されたいから悪役貴族にはなりたくないが勇者と戦おうと思う

R-13
BL
甘S令息×流され貴族が織りなす 結構ハードなラブコメディ&痛快逆転劇 2度目の人生、異世界転生。 そこは生前自分が読んでいた物語の世界。 しかし自分の配役は悪役令息で? それでもめげずに真面目に生きて35歳。 せっかく民に慕われる立派な伯爵になったのに。 気付けば自分が侯爵家三男を監禁して洗脳していると思われかねない状況に! このままじゃ物語通りになってしまう! 早くこいつを家に帰さないと! しかし彼は帰るどころか屋敷に居着いてしまって。 「シャルル様は僕に虐められることだけ考えてたら良いんだよ?」 帰るどころか毎晩毎晩誘惑してくる三男。 エロ耐性が無さ過ぎて断るどころかどハマりする伯爵。 逆に毎日甘々に調教されてどんどん大好き洗脳されていく。 このままじゃ真面目に生きているのに、悪役貴族として討伐される運命が待っているが、大好きな三男は渡せないから仕方なく勇者と戦おうと思う。 これはそんな流され系主人公が運命と戦う物語。 「アルフィ、ずっとここに居てくれ」 「うん!そんなこと言ってくれると凄く嬉しいけど、出来たら2人きりで言って欲しかったし酒の勢いで言われるのも癪だしそもそも急だし昨日までと言ってること真逆だしそもそもなんでちょっと泣きそうなのかわかんないし手握ってなくても逃げないしてかもう泣いてるし怖いんだけど大丈夫?」 媚薬、緊縛、露出、催眠、時間停止などなど。 徐々に怪しげな薬や、秘密な魔道具、エロいことに特化した魔法なども出てきます。基本的に激しく痛みを伴うプレイはなく、快楽系の甘やかし調教や、羞恥系のプレイがメインです。 全8章128話、11月27日に完結します。 なおエロ描写がある話には♡を付けています。 ※ややハードな内容のプレイもございます。誤って見てしまった方は、すぐに1〜2杯の牛乳または水、あるいは生卵を飲んで、かかりつけ医にご相談する前に落ち着いて下さい。 感想やご指摘、叱咤激励、有給休暇等貰えると嬉しいです!ノシ

処理中です...