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高年期[二学期・後編]

乙女ゲームについて。

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まさにイベント通りに進んだらしいね。・・・ってヒロイン本人はポカンとしてるけど?・・・ああ、陽南さんもリセットの影響は受けてないからね。でもこれから話す銀徹さんの話に衝撃を受けていた。






「入学初日に告白の嵐。動物には優しいし懐かれやすい。身分差気にせず親しく接してくれる。笑顔が眩しい等々・・・武勇伝が山程だ。薫風の聞いていた通りの可憐な乙女だな。」

「ブフッ!」

「なっ・・・なっ・・・」





凄まじいヒロインパワー!そりゃ二階堂くん達がメロメロになるわけだ(笑)思わず吹いちゃったよ。






「まだあるぞ?男性数人に絡まれてた女性を・・・」

「も、もういいですわ・・・それ、シナリオ通りの流れですわ。」

「そ、そうだね・・・すごいなゲーム補正。そこまでヒロインを再び舞台に立たせたいらしいね、この世界は。」

「私はもう諦めて傍観に徹しましたのよ!?今さらヒロインに立たせられても困りますわっ!」

「じゃあ僕みたく冷たくあしらえば?」

「私はそんな演技なんてできませんわ!」

「うむ・・・だったら、薫風と付き合えばいいんじゃないか?」

「「「「は?」」」」





・・・あ、銀徹さん以外ハモった。急になにを言い出したんだよ銀徹さん。






「・・・名案ではないですか五十嵐様。もう和彦様と薫風様の契約は破棄されましたので。問題ないかと。」

「な、何を言い出すんだ足利・・・私はまだ」

「構いませんよ。・・・陽南さん次第だね。」

「うえぇっ!?わ、私が決めるのですか?」

「落ち着くまで、護衛の代わりにどうだ?まぁ・・・この世界で令嬢は純潔が重視されてるから無理に夜を共にする必要はないだろう?」

「!そーですわね!乙女ゲームでは今みたいに爵位が無ければ男女比率も差はありませんでしたわ!・・・では薫風くん、おねが」

「駄目だ。」

「・・・」




陽南さんの言葉を遮ったのは風間くん。・・・う~ん、これじゃ話が進まないなぁ・・・





「・・・風間理事長」

「名前で読んでくれ薫風。」

「いいえ。もうそんな馴れ馴れし事は言えません。もう破棄されましたので僕に関する事に口出しはしないでいただきたい。」

「・・・」

「そもそも僕の悪評を広めたのは風間理事長ですよ?何故そんな事をしたんです?誹謗中傷は犯罪ですよ!どれだけ傷ついたか・・・」

「す、すまない・・・」

「公爵様がそんな簡単に謝るのも問題ですよ!だいたい・・・」







「ちょ、薫風くん・・・」

「構いませんよ花塚様。あー言って真っ向から注意をして頂ける方は薫風様ただ1人ですので。・・・少しは自分の腹黒さに自覚していただかないと。」

「クク・・・言うな足利。」

「えーそれは勿論。手の掛かる弟の様なものですので。もう私が注意しても聞く耳を持たないようで困ってた所です。・・・でも、そのりせっと?後の我が主は度が過ぎます。薫風様にみっちり怒られればいいんです。」

「おー怖。俺の執事は淑やかで良かったよ。お前みたいに頭が良すぎるのも困ったものだ。」

「恐れ入ります。」

「・・・まぁ、足利さんと言うのですね。私の執事になってもらいたい位逞しいですわね。」

「申し訳ございません。10年以上前に和彦様に生涯忠誠すると誓ってしまいましたので。」

「まぁまぁまぁ!では薫風くんを引き取ってはいかがですか?」

「は?」

「ちょっと陽南さん?脳内がお花畑になってない?どさくさに紛れて足利さんを困らせないでね?」

「あら?聞こえてましたの?」







まったくこの腐女子はっ!なに今度は僕と執事さんをくっつけようとしてるのさ!・・・まぁ、風間くんには言いたい事言ったし気が済んだな。あとは・・・




「風間理事長。僕の名誉を回復させてくださいね?」

「そ、そしたら私の元に戻ってきてくれるかい?」

「・・・和彦様、まだそんな甘い事を」

「構いませんよ。」

「「えっ?」」






え?何故風間くんと執事さんが過剰反応するわけ?銀徹さんと陽南さんは僕がそう言い出すのを知ってたかのように全く反応してないってゆーのに・・・





「か、薫風様・・・あの、それはどうゆう意味で?」

「・・・僕、前に言いましたよね?和彦さんが好きだって。」

「薫風っ!」

「ちょっ!?近付かないで!・・・か、和彦さんと恋人になるのは問題ないです。でも今の学校の雰囲気は僕にとって苦痛でしかありません。僕を支えてくれる親衛隊の人たちも肩身狭い思いをしてるかもしれません。ですので和彦さんが僕の汚名を払拭して頂けた時、改めて・・・お付き合い、したいと思ってます・・・」

「薫風っ!あー~~~なんて私は愚かな事をっ!」

「ぐはっ!!」





あーうん、僕の静止なんてあってないようなもんですよねぇ~。間の背の低い机の上に乗って僕との距離を縮めて抱きついてきましたよ・・・う、苦しい。衝撃で変な声でちゃったじゃん。






「・・・薫風様」

「まぁ、薫風は一度決めた事は曲げないからな。良かったな足利。風間家は安泰かな?」

「まぁまぁまぁ!薫風くんはやはり風間くんを選ぶのですねぇ~!ふふふっ。」





そこの傍観してる3人たちよ、この人を何とかして?






「ま、とりあえず薫風の名誉が取り戻せるまで花塚の警護として付き合ったらどうだ?今ならちゃんと護身術使えるだろ?なんなら俺が鈍った身体を鍛えてやろうか?」

「あ、ほんと?なんだか体が鈍い気がするんだよねぇ~・・・お願いしていい?」

「駄目ー!薫風に誰も触れさせたくないー!」

「はぁ・・・」






やっぱり話が進まない・・・やはり風間くんを抜きで話すべきだったか?





___________







「・・・とまぁ、ゲームについてはだいたい説明したかな。足利さん、ここまで質問はありませんか?」

「大丈夫です。」

「じゃあ次、『リセット』についてですね。・・・ところで風間理事長?いい加減、離れてくれませんか?」

「・・・」






さっきからずぅ~っと背中にしがみつかれている状態。いい加減鬱陶しい・・・そして僕の肩に頭を埋めないでほしい。





「・・・」

「・・・薫風、我慢しろ。話を進めよう。リセットについては大雑把に聞いたが今度は詳しく聞かせてくれ。足利にも聞いてもらった方が今後の為にも必要だろう。」

「そうですね・・・」






もう風間くんの事は背もたれとして気にしない事にしよう。






「リセット。これはどのゲームにもある機能です。人生同様ゲームにも始まりがあり終わりがあります。乙女ゲームにはいくつものルートが存在して攻略対象が沢山いるといるのはお話しましたよね。」

「それは聞いた。・・・11人、いるんだったな。」

「そうです。足利さんは気になるようなら後でお話します。・・・乙女ゲームの内容は入学式から始まり3年生の攻略対象者が卒業するまでがゲームの内容になります。好きなキャラを選び攻略していき卒業式の時に告白して終わります。・・・そしてハッピーエンドで終わった後は、また新しく入学式から始める事ができます。その時、ゲームを1から始める為には『リセット』が必要となるんです。」

「リセット・・・初期状態に戻す、という事か。」

「そうです。それで一番目に攻略した人とは違う人を選び、疑似恋愛をするのが乙女ゲームです。・・・足利さん、何か質問はありますか?」

「・・・申し訳ございません。あまりにも異次元のお話を聞かされてるようで・・・理解してるのかしてないのか、自分で判断しかねます・・・」

「まぁ、そうだろうな。足利、それは正常な判断だ。『ここは乙女ゲームの世界です』なんて言われて素直に『そうなんですか。』なんて言葉は返せないだろう?・・・ただ、薫風が今話した内容は予知の様な物だ。あまり深く考えるな。」

「・・・わ、かりました。」

「・・・それで、今回のリセットは僕に選択を迫られた。初めは否定した。リセットはしない、このままで良いと思ったんだ。でも、さらに選択を迫られて・・・」

「リセットを選んだのか。」

「・・・うん。リセットを選んだ次の日には攻略対象者は態度がかわっていて今までの出来事が無かった事になってしまったんだ。・・・僕は風間くんを選んだわけで、他の人の思いは受け入れられなくて、でも諦めてくれなくて心苦しくなってリセットを選んだんだけど・・・こんな事になるとは思わず・・・後悔してるよ。」

「・・・それであの時『それは僕のせいです』と言っていたのですね。」

「今まで説明を伸ばしてしまって申し訳ないです。まさか風間家の事情があんなにも影響するとは思いもよらず・・・」

「ん?・・・風間家の事情?・・・ああ、あれか。薫風、安心しろ。風間は理事長の座からは降りないぞ。」

「え・・・?」

「ああ薫風・・・足利から聞いたかもしれないが、そう易々この地位を親に渡すつもりはないよ?心配してくれて有難う。」





・・・そーなの?



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