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高年期[二学期・前編]

風間家にお邪魔します。そして自分で首を絞めました。

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風間家に到着。早速執事さんがお迎えにきてくれました。




「お待ちしておりました薫風様。夜分に申し訳ございません。さっそく和彦様の元へご案内致します。」

「こんばんは足利さん。・・・有難う銀徹さん。おやすみなさい。」

「ああ。おやすみ。また学校でな。」




銀徹さんと別れ執事さんに促されながら屋敷へと足を運ぶ。




「あの、和彦さんは・・・?」

「ええ、ええ、もうウザ・・・いえうっとうし・・・いえ、ずっと薫風様を待ち遠しにしておりました。もう夕方あたりからソワソワソワソワと・・・ええ。」

「・・・」




なんだろう?もう和彦さんに容赦なく悪口を・・・うん、聞き間違いだよね。そーゆう事にしとこう。


それにしても和彦さんが僕の事待ってたんだ。それは素直に嬉しい、かな?







それから居間の方へ案内された。あれ?・・・てっきり執務室かと思ってたんだけどな。


中に入ると紅茶を優雅に飲んでる和彦さんがソファーに深く座っていた。




「やぁ薫風。夕飯はもう食べたかい?」

「こんばんは和彦さん。はい、猫屋敷先輩の家にお世話になりました。」

「そうか。今日は何をしていたんだい?」

「ほぼ公園で日向ぼっこですね。主に先輩が。・・・ずっと寝てました。昼食はサンドイッチなど手軽に食べれる物を摂って、あとはまた昼寝してましたね。僕は本を読んだり公園を眺めてたりしてました。」

「そっか。ふふ・・・猫屋敷くんは夜行性みたいだね。珍しい性質だよね。」

「そうですよね。でも本人は不便にも不憫にも思ってないようですので何も言う事はないですよね。「治せ」と他人に言われても本人が治す気がなければやりようがありませんから。」

「確かにね。・・・ああ、少し焼けた?秋といえどずっと外にいると日焼けしてしまうよ。」

「え、本当ですか?・・・うーん、少しだけ焼けてますかね?でもこれくらいなら目立ちませんよ。ヒリヒリもしませんから。」

「そうか。・・・そろそろ寝るかい?お風呂はどうする?」

「あ・・・入ります。お借りして良い、ですか?」

「!・・・ああ、私もまだ入ってないんだ。薫風が嫌でなければ一緒に入ろう。」

「・・・はい。大丈夫です。」





あーあー・・・なんか不自然だったかな?挙動不審だったような・・・まぁ仕方ない。自分から誘った事ないんだか。和彦さんに察してもらうしかない。


その前に和彦さんが「もう寝る」って言ってきたのはある意味合図・・とも取れるからね。甘えたいという方面の、ね。



執事さんは・・・なんか肩を震わせてるけど?うん、見なかった事にしよう。



_______





「ふわぁ~気持ちがいいです~。」

「私もハマってしまってね。疲れた時とか足利に頼んでやってもらってるんだ。」

「そうなんですねぇ~。はぁ・・・良い匂いで凄く癒されます~。」

「そうだね。私は薫風がいるから尚癒されるよ。」




あーもーそんな甘い事を言わないでほしい・・・



前に体験した泡風呂に只今浸かり中。ぬるま湯になってるので長湯しても逆上せたりしないよう気配りされている。・・・さすがチート執事様。






あー・・・このまま恋人関係続けていくと・・・なんか離れがたくなりそうな予感がするんだよね。なんか流依兄さんが不安定の状態で、気になるのに僕は今こうして恋人と過ごしてるのが・・・なんか申し訳なくって・・・




「何を考えてるんだい?」

「あ・・・えっと、流依兄さんの事です。なんだか切羽詰まってる様子だったので・・・」

「そうか。・・・でもそれは本人が解決しなきゃならない事だからね。相談された時は親身になって聞くといいよ。でも構いすぎも良くないよ?依存してしまうから。」

「依存・・・ですか。」

「そう依存。何か悩んだ時、相手に頼れば全て解決してくれる。だから何かあったら相手を頼ろう。でもいざ相手が結婚して家を出た時、気力を失い結果、没落してしまうってのはよくある話だよ。・・・よくある話、妻が夫より先立たれた時、残された夫は生きる屍となりその家は没落したって話を聞くよ。」

「・・・」

「だからね薫風、流依くんがもし薫風を頼ってきた時は出来るだけ助けてやるといいよ。でも近すぎてしまうと依存させてしまうから、ほっとくってのも一つの手助けになるんだよ。」

「!・・・そうです、ね。・・・はい、その通りです。・・・すみません、しんみりした話をしてしまって。」

「いいよ薫風。薫風も私を頼って?相談ならいつだって乗るよ。他にも越名くんや花塚さんがいるよね。人に聞いてもらうのも気持ち的に余裕が持てるから相談するといいよ。」

「はい。・・・あの、あと一つ、話したい事が」

「恋人の期限の事かな?」

「!」

「薫風はどうしたい?もう期限は過ぎてるよ。解消したい?それともまだ恋人として私の側にいる?」

「・・・」




なんだか全てお見通しって感じの話し方だね風間くん。・・・でも、うん、前から考えてたんだよね。風間くんといると居心地が良すぎる・・・・んだよね。身体的にも精神的にも。




「・・・正直に今の気持ちを言います。」

「うん。」

「このまま恋人の関係を続けてると・・・不安になります。正直・・・怖いです。」

「・・・怖い?」

「はい。自分に、ですけど。今のこの状態は僕にとって良すぎる・・・・んです。居心地がよくて、いざって時に和彦さんが助けにきてくれて、そして僕をいつも優先してくれている。・・・それに慣れる事が不安でならないんです。」

「・・・」

「このまま続けていくと・・・なんか戻れない気がして。その・・・例えで言えば贅沢していたのが急に無くなって馴染みの事が出来なくなって不安になる・・・って感じですかね。」

「・・・」

「なんでしょう、今なら引き返せる。でもまだこのままでいたい。でもこのままだと引き返せなくなる不安があって・・・って聞いてますか?」

「・・・聞いてるよ薫風。でも・・・ちょっと、待って・・・」

「?」




後ろから抱き付く感じに寄り添っているので顔が見えない。でも腕から小刻みに震えてる感覚がするんだよね。・・・どーしたんだろう?





「薫風・・・そんな風に悩んでたの?」

「そんな風って・・・でも僕からしたら真剣な悩みなんですよ?僕は将来兄さんの役に立ちたいとは思ってるけど庭師の仕事にも興味あるし。あと教師も良いかなって最近クラスのみんなに勉強教えてて思うようになったんです。・・・それなのに和彦さんにこのまま甘えてても良いのかなって・・・」

「うん・・・うん、薫風の気持ちは良くわかったよ。・・・じゃあ俺は遠慮しなくていいんだな?」

「・・・は?」




な、何故か風間くんの鬼畜?腹黒スイッチが入ったんですけど・・・?え、なぜ?・・・なんだろーお風呂に浸かってるのに肌寒くなってきたんですけどぉー・・・





「つまり薫風は俺から離れがたいって事だな?」

「え!?い、いやそこまでは・・・」

「なんだ?このまま恋人を延長すると自分がダメ人間になりそうで怖い、不安だって思ってるんだろ?」

「え?・・・あ、えー・・・そう、なるんですかね?」

「薫風、先程言ってた事を思いだしな。一字一句取り零さずに。」

「・・・」




「居心地が良すぎる。」、「離れがたい」、「引き返せなくなる不安がある」、もろもろ・・・



あれ?これ聞き方によっては告ってない?



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