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高年期[二学期・前編]
お誘い。そして・・・甘い匂いは辛い
しおりを挟む針の筵になりつつも昼食を終え教室へと帰っていく。未だに好奇の目で見られるが・・・もう気にしても仕方ないから平常心で。
人の噂も75日。ほっとけほっとけ~。
・・・放課後。子鷹狩先輩に呼び出しをくらいました。
「薫風、次の休みに食事に来てくれないか?」
「食事、ですか?」
「ああ、あのビジネスホテルの中のレストランだ。・・・またあそこで歌ってほしいそうだ。」
「ああ、月一で歌うとか言ってましたものね。わかりました。・・・あ、でも」
「一緒に風間理事長も呼べばいい。あとお前の家族もな。・・・忙しいのか食事券渡したのに未だに来てないそうだな。」
「あ、はい。僕も誘ってるんですがなかなか・・・流依兄さんが手伝ってるのでたまに家族で夕食を共に取れる程度であまり顔を合わせてないんですよね。」
「まぁ、八乙女侯爵家は優秀で有名だからな。・・・まぁ次の休み、風間理事長と来てくれ。もちろん俺も一緒だからな。」
「・・・わかりました。」
「ああ、それと・・・」
「?」
・・・レストランの従業員が打ち合わせをしたいと申し出がきた。僕はイマイチ記憶にないんだが楽譜を書いてピアノの伴奏をしていた人に渡して弾かせたらしい。をい僕、何様だよ!?
・・・だが、その僕は提供?した楽譜に感動してさらに僕の歌と声を気に入ったらしく一緒に演奏したいとの事。ふぅん?まぁ断る理由がないね。いいよー。明日にでも行きましょーか!あ、一応風間くんに報告・・・必要だよね。言わなきゃお仕置きされそうだし・・・後が怖いから恋人でいるうちは隠し事しません。
・・・とりあえず、明日また会うと約束して別れる。・・・あーでも次のイベント、2年生への攻略の話し合いとかしなきゃならないのに・・・
ま、僕一人抜けても大丈夫だよね。陽南さん、いるし。
とりあえず帰りましょうか~。兄さんは先に帰ってるしねぇ。・・・あ、少しだけ花園行こうかな。
「あ、蛭間さん。こんにちは。」
「ん?やぁ薫風やんか。まだ帰らんのか?」
「少し寄っただけです。・・・あれ?庭師さんは?」
「あ~鬼龍院さんは・・・薔薇園の方におるわ。」
「?」
なんか気まずそうに目をそらしながら言ってきた。・・・ん?なんなんだろう。
「・・・ん?おや、こんにちは薫風くん。どうしたんだい、帰宅時間はとうに過ぎてるだろう?」
「あ、庭師さん。・・・ん?」
おや?鬼龍院さんの後ろにいるのは・・・?
あ、お辞儀されて去っていった。・・・あれ、もしかして?
「・・・あ~こんなオッサンに良く告白する勇気あるなぁ。」
「そりゃ鬼龍院さんが格好いいからですやん!」
「・・・それはお前の目が悪いんだ。それに俺にはもう相手がいるし、なぁ?」
「!・・・へへ!」
あ~御馳走様です。・・・でも、やっぱり告白されてたんだ。でも、うん、鬼龍院さんはイケメンダンディで渋い男ですよ。モテないはずないと思うけど・・・まさかこの学校の生徒が鬼龍院さんに告白するとは思わなかったよ。
鬼龍院さん、確か伯爵様なんだよね?三男でもう実家の方は跡継ぎがいて自由の身なんだとか。・・・それで庭師。うん、なんか羨ましい。僕も庭師やりたい・・・
てかあの2人、てか鬼龍院さんの方が蛭間さんに溺愛してる感じがする。え、何故そう思うかって?だって・・・
「不安になったか?」
「不安~?そんな気ぃならへんわ!鬼龍院さんは俺と付き合ってんやから。」
「じゃあ嫉妬は?」
「ん~それはまぁ少しぃ~嫌な気ぃはするわな。」
「ん、そうか。」
台詞は普通なんだけど鬼龍院さんの顔がもう~・・・普段とは全く違う優しい笑顔でして。庭師さんの優しい笑顔じゃなく愛おしい人を見てる優しい笑顔なんだよね。
うん、微笑ましいです。ちょっと腐をかじってる僕としては御馳走様です。うん、明日にでも陽南さんに話を提供してあげようと思う。
「あぁ薫風ぅ。鳥羽が薫風にって、置いてったもんがあるわ。」
「ん?愛翔さんから?」
急に声を掛けられ少し驚いたが愛翔さんの名前が出て来て普通に返事を返した。・・・なんだろう?
すると鬼龍院さんから1つの植木鉢を渡された。・・・あ!これは。
「ほう、一目でこれが何なのかわかったか。」
「はい!クレマチスですね。」
「そうだ。もう少ししたら咲くだろう。確か色は白だったと思うが、まぁ咲いてからのお楽しみだな。大切に育てろよ。これは鳥羽がこの花園から去年家に持ち帰って育ててた奴らしいからな。あいつは育てるの上手いな。」
「有難うございます。・・・枯らさないよう大切に育てます。」
「まぁ・・・クレマチスの花言葉は何個かあるが・・・薫風にはきっと「ゆっくりと心と身体を休ませてほしい」という意味合いもあって渡したんだろうな。・・・大切にしろ。」
「!・・・愛翔さん・・・」
あ~愛翔お兄!なんで直接渡してくれないんだよぉ~!・・・用事があって鬼龍院さんに渡して帰ってしまったらしい。・・・明日お礼を言わないとなぁ~。あ、お弁当作ろうかな。いや弁当だと愛翔お兄自分で用意しそうだから、やっぱお菓子にしようかな。それならいつでも食べれるしね。うん、そーしよ。
・・・次の日。
朝早く起きて、バレンタインではないけどチョコを作ったよ。暑くても溶けないよう焼きチョコを作りました。・・・あ~朝から甘い匂いが屋敷中に・・・申し訳ない。家族に甘いの苦手という人がいなくて良かったよ。苦手な人にとって朝からこの甘い匂いはキツイからね。あ、一応、家族と風間くんと銀徹さんの分も作りました。ただ、愛翔さんには抹茶も作りました。特別感を匂わせます。だって愛翔さんのお礼の為に作った物だからね。・・・これは愛翔さんにしか言わないけど。そしてこっそり作ったし。
さてさて学校へ行きましょうか。一応朝イチで花園へ行ってみよう。お兄いるかもしれないし。
・・・ほら、やっぱり的中。もしかしたら愛翔お兄も勘が働いて来てくれたのかもしれない。ちょうど鬼龍院さんと話してるし。
「おはようございます。鬼龍院さん、そして愛翔さん!」
「ああ、おはよう。やはり来たな。鳥羽の言うとおりだ。」
「おはよう薫風。・・・っと!だから無闇に飛び付くのやめなさい。・・・ん?なんか甘い匂いがするね。」
あ、やっぱり匂いが髪とかに移っちゃったかな。とりあえず愛翔お兄に突進しました。もちろん受け止めてくれましたよ。さすがお兄!
「朝早く起きてお礼の品を作ったんだ。はいこれ!小腹が空いたら食べて。」
「ん?ああ、チョコレートだね。あ、抹茶もあるの?有難う。・・・だから薫風から甘い匂いがするんだね。」
「うん・・・お風呂入るべきだったかな。ちょっと反省。」
「いいんじゃない?それに俺は自慢できるしね。・・・ん?でもまだ持ってるの?」
「あ・・・うん。流依兄さんと銀徹さんと風間理事長に。」
「・・・そっか。でも俺にだけ抹茶味のチョコ入れてくれてる辺り、俺にだけ特別に作ってくれたんだね。」
「勿論!だってあの植木鉢のお礼だからね!本当は弁当にしようかと思ったけどダブったら困ると思って、お菓子なら軽く摘まめると思ったからお菓子にしたんだ。」
「うん、その気持ちだけで嬉しいよ。どうもありがとう。クレマチス、大切に育ててね。心配事があったら聞いてね。」
「うん!」
「・・・仲が良いなお前たち。・・・まぁほら、朝礼始まるぞ。早く行け。」
鬼龍院さんに促され教室へと行く。愛翔お兄に僕の教室まで連れてってもらった。終始ニコニコ笑ってくれて癒されました。お兄大好き~。
・・・しかし、チョコの匂いは偉大でして、飯テロが発生し万純くんに睨まれました。
うっ・・・サーセン。皆さんのは作ってません。ゴメンナサイ。
小話。
「ねぇ、なんか八乙女くんから甘い匂いがするのは私だけ?」
「いや僕も気付いた。・・・あ~なんか甘い物が食べたくなった。・・・なんだろうあの匂いは。」
「チョコレートですわね。あのカカオ豆に砂糖を入れた・・・あの甘いお菓子ですわ!」
「ああ!って、あれ高級品じゃん!・・・八乙女くん、もしかして作った、とか?」
「あんな美味しいクッキーを作れるんだ。きっとそのチョコも・・・」
「・・・誰に作ったんでしょう。ああ、相手が羨ましいですわぁ!」
「でもこの熱い時期に持ってきて大丈夫か?あれ、確か熱に弱いんじゃ?この暑さなのに・・・」
「それは・・・きっと八乙女さんが工夫して・・・」
「そうそう。・・・それにしても・・・この匂いはたまらん!」
「あ~早く家に帰り紅茶と甘いお菓子を食べたいですわぁ~!」
「うぅ・・・なんという拷問。さすが八乙女さん・・・あぁ、越名くんの立ち位置が羨ましい・・・」
・・・と、薫風のクラスの生徒たちは呟いてました。飯テロはキツイですよねぇ~(笑)
ちなみにチョコは高級品として設定。クッキーのチョコ味はココアパウダーを少量入れ砂糖で誤魔化した物と思ってください。ココアパウダーも高級品です。だからバレンタインデーは・・・うん、凄まじいでしょうね(笑)乙女ゲーの定番イベントですが、皆手作りではなく金持ちならではのイベントですねー。
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