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Ⅱ 第二学年

8 情報世界での練習

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質量の無い世界の目で術式を観察すると面白い。
それぞれの基本術式とは質量の無い情報体を作り出す能力であり、そして発術とはこの情報体を操る能力の訓練で、なんとこの中に情報体にヒッグスを纏わせて物質化したり、物質からヒッグスを抜いて情報体化する訓練まで含まれていた。

水術は空中の水蒸気からヒッグスを抜いて情報体化し、この情報体を集めてヒッグスを付加して何も無いところに水を出現させる能力で、火術とは空気中の可燃物と熱量を情報体化し、これにヒッグスを付加して炎を出現させる能力だった。

すべて物質の無い世界の住人が持っていたであろう能力に、後天的にヒッグスの出し入れを付加させたもので、僕等陰陽師の能力を持つ者の祖先に鬼が居るとの心見先生の説に納得してしまう。

ただ、符術と祓術は人が工夫して作った物のようで、符術とは物質世界から非物質世界に影響を及ぼし得る記号の情報を収集した成果であり、祓術とは物質世界側から非物質世界の情報を破壊する方法を試行錯誤して組上げて来た成果だった。

だが、今この過去の人達の努力の結晶である呪符を情報世界に持ち込むには、PDF化するしか方法が無いのだが、質量の無い状態で使ってみると今の呪符の状態は重すぎて、使うにはスピードに問題が生じている。
効力を発揮するまでに、なんと体感時間で四時間くらい掛かるのだ。
現実世界では0.01秒くらいなので問題無い様に感じるが、異空間から直接鬼に侵入されたら役に立たないと思う、心見先生が言っていたとおり、今は同じ物質世界の感覚に縋っている土着の鬼相手だから通用していたに過ぎないのだ。

でも幸いな事に、物質の無い世界側から呪符や祓いの作用を眺めてみると、それぞれの影響を及ぼしている因子は全体の極一部であり、余分な要素を取り除いて行けば、より強力かつコンパクトになる可能性を秘めていた。
なので、僕は二年次も符術と祓術の講義を続けて受講し、これらを質量の無い世界でも通用するレベルに精練してみることにした。
でも祓術はともかく、符術の先生は、最前列に陣取った僕と迷子を見て物凄く悲しそうな顔をしていた。

「ハル、しようか」
「えー、さっきしたばかりじゃないですか」
「今日はまだ二回だよ、なっ、後一回、直ぐに終わらせるから」
「仕方無いですねー、後一回ですよ。長いのは嫌ですよ」
「大丈夫だよ、ちょっとだけだから」

ハルが手伝ってくれるので、比較的早く僕は素の情報世界に慣れることができている。
事務所で夕飯を食って酒を飲んで、寮の部屋に千鳥足で戻り、雷子や迷子や舞が乱入して来る前のほんの数分間、パソコンの前で僕はハルを誘ってみた。
嫌だと言いながらハルも嬉しそうな顔をしている、うん、ねっちょり、ぐっちょりとたっぷり可愛がってあげよう、僕はハルが感じる情報部位をだいぶ正確に探し当てる事が出来る様になって来た。

僕は毎日何百回でも練習したかったのに、ハルに身体が持たないからと怒られて一日三回、しかも一回に付き0.01秒の制限時間付にされてしまった。
もっとも0.01秒と言っても、素の情報世界の体感では四時間ぐらいなので、ハルとしては十分に妥協してくれたのだと思う。
雷子と迷子と舞にはまだ気付かれてはいないが、現実世界のハルは日々色気を増して来ており、僕に対する密着度も高まっている。

情報世界に入り、ハルの存在を探す、だいぶ慣れて来たのでもう瞬時に感覚を全体に広げることができる。
見付けた、僕の情報密度を高め、ハルの存在に重ねて絡み合う。
ハルの情報部位に僕の情報部位を重ね、意思を送って刺激する、うん、ハルの情報体はこの部位が弱い。

”あっ、あっ”

ハルの意識と快感の思念が、溶け合って共有している僕達の感覚に伝わってくる。
ハルも僕の情報部位を刺激して反撃して来た。

”うっ、あっ”
”あっ、あっ”

撲が感じる事によって、ハルにもそれが跳ね返って行く。
それならば、今日は新しい試みとして複数個所同時に僕の意識を侵入させる。

”あっ、いや、そこは違、あっ、あっ、あっ、あー”

意識が真っ白になるほどハルが昇り詰めた、もちろん意識を重ねていた僕も一緒だ。
うん、これは良い、今日は徹底的にこの部位を攻めよう。
気が付いたら夢中になり過ぎてハルが半分失神している、うん、意識が僕に飲み込まれそうだった。
なので少し休ませることにした。

”もー、何度も制限時間オーバーしてるって言ったのに。無視して”
”そーか、まだ半分も経ってないと思うぞ、だから続きを”
”駄目です、0.003秒もオーバーしてます。あっ、いや、止めて下さい”
”ハル、なっ、もう一回しようよ”
”いやです、私は疲れてます。早く現実世界に、あっ、いや、あっ、あっ、やめ、あっ、あっ、だめ”

無理矢理もうワントライに引き摺り込んだら、事後にこってりとハルに怒られて、三日間練習を拒絶されてしまった。
でもお蔭で僕の情報世界への認識力は物凄い勢いで上達している、意識を同化している所為か、現実世界でのハルがすっかり人間臭くなって来た。
それでなくても目立つ美少女なのに、色気まで漂い始めて、連れ歩くとほとんどの男性、そして多くの女性が振り返る様になった。
もっとも現実世界でハルに手を出す積もりはない、この情報世界での意識の同化や快感を知ると、現実世界での肉体を持った行為が、なんか単なる作業の様に思えて興味が薄れてしまうのだ。
雷子や迷子と一緒に風呂に入っても、時々僕の息子がピクリとも反応しない時がある、この歳でこれは不味いと思う。
男としての僕自身が少々心配になって来る。
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