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Ⅱ 王都にて

44 王城にて5

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翔・・・主人公、高1十五歳
彩音・・主人公の妹、中1十三歳

ファネル・・・元公爵の御婆ちゃん、翔の骨董仲間でこの国の実力者
ハーネス・・・・公爵、ファネルの息子
アムネリア・・・公爵夫人

セーラ(セフィラネリア)・・・正王妃、ファネルさんの娘
ウル(ウイリアム)・・・この国の第一王子
ナンノ・・・国軍の騎士団大隊長
キャル(キャロライン)・・・スノートの王族に近い貴族の娘、金髪の妖精の様な超絶美少女
アミ(アルミナス)・・・スノートの王族に近い貴族の娘、銀髪でキャルと同じく妖精の様な超絶美少女。
マーニャ・・・スノートの貴族の娘、武官の家系で普段から兵士達との交流が有り、口調が荒い。
ニコル・・・黒竜将軍

ーーーーー
(カケル)

何か悪い意味で目立ってたと思う、テンポと動きが明らかに周囲とは違うのだ。
ふざけてる訳じゃ無い、二人して一生懸命踊っているのだ、だが何かが違う、曲が終わった時には二人して安堵の溜息を吐いた。

マーシャを連れて自席に戻ったら、彩音が恐い顔して座っていた。

「お兄ちゃん、何で私とは踊りたがらない癖にほかの人とは何度も踊ってるのよ」
「ちんちくりんがうるせえな。成り行きだよ」
「誰がちんちくりんよ」
「おめーだよ、おっ、これ旨そうだな」

マーシャが彩音の目の前に有ったケーキに手を伸ばす。

”ピシャッ”

彩音に手を叩かれている。

「駄目、これは私の」
「良いじゃねーか少しくらい」
「駄目、絶対に駄目」
「仕方ねー、諦めるか」

マーシャが手を引っ込める。
彩音がマーシャを警戒していると、逆方向から手が伸びてきてケーキを取られてしまう。
キャルだ、美味そうにケーキを食っている。

「油断する方が悪い」

何を思ったか、彩音が俺の腕を抱きしめてキャルを睨んでいる。

「ふん、マーシャ久しいな、半年振りか。開拓農民は楽しいか」
「ほう、ご挨拶だな、お人形遊びよりは楽しいぜ」
「ふん、先程の踊りは芋掘りの真似事かと思ったぞ」
「都のお人形さん達と違ってダンスなんてお上品な真似してる暇は無いからな」
「その割には劣勢が続いてるって噂じゃないか、本気で攻め込まれないから助かってるだけだって」
「都でふんぞり返ってるお人形さんに何が解る、そっちこそクムで食い物泥棒働いたって噂じゃねーか」
うるさいわね、メイプル様にはそれなりの考えが有ったのよ」
「どーかねー、実戦経験の無い貴族のお坊ちゃまが多いからな、白竜はよ」
「なによ、脳味噌の足りない黒竜には言われたく無いわよ」
「なにを」

険悪な雰囲気になって来た、また食物の投げ合いは勘弁して欲しい。
そもそも俺には白だの黒だのの話がよく解らん。
彩音を見習って、俺もテーブルの上の食事を急いで片付ける事にした、よく考えたらこいつらに振り回されて飯を食ってる暇が無かった。

肉の甘酢和えに手を伸ばした瞬間だった、脇に偉そうな執事さんが来て頭を下げられた。

「失礼いたしますカケル様、王様がお呼びです」

キャルとマーシャが言い合いを止めて、目をぱちくりさせて俺を見ている。
遥か遠くの王様の坐っている一段高い場所のテーブルを見たらセーラさん、王妃が小さく手を振っていた。
王妃の脇には、ウルも座っている。

王様の坐っているフロアに足を掛けたら、周囲の視線がどっと集まって来た。
王様のテーブルに近づいて土下座でもしようかと考えていたら、執事さんがウルの脇の椅子を引いてくれたので、何となくそこに腰を下ろしてしまった。

「セーラが世話になった。公に出来る話ではないので報いる事は出来んが、礼を言おう」

背も高く胸板も厚い中年男性だ、ウルと同じく美男子だし知的な顔立ちだ、天は二物も三物も与えている、不公平だと思う、しかも奥さんは五人もいるそうだし。

「とんでもないです、単に舞踏会での食い物の投げ合いの流れでファネルさんに泊めて頂いたら見付けてしまっただけですから」
「相当派手な荒れ方をしたそうですよ、陛下。母も楽しかったと言っておりましたから。池に突き落とされる物が続出してずぶ濡れになった者が多かったそうです。それで外務事官が心配して今日の会場を変更したとか」
「成程、それで会場の変更が有ったのか。そう言えば、ハーネスがテリスの息子が池に放り込まれたと嘆いておったわい、ははははは」
「メリッサがカケルさんをダンスの相手に指名したのが原因と聞いております」
「ほう、カケルは常に物事の中心に居るようじゃの。うむ、良い機会じゃ、東部下マナ原の件、直接教えてくれ」

何度も説明してるので俺もだいぶ説明が上手くなって来た、要領良く概略を説明する。

「成程、宰相も評価する筈じゃ、我が国の武人では住民の保護も町の維持も配慮が行き届かない事柄じゃ。ましてや経済的な側面から考える者なぞ皆無じゃ。どうじゃろう、ニコルに助言して貰えないだろうか」
「それならば明日お伺いすることになっています」
「それは良かった、ニコルには国境の守備を任せておるんじゃが、経済的に行き詰まっておるとの噂での、勿論十分な領地は与えておるんじゃが上手く回っておらぬようなのじゃ」
「はい、お話を伺って最善を尽くします」
「うむ、頼む。この話はここで終いじゃ。相手国の宰相が来おった」

この国の王様が男性的な美男子ならば、相手国の宰相は中性的な美男子だった。
銀色の長い髪を背中で纏め、細身の身体は背後から見ると女性の様に見える。
黒い服に黒いズボン、銀色のティアラと胸の前に垂らした長いネックレスが良く似合っている。
うん、足も長いし恰好が良い、逆立ちしても勝てそうにない、周囲の女性の視線を一身に集めている。

「お久しぶりでございます、国王陛下」
「久しいの、ナルス」
「はい、ありがとうございます。陛下、こちらは指揮者殿では」
「うむ」
「カケルと申します、以後お見知りおきを」

握手を交わす、顔は笑ってるが目は笑っていない、俺を値踏みしている様だ。
女性の様に細くて柔らかい手だった。
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