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20 ヴェルディ村
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陽の力が強くなり、草原の草が伸び始めた。
歓楽街の女性達は全員が町民権票を手に入れ、最初の三人は三層に達している。
スラムも様変わりした。
スラムの住民が作った野菜を歓楽街の女性達が正規の値段で売りに行くので、少し豊かになり、森から木を切り出して家を建てる者も多くなった。
新鮮な生肉に加え、新鮮な野菜が手に入るようになり、町の商人達も喜んでいる。
畑も増えたので、スラムを囲む堀も四重にし、野菜を乗せた船が堀を行き交っている。
弓の訓練場は相変わらず賑わっている、スラムの人達が弓の練習を始めたからだ。
歓楽街の女性達が教師役で教えているが、順番待ちしている人も多く、訓練場が足りなくなって来ている。
これから神官達も練習に参加するようになるので、五重目の堀を作る積もりでいる。
その神官達の教師役となる彼女達、訓練は順調に進んでいる。
最初から光石の鏃の扱いを教えた事が正解だったようで、マリアより感覚の摺り合せが楽な様だ。
弓の扱いが上達すれば、直に合格点を出せるだろう。
マリアも頑張っている、今週中にも光石の矢の技量は、魔獣と討伐に使えるレベルに到達するだろう。
僕の経験値は九万を超え、マリアの経験値も八万を超えている。
マリアが光石の矢を覚えたら、二人で雪狼を狩って一気に経験値を伸ばし、レベルアップしようと思っている。
雪狼を倒した最初の日、雪狼の魔石を五個窓口へ差し出したら物凄く驚かれた。
確かに他の連中の狩りを見る限り、単独で雪狼を五匹狩るのは異常だ。
だから、それ以降は自重していた。
数十人で雪狼を狩るのは効率が悪い、数人で山狼や森狼を狩った方が効率的に経験値も収入も得られる。
それでも彼らが雪狼に固執するのは、次の階層を目指しているからだ。
五層に達し魔獣を倒すと、迷宮管理事務所から、つまり国から迷宮探索者票が交付され、迷宮探索のプロとして認められる。
魔器の購入の際に国から五割の補助金が支払われ、魔石の買い取りも二割増しになる。
つまり、名誉と富が手に入るのだ。
魔器の五割補助は相当な金額に昇ると思うのだが、五層以上の迷宮から得られる魔石は軍事目的で使われ、魔石の量が軍事力そのものに直結するので、力を入れているらしい。
ただそのハードルは高い。
五層に入る扉を、十頭からなる雪狼の群れが護っているからだ。
その十頭を全て倒さないと扉は開かない。
群れで行動する上に、たとえ一頭倒しても二日後には復活してしまう。
通常五百人から千人で力を合わせて倒す。
ただ、地方の町では人数が集まらないので五百人が限界だ。
参加資格は単独の雪狼をパーティーで二日以内に倒せること。
これ以下だと邪魔になるだけらしい。
そのために皆、効率が悪くとも、雪狼討伐に精を出している。
ーーーーー
宿に帰ると、ヴェルディ村の爺さんから手紙が来ていた。
槍での土弾の取得に手間取っているらしい。
一度様子を見に来て欲しいと書いてある。
爺さんには恩が有るので断る訳には行かない。
翌日、教会へ事情を説明してからヴェルディ村へと向かった。
使うはヒューイ鳥、大型の飛べない鳥で飼い主に目的地を言われれば、単独で往復する賢い鳥だ。
背中の籠に乗っていれば、寝てても目的地に届けてくれるし、強い鳥なので野犬も襲って来ない。
料金は銀貨五枚、村人には利用できない料金だが、今の僕のお財布事情なら対したことはない。
転た寝していたら昼前にヴェルディ村に着いた、馬車の三倍以上早い。
籠を降りると、ヒューイ鳥はとっとと戻って行った。
何だか村が賑わっている。
狩人の集落へ向かい爺さんの小屋へ向かうと、憔悴した顔で爺さんが座っていた。
「だれだ」
「俺だよ、クルトだよ」
「おー、でかくなったな。判らなかったぞ」
僕が成長しているので、爺さんや村人達よりも頭一つ分背が伸びていた。
「すまんな。周囲の村に吹聴した奴がいて、周囲の村の連中が集まって来た。それなのに、俺達は全然上達せん。
詐欺だの騙されただの言い出す連中も居て暴動寸前だ。俺はもうどうしたら良いかわからん。それでお前に手紙を出した」
「それじゃ稽古の様子を見せてよ」
「ああ」
狩人達が汗水垂らして杭を槍で突き刺していた。
魔力が少ないための土弾の見習熟と思っていたが違った、そして僕の教導の技能がこれは致命的だと教えてくれた。
「爺さん、これじゃ駄目だ。幾ら練習しても上達しないよ」
「何が悪い」
「慣れで槍を使ってたから、基本の形が出来ていないよ。ほら、槍の軌跡がバラバラだろ。槍の軌跡と土弾の軌跡を一致させる所から始めないと上達しないんだ」
ここで元漁師達に銛を教えた事が役に立った。
「最初に構える。この構えが一番大事で、常に同じ構えが必要になる。同じ構えなら土弾の出所がはっきり判るんだよ。そして力を貯めて突く。これも同じ軌跡なるまで何回も練習する必要があるよ。そうだね、俺が杭に槍と同じ位の穴を開けるから、その穴を百回連続で突き通せたら合格だね」
稽古を止めさせ、構えの練習から始めた。
皆行き詰まっていたようで、僕の説明を素直に聞いてくれた。
文句を言いに来た連中には、裏山に貫弾を放って見せた。
大量の木が吹き飛ばされる光景に、練習中の狩人達も含めて絶句した。
「これが、土属性のレベル4で得られる貫弾だ。土属性でもこんな魔法を使えるようになる。ただし、文句を言って努力しない連中は土弾の取得すら無理だろう。お前らも努力してみろ、歓楽街の女達は皆取得出来たぞ。彼女達に比べれば時間は有り余ってるだろが。努力しろよ、もっと一生懸命」
歓楽街の女性達は全員が町民権票を手に入れ、最初の三人は三層に達している。
スラムも様変わりした。
スラムの住民が作った野菜を歓楽街の女性達が正規の値段で売りに行くので、少し豊かになり、森から木を切り出して家を建てる者も多くなった。
新鮮な生肉に加え、新鮮な野菜が手に入るようになり、町の商人達も喜んでいる。
畑も増えたので、スラムを囲む堀も四重にし、野菜を乗せた船が堀を行き交っている。
弓の訓練場は相変わらず賑わっている、スラムの人達が弓の練習を始めたからだ。
歓楽街の女性達が教師役で教えているが、順番待ちしている人も多く、訓練場が足りなくなって来ている。
これから神官達も練習に参加するようになるので、五重目の堀を作る積もりでいる。
その神官達の教師役となる彼女達、訓練は順調に進んでいる。
最初から光石の鏃の扱いを教えた事が正解だったようで、マリアより感覚の摺り合せが楽な様だ。
弓の扱いが上達すれば、直に合格点を出せるだろう。
マリアも頑張っている、今週中にも光石の矢の技量は、魔獣と討伐に使えるレベルに到達するだろう。
僕の経験値は九万を超え、マリアの経験値も八万を超えている。
マリアが光石の矢を覚えたら、二人で雪狼を狩って一気に経験値を伸ばし、レベルアップしようと思っている。
雪狼を倒した最初の日、雪狼の魔石を五個窓口へ差し出したら物凄く驚かれた。
確かに他の連中の狩りを見る限り、単独で雪狼を五匹狩るのは異常だ。
だから、それ以降は自重していた。
数十人で雪狼を狩るのは効率が悪い、数人で山狼や森狼を狩った方が効率的に経験値も収入も得られる。
それでも彼らが雪狼に固執するのは、次の階層を目指しているからだ。
五層に達し魔獣を倒すと、迷宮管理事務所から、つまり国から迷宮探索者票が交付され、迷宮探索のプロとして認められる。
魔器の購入の際に国から五割の補助金が支払われ、魔石の買い取りも二割増しになる。
つまり、名誉と富が手に入るのだ。
魔器の五割補助は相当な金額に昇ると思うのだが、五層以上の迷宮から得られる魔石は軍事目的で使われ、魔石の量が軍事力そのものに直結するので、力を入れているらしい。
ただそのハードルは高い。
五層に入る扉を、十頭からなる雪狼の群れが護っているからだ。
その十頭を全て倒さないと扉は開かない。
群れで行動する上に、たとえ一頭倒しても二日後には復活してしまう。
通常五百人から千人で力を合わせて倒す。
ただ、地方の町では人数が集まらないので五百人が限界だ。
参加資格は単独の雪狼をパーティーで二日以内に倒せること。
これ以下だと邪魔になるだけらしい。
そのために皆、効率が悪くとも、雪狼討伐に精を出している。
ーーーーー
宿に帰ると、ヴェルディ村の爺さんから手紙が来ていた。
槍での土弾の取得に手間取っているらしい。
一度様子を見に来て欲しいと書いてある。
爺さんには恩が有るので断る訳には行かない。
翌日、教会へ事情を説明してからヴェルディ村へと向かった。
使うはヒューイ鳥、大型の飛べない鳥で飼い主に目的地を言われれば、単独で往復する賢い鳥だ。
背中の籠に乗っていれば、寝てても目的地に届けてくれるし、強い鳥なので野犬も襲って来ない。
料金は銀貨五枚、村人には利用できない料金だが、今の僕のお財布事情なら対したことはない。
転た寝していたら昼前にヴェルディ村に着いた、馬車の三倍以上早い。
籠を降りると、ヒューイ鳥はとっとと戻って行った。
何だか村が賑わっている。
狩人の集落へ向かい爺さんの小屋へ向かうと、憔悴した顔で爺さんが座っていた。
「だれだ」
「俺だよ、クルトだよ」
「おー、でかくなったな。判らなかったぞ」
僕が成長しているので、爺さんや村人達よりも頭一つ分背が伸びていた。
「すまんな。周囲の村に吹聴した奴がいて、周囲の村の連中が集まって来た。それなのに、俺達は全然上達せん。
詐欺だの騙されただの言い出す連中も居て暴動寸前だ。俺はもうどうしたら良いかわからん。それでお前に手紙を出した」
「それじゃ稽古の様子を見せてよ」
「ああ」
狩人達が汗水垂らして杭を槍で突き刺していた。
魔力が少ないための土弾の見習熟と思っていたが違った、そして僕の教導の技能がこれは致命的だと教えてくれた。
「爺さん、これじゃ駄目だ。幾ら練習しても上達しないよ」
「何が悪い」
「慣れで槍を使ってたから、基本の形が出来ていないよ。ほら、槍の軌跡がバラバラだろ。槍の軌跡と土弾の軌跡を一致させる所から始めないと上達しないんだ」
ここで元漁師達に銛を教えた事が役に立った。
「最初に構える。この構えが一番大事で、常に同じ構えが必要になる。同じ構えなら土弾の出所がはっきり判るんだよ。そして力を貯めて突く。これも同じ軌跡なるまで何回も練習する必要があるよ。そうだね、俺が杭に槍と同じ位の穴を開けるから、その穴を百回連続で突き通せたら合格だね」
稽古を止めさせ、構えの練習から始めた。
皆行き詰まっていたようで、僕の説明を素直に聞いてくれた。
文句を言いに来た連中には、裏山に貫弾を放って見せた。
大量の木が吹き飛ばされる光景に、練習中の狩人達も含めて絶句した。
「これが、土属性のレベル4で得られる貫弾だ。土属性でもこんな魔法を使えるようになる。ただし、文句を言って努力しない連中は土弾の取得すら無理だろう。お前らも努力してみろ、歓楽街の女達は皆取得出来たぞ。彼女達に比べれば時間は有り余ってるだろが。努力しろよ、もっと一生懸命」
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