18 / 22
第一章
17話 「少し考えさせてもらうよ」
しおりを挟む
クロカタゾウムシの拳がヒガンバナの顔面を捉える刹那、
「甘いのよ」
ぽつりと呟くと、迫り来る拳を冷静に観察し、首を軽く右に振ることで、いとも簡単に躱してしまう。
さらに、躱した腕を掴んで上に引っ張ることで位置を反転させ、それまで地面に寝そべっていたクロカタゾウムシの身体が宙に浮いた。
反対に地面に横たわる形になったヒガンバナは、2本の足でクロカタゾウムシの顎を蹴り上げる。
「ヴッッ!」
顎を蹴り上げられた衝撃で、掴んでいた手を離してしまい、そのまま後ろに倒れ込みそうになったクロカタゾウムシだったが、空中で身体を回転させ、何とか足から着地することが出来た。
「ヒュ~‼︎とんでもなく強えな嬢ちゃん!危うく顎が無くなるところだったぜ!」
蹴られた自身の顎をさすりながら語るクロカタゾウムシの口調には、全く焦りの色は見えず、表情も依然笑っている。
「しかし気になるな・・・。そんだけ闘えるなら、何でお仲間がやられてる時に助けてやんなかったんだ?・・・あ~!実は仲間とかじゃなく、ただ一緒にいるだけの連中でホントは嫌いだったとかか⁉︎それとも奴らがやられてる姿を見るのが好きなだけか⁉︎どちらにせよ、ロクな性格じゃない事だけは確かだな」
フッと鼻で笑いながら、ヒガンバナを挑発するように大袈裟な身振りで話す。
その発言に一瞬、顔をしかめクロカタゾウムシを睨みつけるが、すぐに目を閉じ、息を深く吐くことで感情的にならないよう抑えている。
「私のこの力は、私に敵意を向けた者に対してのみ使える力。誰かと協力して闘おうとしても上手く扱えない!だから皆んなが闘ってる間、私は見てることしか出来なかった‼︎」
最初は冷静さを取り戻したかと思えたが、言葉が進むにつれ己の不甲斐なさや、あの時助けられなかった後悔が押し寄せてきて声を荒げてしまう。
「でも・・・・・・此処にくれば何の問題もないの。この華園には私とアナタしか居ない。だからアナタは私を狙うしかなくなる。さぁ、早く終わらせましょう」
左手を伸ばし手のひらを上に向け手招きをする。これまで挑発され続けてきたヒガンバナが、今度は逆にクロカタゾウムシを挑発する。
「流石にオレもバカじゃねぇ。散々やられっぱなしの状況で、さらに無策で突っ込むほど頭イカれてねえよ。オレと嬢ちゃんしか、ここに居ないならむしろ好都合だ。少し考えさせてもらうよ」
「好きにしなさい。ただ、考えれば考えるほどアナタの思考は紅に染まっていくわ」
ヒガンバナがこれまでにないほど不気味な笑みを見せる。
その笑みに釣られるように、この華園の主である彼岸花は、風がないにも関わらず、まるで誰かを誘うように左右に揺れていた。
「甘いのよ」
ぽつりと呟くと、迫り来る拳を冷静に観察し、首を軽く右に振ることで、いとも簡単に躱してしまう。
さらに、躱した腕を掴んで上に引っ張ることで位置を反転させ、それまで地面に寝そべっていたクロカタゾウムシの身体が宙に浮いた。
反対に地面に横たわる形になったヒガンバナは、2本の足でクロカタゾウムシの顎を蹴り上げる。
「ヴッッ!」
顎を蹴り上げられた衝撃で、掴んでいた手を離してしまい、そのまま後ろに倒れ込みそうになったクロカタゾウムシだったが、空中で身体を回転させ、何とか足から着地することが出来た。
「ヒュ~‼︎とんでもなく強えな嬢ちゃん!危うく顎が無くなるところだったぜ!」
蹴られた自身の顎をさすりながら語るクロカタゾウムシの口調には、全く焦りの色は見えず、表情も依然笑っている。
「しかし気になるな・・・。そんだけ闘えるなら、何でお仲間がやられてる時に助けてやんなかったんだ?・・・あ~!実は仲間とかじゃなく、ただ一緒にいるだけの連中でホントは嫌いだったとかか⁉︎それとも奴らがやられてる姿を見るのが好きなだけか⁉︎どちらにせよ、ロクな性格じゃない事だけは確かだな」
フッと鼻で笑いながら、ヒガンバナを挑発するように大袈裟な身振りで話す。
その発言に一瞬、顔をしかめクロカタゾウムシを睨みつけるが、すぐに目を閉じ、息を深く吐くことで感情的にならないよう抑えている。
「私のこの力は、私に敵意を向けた者に対してのみ使える力。誰かと協力して闘おうとしても上手く扱えない!だから皆んなが闘ってる間、私は見てることしか出来なかった‼︎」
最初は冷静さを取り戻したかと思えたが、言葉が進むにつれ己の不甲斐なさや、あの時助けられなかった後悔が押し寄せてきて声を荒げてしまう。
「でも・・・・・・此処にくれば何の問題もないの。この華園には私とアナタしか居ない。だからアナタは私を狙うしかなくなる。さぁ、早く終わらせましょう」
左手を伸ばし手のひらを上に向け手招きをする。これまで挑発され続けてきたヒガンバナが、今度は逆にクロカタゾウムシを挑発する。
「流石にオレもバカじゃねぇ。散々やられっぱなしの状況で、さらに無策で突っ込むほど頭イカれてねえよ。オレと嬢ちゃんしか、ここに居ないならむしろ好都合だ。少し考えさせてもらうよ」
「好きにしなさい。ただ、考えれば考えるほどアナタの思考は紅に染まっていくわ」
ヒガンバナがこれまでにないほど不気味な笑みを見せる。
その笑みに釣られるように、この華園の主である彼岸花は、風がないにも関わらず、まるで誰かを誘うように左右に揺れていた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
伯爵家の次男に転生しましたが、10歳で当主になってしまいました
竹桜
ファンタジー
自動運転の試験車両に轢かれて、死んでしまった主人公は異世界のランガン伯爵家の次男に転生した。
転生後の生活は順調そのものだった。
だが、プライドだけ高い兄が愚かな行為をしてしまった。
その結果、主人公の両親は当主の座を追われ、主人公が10歳で当主になってしまった。
これは10歳で当主になってしまった者の物語だ。
序盤でボコられるクズ悪役貴族に転生した俺、死にたくなくて強くなったら主人公にキレられました。え? お前も転生者だったの? そんなの知らんし〜
水間ノボル🐳
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑
★2024/2/25〜3/3 男性向けホットランキング1位!
★2024/2/25 ファンタジージャンル1位!(24hポイント)
「主人公が俺を殺そうとしてくるがもう遅い。なぜか最強キャラにされていた~」
『醜い豚』
『最低のゴミクズ』
『無能の恥晒し』
18禁ゲーム「ドミナント・タクティクス」のクズ悪役貴族、アルフォンス・フォン・ヴァリエに転生した俺。
優れた魔術師の血統でありながら、アルフォンスは豚のようにデブっており、性格は傲慢かつ怠惰。しかも女の子を痛ぶるのが性癖のゴミクズ。
魔術の鍛錬はまったくしてないから、戦闘でもクソ雑魚であった。
ゲーム序盤で主人公にボコられて、悪事を暴かれて断罪される、ざまぁ対象であった。
プレイヤーをスカッとさせるためだけの存在。
そんな破滅の運命を回避するため、俺はレベルを上げまくって強くなる。
ついでに痩せて、女の子にも優しくなったら……なぜか主人公がキレ始めて。
「主人公は俺なのに……」
「うん。キミが主人公だ」
「お前のせいで原作が壊れた。絶対に許さない。お前を殺す」
「理不尽すぎません?」
原作原理主義の主人公が、俺を殺そうとしてきたのだが。
※ カクヨム様にて、異世界ファンタジージャンル表紙入り。5000スター、10000フォロワーを達成!
「こんにちは」は夜だと思う
あっちゅまん
ホラー
主人公のレイは、突然の魔界の現出に巻き込まれ、様々な怪物たちと死闘を繰り広げることとなる。友人のフーリンと一緒にさまよう彼らの運命とは・・・!? 全世界に衝撃を与えたハロウィン・ナイトの惨劇『10・31事件』の全貌が明らかになる!!
動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョンを探索する 配信中にレッドドラゴンを手懐けたら大バズりしました!
海夏世もみじ
ファンタジー
旧題:動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョン配信中にレッドドラゴン手懐けたら大バズりしました
動物に好かれまくる体質を持つ主人公、藍堂咲太《あいどう・さくた》は、友人にダンジョンカメラというものをもらった。
そのカメラで暇つぶしにダンジョン配信をしようということでダンジョンに向かったのだが、イレギュラーのレッドドラゴンが現れてしまう。
しかし主人公に攻撃は一切せず、喉を鳴らして好意的な様子。その様子が全て配信されており、拡散され、大バズりしてしまった!
戦闘力ミジンコ主人公が魔物や幻獣を手懐けながらダンジョンを進む配信のスタート!
前世の祖母に強い憧れを持ったまま生まれ変わったら、家族と婚約者に嫌われましたが、思いがけない面々から物凄く好かれているようです
珠宮さくら
ファンタジー
前世の祖母にように花に囲まれた生活を送りたかったが、その時は母にお金にもならないことはするなと言われながら成長したことで、母の言う通りにお金になる仕事に就くために大学で勉強していたが、彼女の側には常に花があった。
老後は、祖母のように暮らせたらと思っていたが、そんな日常が一変する。別の世界に子爵家の長女フィオレンティーナ・アルタヴィッラとして生まれ変わっても、前世の祖母のようになりたいという強い憧れがあったせいか、前世のことを忘れることなく転生した。前世をよく覚えている分、新しい人生を悔いなく過ごそうとする思いが、フィオレンティーナには強かった。
そのせいで、貴族らしくないことばかりをして、家族や婚約者に物凄く嫌われてしまうが、思わぬ方面には物凄く好かれていたようだ。
【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです
yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~
旧タイトルに、もどしました。
日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。
まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。
劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。
日々の衣食住にも困る。
幸せ?生まれてこのかた一度もない。
ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・
目覚めると、真っ白な世界。
目の前には神々しい人。
地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・
短編→長編に変更しました。
R4.6.20 完結しました。
長らくお読みいただき、ありがとうございました。
クラスまるごと異世界転移
八神
ファンタジー
二年生に進級してもうすぐ5月になろうとしていたある日。
ソレは突然訪れた。
『君たちに力を授けよう。その力で世界を救うのだ』
そんな自分勝手な事を言うと自称『神』は俺を含めたクラス全員を異世界へと放り込んだ。
…そして俺たちが神に与えられた力とやらは『固有スキル』なるものだった。
どうやらその能力については本人以外には分からないようになっているらしい。
…大した情報を与えられてもいないのに世界を救えと言われても…
そんな突然異世界へと送られた高校生達の物語。
俺、貞操逆転世界へイケメン転生
やまいし
ファンタジー
俺はモテなかった…。
勉強や運動は人並み以上に出来るのに…。じゃあ何故かって?――――顔が悪かったからだ。
――そんなのどうしようも無いだろう。そう思ってた。
――しかし俺は、男女比1:30の貞操が逆転した世界にイケメンとなって転生した。
これは、そんな俺が今度こそモテるために頑張る。そんな話。
########
この作品は「小説家になろう様 カクヨム様」にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる