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第四章 魔女の国

062-4

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 それは本当に一瞬のことで、息が止まった。

 キルヒシュタフ様の手がパフィの身体から飛び出していた。
 二人の身体が、そのまま下に落ちる。

「パフィ!!」

 飛び降りようとした僕を、クリフさんが止める。
 クリフさんから逃れようと必死にもがく。

「離してください!」
「いいから、捕まってろ!」
 
 強く抱きしめられる。
 クリフさんは僕を抱えたまま城壁から飛んだ。

「ガレジアンテ!!」

 沢山の叫び声の中に、ノエルさんの叫ぶ声が聞こえた。

 雪の中に落ちたけど、僕もクリフさんも無事だった。さっきノエルさんが叫んだのは、飛ぶとか、きっと僕たちを助けるための呪文だと思う。

 クリフさんは僕を抱えたまま、積もる雪の中を歩いて、パフィの元に僕を連れて行ってくれた。
 下ろしてもらって、パフィに近寄る。

 パフィの胸をキルヒシュタフ様の手が突き刺していた。キルヒシュタフ様の胸にもパフィの手が刺さってて、二人とも口から血をこぼして、目を閉じていた。

「パフィ!!」

 キルヒシュタフ様の手をパフィの身体から抜こうとしたら、クリフさんに止められた。

「…………おまえの声は……二日酔いの頭に……響く……」

 うっすらとパフィの目が開く。
 パフィはキルヒシュタフ様の手を自分の身体から引き抜いた。途端にパフィの服が真っ赤に染まった。血が出てきてるんだ。だからクリフさんは僕を止めたんだ。
 ノエルさんとトキアさんがやって来て、パフィに魔法をかける。

「無駄だ……それよりも……核を壊せ」

 トキア様は頷いて、持っていた杖で核を割った。
 呆気ないぐらい簡単に玉は真っ二つに割れた。中から光が溢れて、玉はもう、光らない。
 さっきあふれた光が、もしかして魂なんだろうか。

「……それで、いい」

 パフィが息を吐く。

「これで……好きなだけ一緒に……いられるだろうよ……」

 その言葉に、パフィが憎くてキルヒシュタフ様を攻撃したのでも、核を壊したのでもないと分かる。

「人は……人として生き……死ぬのが幸せだ。魔女もな……」

 パフィの手を掴む。
 涙があふれてきて、パフィの顔がよく見えない。

「パフィ! 死なないで!」
「……あしゅ、りー……」

 かすれた、力のない声。
 パフィの手が伸びてきて、僕の頰に触れる。

「幸せに、な……れ」

 パフィの手が頰から離れるのと、目が閉じられるのは同じだった。

「パフィ!! パフィ!!」

 揺らしても、どれだけ大きな声をかけても、パフィの目は開かなかった。

「パフィーーッ!!」
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