233 / 271
第四章 魔女の国
057-2
しおりを挟む
いつもなら司書さんは混む時間を避けて食堂に来る。でも今日は昼時にやって来た。混雑は苦手だって言ってたのに。
「やぁやぁ、今日も賑わってますねぇ」
「食べに来てくれたんですね」
司書さんの分を取っておこうと思ってたんだけど、その必要はないみたい。温かいうちに食べたほうが美味しいし、早めに来てくれてよかった。
司書さんのいる図書室は、本が沢山あるから食べるのも飲むのも禁止されてる。持っていくこともできないし、来てもらえなかったらどうしようかと思ってた。
「アシュリーくんがエビ料理を作ってくれると聞いてね、我慢できずに早めにきてしまったよ」
「なになに、今日のメニューはダグ先生がお願いしたものなの?」
司書さんの後ろに並んでいたリンさんが身を乗り出す。
ダグ先生というのは司書さんのことで、物知りでなんでも知ってるから先生と呼ばれてる。
いつもにこにこしていて、言葉も話す内容もとても優しい。僕にはいなかったけど、おじいさんが生きていたらこんな感じかな、こんな人だったらいいなって思う。
「図々しくも食べたい料理を言ったら、アシュリーくんが作ってくれてねぇ」
「えぇーっ! 羨ましい! 私も作ってもらいたい料理あるー!」
そこから並んでる人たちがなんだなんだと騒ぎだして、アレが食べたいコレが食べたいと言い出してちょっとした騒ぎに。
そのせいで列が進まなくなっちゃった。
いつの間にか厨房から出て行ったラズロさんが、手を叩いて大きな音をさせると、皆がラズロさんを見た。
「分かった分かった! どうやるかは考えるから、とりあえず今日はアシュリー渾身のエビ料理を楽しんでってくれ! 熱いうちが美味いんだ!」
ラズロさんの言葉に納得したみたいで、料理ののった皿を持って着席していく。
食べている人たちの表情を観察する。思っていたよりも喜んでくれてるみたいで安心した。
厨房に戻ってきたラズロさんはにやりと笑う。
「これで日々のメニュー決めが楽になるに違いない。ついでにオレは美味いものも食える。一石二鳥だな。
問題は、どうやってその情報を集めるか、については作戦会議だ、アシュリー」
毎日のメニューを考えるのは楽しいけど、たまに困る時があるんだよね。だからラズロさんの言うことも分かる。
「あ、そうだ。片付け終わったら仕入れにギルド行くから、その時に朝話してた件、相談してみるわ」
「取り入れてもらえたらいいですね。宵鍋や出店のメニューも増えるかもしれないです」
またエビ料理を作って食べたいけど、あれだけの量を剥くのは大変だったから、剥いてあるエビ、売って欲しい。
「美味いものが増えるのは大歓迎だな」
エビの串焼きとかも美味しそう。
そういえばあの殻は焼いても硬くて食べられないのかなぁ? パリパリっていうか、カリカリになって食べやすくなったりしないのかなぁ。
油で揚げてみるとか? 図書室の本にあったりするかな?
今度行った時に探してみよう。
「やぁやぁ、今日も賑わってますねぇ」
「食べに来てくれたんですね」
司書さんの分を取っておこうと思ってたんだけど、その必要はないみたい。温かいうちに食べたほうが美味しいし、早めに来てくれてよかった。
司書さんのいる図書室は、本が沢山あるから食べるのも飲むのも禁止されてる。持っていくこともできないし、来てもらえなかったらどうしようかと思ってた。
「アシュリーくんがエビ料理を作ってくれると聞いてね、我慢できずに早めにきてしまったよ」
「なになに、今日のメニューはダグ先生がお願いしたものなの?」
司書さんの後ろに並んでいたリンさんが身を乗り出す。
ダグ先生というのは司書さんのことで、物知りでなんでも知ってるから先生と呼ばれてる。
いつもにこにこしていて、言葉も話す内容もとても優しい。僕にはいなかったけど、おじいさんが生きていたらこんな感じかな、こんな人だったらいいなって思う。
「図々しくも食べたい料理を言ったら、アシュリーくんが作ってくれてねぇ」
「えぇーっ! 羨ましい! 私も作ってもらいたい料理あるー!」
そこから並んでる人たちがなんだなんだと騒ぎだして、アレが食べたいコレが食べたいと言い出してちょっとした騒ぎに。
そのせいで列が進まなくなっちゃった。
いつの間にか厨房から出て行ったラズロさんが、手を叩いて大きな音をさせると、皆がラズロさんを見た。
「分かった分かった! どうやるかは考えるから、とりあえず今日はアシュリー渾身のエビ料理を楽しんでってくれ! 熱いうちが美味いんだ!」
ラズロさんの言葉に納得したみたいで、料理ののった皿を持って着席していく。
食べている人たちの表情を観察する。思っていたよりも喜んでくれてるみたいで安心した。
厨房に戻ってきたラズロさんはにやりと笑う。
「これで日々のメニュー決めが楽になるに違いない。ついでにオレは美味いものも食える。一石二鳥だな。
問題は、どうやってその情報を集めるか、については作戦会議だ、アシュリー」
毎日のメニューを考えるのは楽しいけど、たまに困る時があるんだよね。だからラズロさんの言うことも分かる。
「あ、そうだ。片付け終わったら仕入れにギルド行くから、その時に朝話してた件、相談してみるわ」
「取り入れてもらえたらいいですね。宵鍋や出店のメニューも増えるかもしれないです」
またエビ料理を作って食べたいけど、あれだけの量を剥くのは大変だったから、剥いてあるエビ、売って欲しい。
「美味いものが増えるのは大歓迎だな」
エビの串焼きとかも美味しそう。
そういえばあの殻は焼いても硬くて食べられないのかなぁ? パリパリっていうか、カリカリになって食べやすくなったりしないのかなぁ。
油で揚げてみるとか? 図書室の本にあったりするかな?
今度行った時に探してみよう。
2
お気に入りに追加
350
あなたにおすすめの小説
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。
転生調理令嬢は諦めることを知らない
eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。
それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。
子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。
最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。
八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。
それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。
また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。
オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。
同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。
それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。
弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。
主人公が酷く虐げられる描写が苦手な方は、回避をお薦めします。そういう意味もあって、R15指定をしています。
追放令嬢ものに分類されるのでしょうが、追放後の展開はあまり類を見ないものになっていると思います。
2章立てになりますが、1章終盤から2章にかけては、「令嬢」のイメージがぶち壊されるかもしれません。不快に思われる方にはご容赦いただければと存じます。
婚約破棄されたので森の奥でカフェを開いてスローライフ
あげは
ファンタジー
「私は、ユミエラとの婚約を破棄する!」
学院卒業記念パーティーで、婚約者である王太子アルフリードに突然婚約破棄された、ユミエラ・フォン・アマリリス公爵令嬢。
家族にも愛されていなかったユミエラは、王太子に婚約破棄されたことで利用価値がなくなったとされ家を勘当されてしまう。
しかし、ユミエラに特に気にした様子はなく、むしろ喜んでいた。
これまでの生活に嫌気が差していたユミエラは、元孤児で転生者の侍女ミシェルだけを連れ、その日のうちに家を出て人のいない森の奥に向かい、森の中でカフェを開くらしい。
「さあ、ミシェル! 念願のスローライフよ! 張り切っていきましょう!」
王都を出るとなぜか国を守護している神獣が待ち構えていた。
どうやら国を捨てユミエラについてくるらしい。
こうしてユミエラは、転生者と神獣という何とも不思議なお供を連れ、優雅なスローライフを楽しむのであった。
一方、ユミエラを追放し、神獣にも見捨てられた王国は、愚かな王太子のせいで混乱に陥るのだった――。
なろう・カクヨムにも投稿
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
美味しい料理で村を再建!アリシャ宿屋はじめます
今野綾
ファンタジー
住んでいた村が襲われ家族も住む場所も失ったアリシャ。助けてくれた村に住むことに決めた。
アリシャはいつの間にか宿っていた力に次第に気づいて……
表紙 チルヲさん
出てくる料理は架空のものです
造語もあります11/9
参考にしている本
中世ヨーロッパの農村の生活
中世ヨーロッパを生きる
中世ヨーロッパの都市の生活
中世ヨーロッパの暮らし
中世ヨーロッパのレシピ
wikipediaなど
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる