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第四章 魔女の国

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 ラズロさんが外に飲みに行かない日は、一緒に夜の食事の準備をして、終わったらご飯を食べる。
 片付けも済んだら一緒に風呂に入ったりする。

 夜の食事をラズロさんと作りながら、思い付いたことを話したりする。
 僕にとってラズロさんは兄さんみたいな感じ。少し駄目なところもあるけど、温かくて優しくて面白くて、たまに厳しい。

「寮のこともあるんでしょうけど、食堂に来る人が増えましたね」

 城勤めの人達が暮らす寮は、少し前に夜の食事を提供するのを止めてしまった。
 温かい食事が食べたいからと食堂や店に行ってしまうんだって。
 それでも食事を用意していたけど、さすがに無駄だと言うことになって取り止め。その分の予算が食堂に回ってきたみたい。
 僕はお休みの日にたまに宵鍋に連れて行ってもらうぐらいだし、どちらにしろ自分の食事を作るから食堂を利用する人が増えてもあまり困らない。
 むしろ人が増えて一緒にご飯を食べたりして、僕の知らないことを話してくれるから楽しみだったりする。

「アシュリーは定期的に裏庭ダンジョンから枝やらなんやらを持ってくるだろう?」

「はい」

 胡椒の木は低木で、成長も早い分枯れるのも早い。枯れてしまったのを城の人に欲しいと言われたので渡してる。

「あれが薪になってるらしいぞ」

「そんなに大量にありましたっけ?」

「アシュリーも近頃料理するのに暖炉を使うだろ?」

「はい」

 前は使ってなかったんだけど、この冬から暖炉で調理をしてる。
 食堂の暖炉は普通の暖炉の倍は大きくて、鍋が置けるようにレンガが組まれている。この高さなら僕でも大鍋を置けるからとても便利。

「暖炉の熱は石伝いに移るからな、例年よりも城が寒くないんだそうだ」

「そんなに変わりますか?」

 どうだろうな、と答えながらラズロさんはネギを千切りにしていく。

 僕の住んでいた村は家がレンガで出来ていた。木の家はパフィの家ぐらい。魔法で守られたパフィの家は夏でも冬でも変わらずに過ごしやすかった。
 暖炉で火を燃やしていると、レンガに熱が伝わって家そのものが暖かくなって、冬でも過ごしやすい。

 暖炉が便利だと言うことに気付いてから、食堂にいる間はずっと暖炉で何かしら煮ているから、それでなのかな。
 さすがにそれだけで寒さを凌げるとは思えないけど。

「その上食堂のメシはあったかくて美味いときた。風呂もある。休みの日しか出ないだろ」

 千切りを終えると、フライパンに油をたらし、刻んでおいたニンニクを入れる。
 フライパンの下には魔術符が敷いてある。ナインさんとラズロさんの研究はまだ続いてて、どんどん改良されてる。
 正直、こんなに色んな魔術符があるんだから、ラズロさんに魔法はいらないんじゃないかなって思ってしまうけど。

 ニンニク独特の香りが広がってきたところにたっぷりのネギを入れて炒める。
 大人数用のフライパンだから大きいし深さもある。それをラズロさんは軽々と持ち上げて、フライパンの中をひっくり返したりする。僕もいつかあんな風にフライパンを持てるようになりたい。

 ネギを秋の葉と同じ色になるまで炒めるんだけど、ラズロさんはこまめに混ぜない。
 どうしてかと聞いたらそのほうが色が付くのが早いんだと教えてもらった。混ぜたほうが具にまんべんなく火が通るかと思ってたのに、違うんだって。

「さっきの種明かしだけどな、魔術符を置いてんだと」

「魔術符?」

 これだよ、と言ってフライパンの下の魔術符を指差す。

「これの応用でな、魔術符から熱を出すようにしてるんだってよ」

「へぇーっ、すごいですね」

「魔法師団では暖炉に程々の火を維持させる特訓を団員にさせてるって聞いたな」

「なるほど」

 みんな色々考えるなぁ。
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