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第四章 魔女の国
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千切りにしたイモを水にさらして、ひと息吐く。
今日は千切りにしたイモをフライパンに押し付けるようにして焼いて、その上に片目焼きをのせたものに酢漬けの野菜を添えようと思ってる。
それからネギたっぷりのスープも。ラズロさんが切ってくれたネギをひたすら炒めるんだけど、これを作ってるときはネロは近付かない。ネギのにおいが嫌いみたい。
風が前よりも冷たく感じる。
去年冬の王を倒したけど、あれは特定の魔物ではないからまた現れるかも知れないんだよね。
この国で生まれた時は、僕のいた村からそう遠くない場所にあるクロウリーさんが作ったダンジョンに出たんだって。
それ以外にも強い魔物が出てきてたらしいんだけど、僕のいた村は魔女のパフィがいたから無事で、他の村に被害が出ていたのもあって、ノエルさんとクリフさんが封印しに行った。
封印だけだから二人だったんだよ、とてもじゃないけど、中の魔物退治は二人では無理だよ、とノエルさんが言ってたのを思い出す。
王都からそう遠くない場所のダンジョンは閉じたし、ティール様とレンレンさんが作ったミズル草もあるし、ダンジョンが新しく出来てしまうのは防げるのかなと思う。
「どうした?」
「冬が近付いてるなーって思って」
「確かにな。今年は冬の王はお出ましになんのかね」
北の国に冬の王が出ても助けないらしい。
それはそれで仕方ないと思うけど、辛い思いや痛い思い、下手をすれば死んでしまうのはきっと、ナインさんと同じ魔術師なんだろうと思うと複雑な気持ちになる。
……そういえばその魔術師の人たちを助けるって言っていたような……?
「その場合は助けないって言ってましたよね」
「まぁなぁ。事実上国交を断絶してるからな。救援要請はしてこねぇだろうな。うちの南の国に要請を出したってこの国を通過させる許可は出さないだろうから、遠回りをする事になるだろうし、そこまでして南も北を助けようとはしねぇだろ」
刻み終えたネギを熱しておいたフライパンに入れるとじゅっと音がした。それから生のネギの匂い。
「この国は復興中ではあるがな、他国からすれば貴重なものが手に入る国だ。友好的な関係を抱きたいと考えても、敵にしたいと思ってる奴は多くない」
「戦争とか」
貴重だから欲しくなるっていうのはあるんじゃないかな。
まぁなと答えながら、ラズロさんはネギを炒める。良い匂いがしてきた。
「やられっぱなしを良しとする性格じゃねぇからなぁ、魔法師団長も、騎士団長も。そうなりゃなんとかするんだろうよ」
ラズロさんの言葉に納得する。
トキア様も騎士団長もどちらかと言うと守りと言うより、攻撃する方だろうな。
強い風が吹いてガタガタと揺れる扉に、冬がそう遠くないことを感じた。
今日は千切りにしたイモをフライパンに押し付けるようにして焼いて、その上に片目焼きをのせたものに酢漬けの野菜を添えようと思ってる。
それからネギたっぷりのスープも。ラズロさんが切ってくれたネギをひたすら炒めるんだけど、これを作ってるときはネロは近付かない。ネギのにおいが嫌いみたい。
風が前よりも冷たく感じる。
去年冬の王を倒したけど、あれは特定の魔物ではないからまた現れるかも知れないんだよね。
この国で生まれた時は、僕のいた村からそう遠くない場所にあるクロウリーさんが作ったダンジョンに出たんだって。
それ以外にも強い魔物が出てきてたらしいんだけど、僕のいた村は魔女のパフィがいたから無事で、他の村に被害が出ていたのもあって、ノエルさんとクリフさんが封印しに行った。
封印だけだから二人だったんだよ、とてもじゃないけど、中の魔物退治は二人では無理だよ、とノエルさんが言ってたのを思い出す。
王都からそう遠くない場所のダンジョンは閉じたし、ティール様とレンレンさんが作ったミズル草もあるし、ダンジョンが新しく出来てしまうのは防げるのかなと思う。
「どうした?」
「冬が近付いてるなーって思って」
「確かにな。今年は冬の王はお出ましになんのかね」
北の国に冬の王が出ても助けないらしい。
それはそれで仕方ないと思うけど、辛い思いや痛い思い、下手をすれば死んでしまうのはきっと、ナインさんと同じ魔術師なんだろうと思うと複雑な気持ちになる。
……そういえばその魔術師の人たちを助けるって言っていたような……?
「その場合は助けないって言ってましたよね」
「まぁなぁ。事実上国交を断絶してるからな。救援要請はしてこねぇだろうな。うちの南の国に要請を出したってこの国を通過させる許可は出さないだろうから、遠回りをする事になるだろうし、そこまでして南も北を助けようとはしねぇだろ」
刻み終えたネギを熱しておいたフライパンに入れるとじゅっと音がした。それから生のネギの匂い。
「この国は復興中ではあるがな、他国からすれば貴重なものが手に入る国だ。友好的な関係を抱きたいと考えても、敵にしたいと思ってる奴は多くない」
「戦争とか」
貴重だから欲しくなるっていうのはあるんじゃないかな。
まぁなと答えながら、ラズロさんはネギを炒める。良い匂いがしてきた。
「やられっぱなしを良しとする性格じゃねぇからなぁ、魔法師団長も、騎士団長も。そうなりゃなんとかするんだろうよ」
ラズロさんの言葉に納得する。
トキア様も騎士団長もどちらかと言うと守りと言うより、攻撃する方だろうな。
強い風が吹いてガタガタと揺れる扉に、冬がそう遠くないことを感じた。
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