209 / 271
第三章 ダンジョンメーカーのお仕事
050-2
しおりを挟む
チーズ作りがひと段落したところで、ノエルさんがやってきた。
心なし、機嫌が良さそうに見える。
「ノエルさんもヨウルト食べませんか?」
「ヨウルト? アシュリー作ったの?」
カウンターに座ったノエルさんに、ラズロさんがよっ、と声をかける。
「ザックさんのところで種をもらって、作り続けているんです」
ノエルさんは細身だけど沢山食べるので、器にヨウルトをたっぷりよそり、蜂蜜をかけてスプーンと一緒に渡す。
蜂蜜以外にヨウルトにかけられるもの、何かないかな。果物とか良いかも知れない。干した果物でも大丈夫かな?
「ありがとう、アシュリー。
昨日は遅くまで書類を作っていたから睡眠が足りなくって。ダンジョン蜂の蜜、ありがたくいただきます」
そう言ってノエルさんはヨウルトを食べ始めた。
美味しそうに目を細めているノエルさんを見ていると、こっちも嬉しくなってくる。
「アシュリー、この前宵鍋で言った事を覚えてる?」
この前?
「エスナさんの事ですか?」
そう、と答えてノエルさんは頷く。
「この国は立て直しの最中で、皆も頑張ってくれてはいるけど、やっぱり疲れるでしょう? これまで安定していたものが不安定になっている訳だから不満が溜まりやすくなる。
不満は不満を呼ぶから……状況は簡単には改善出来ないし、不満をね、解消とまではいかずとも、どうやって改善していくかが課題だったんだよ」
こんな風に言うってことは、見通しがついたってことなのかな。
「吟遊詩人なんかはそれぞれが店と契約をする訳だけど、その契約のない時に広間で芸を披露してもらおうと思うんだ。勿論、国から報酬を支払うよ」
なるほど。
「同じ芸ばかり見ていたら飽きがくるだろうよ。かと言って外からの出入りはあまり多くしたくないしなぁ」
「そうなんだよねぇ……」
うーん……とノエルさんとラズロさんが同時に唸る。
「劇、やる」
ナインさんがひょこりと顔を出して言った。
いつの間に来たんだろう。話に夢中になっていて、気が付かなかった。
ヨウルトをナインさん用によそって渡すと、ナインさんはノエルさんの横に座った。
「ナイン、劇って、演劇の事?」
ノエルさんの質問にナインさんが頷く。
「あー、あれか」
僕以外、みんな分かってるみたいだった。
劇ってなんだろう?
ラズロさんが僕の頭をぽんと叩く。
「オレも一度しか観た事ないんだけどな。
昔から言われてる話があんだろ? 村とかでもさ。
英雄が魔物を倒してうんたらかんたら、とか、そう言う奴」
頷く。
母さんが話してくれたものや、村の年寄りが教えてくれたものとか、昔話は色々ある。
「あの手のをな、人がなりきるんだよ」
「そうそう、話として聞くのも楽しいけど、目の前で実際に人がやるとね、面白さが増すんだ」
「へぇーっ」
昔話は、話す人によって面白さが変わった。人がやったらもっと、なんていうか本当にあったことみたいに思えて楽しいのかな。
「劇の為に衣装や小物なんかも必要になんだろ。
なんだったら国がやれば良いんだよ。そうすりゃ国にとって困るような内容なんかは演じられずに済むしな」
ノエルさんはうんうん、と頷く。
「面白そうだね、殿下に奏上してみるよ」
心なし、機嫌が良さそうに見える。
「ノエルさんもヨウルト食べませんか?」
「ヨウルト? アシュリー作ったの?」
カウンターに座ったノエルさんに、ラズロさんがよっ、と声をかける。
「ザックさんのところで種をもらって、作り続けているんです」
ノエルさんは細身だけど沢山食べるので、器にヨウルトをたっぷりよそり、蜂蜜をかけてスプーンと一緒に渡す。
蜂蜜以外にヨウルトにかけられるもの、何かないかな。果物とか良いかも知れない。干した果物でも大丈夫かな?
「ありがとう、アシュリー。
昨日は遅くまで書類を作っていたから睡眠が足りなくって。ダンジョン蜂の蜜、ありがたくいただきます」
そう言ってノエルさんはヨウルトを食べ始めた。
美味しそうに目を細めているノエルさんを見ていると、こっちも嬉しくなってくる。
「アシュリー、この前宵鍋で言った事を覚えてる?」
この前?
「エスナさんの事ですか?」
そう、と答えてノエルさんは頷く。
「この国は立て直しの最中で、皆も頑張ってくれてはいるけど、やっぱり疲れるでしょう? これまで安定していたものが不安定になっている訳だから不満が溜まりやすくなる。
不満は不満を呼ぶから……状況は簡単には改善出来ないし、不満をね、解消とまではいかずとも、どうやって改善していくかが課題だったんだよ」
こんな風に言うってことは、見通しがついたってことなのかな。
「吟遊詩人なんかはそれぞれが店と契約をする訳だけど、その契約のない時に広間で芸を披露してもらおうと思うんだ。勿論、国から報酬を支払うよ」
なるほど。
「同じ芸ばかり見ていたら飽きがくるだろうよ。かと言って外からの出入りはあまり多くしたくないしなぁ」
「そうなんだよねぇ……」
うーん……とノエルさんとラズロさんが同時に唸る。
「劇、やる」
ナインさんがひょこりと顔を出して言った。
いつの間に来たんだろう。話に夢中になっていて、気が付かなかった。
ヨウルトをナインさん用によそって渡すと、ナインさんはノエルさんの横に座った。
「ナイン、劇って、演劇の事?」
ノエルさんの質問にナインさんが頷く。
「あー、あれか」
僕以外、みんな分かってるみたいだった。
劇ってなんだろう?
ラズロさんが僕の頭をぽんと叩く。
「オレも一度しか観た事ないんだけどな。
昔から言われてる話があんだろ? 村とかでもさ。
英雄が魔物を倒してうんたらかんたら、とか、そう言う奴」
頷く。
母さんが話してくれたものや、村の年寄りが教えてくれたものとか、昔話は色々ある。
「あの手のをな、人がなりきるんだよ」
「そうそう、話として聞くのも楽しいけど、目の前で実際に人がやるとね、面白さが増すんだ」
「へぇーっ」
昔話は、話す人によって面白さが変わった。人がやったらもっと、なんていうか本当にあったことみたいに思えて楽しいのかな。
「劇の為に衣装や小物なんかも必要になんだろ。
なんだったら国がやれば良いんだよ。そうすりゃ国にとって困るような内容なんかは演じられずに済むしな」
ノエルさんはうんうん、と頷く。
「面白そうだね、殿下に奏上してみるよ」
2
お気に入りに追加
348
あなたにおすすめの小説
料理を作って異世界改革
高坂ナツキ
ファンタジー
「ふむ名前は狭間真人か。喜べ、お前は神に選ばれた」
目が覚めると謎の白い空間で人型の発行体にそう語りかけられた。
「まあ、お前にやってもらいたいのは簡単だ。異世界で料理の技術をばらまいてほしいのさ」
記憶のない俺に神を名乗る謎の発行体はそう続ける。
いやいや、記憶もないのにどうやって料理の技術を広めるのか?
まあ、でもやることもないし、困ってる人がいるならやってみてもいいか。
そう決めたものの、ゼロから料理の技術を広めるのは大変で……。
善人でも悪人でもないという理由で神様に転生させられてしまった主人公。
神様からいろいろとチートをもらったものの、転生した世界は料理という概念自体が存在しない世界。
しかも、神様からもらったチートは調味料はいくらでも手に入るが食材が無限に手に入るわけではなく……。
現地で出会った少年少女と協力して様々な料理を作っていくが、果たして神様に依頼されたようにこの世界に料理の知識を広げることは可能なのか。
転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
テイマーズライフ ~ダンジョン制覇が目的ではなく、ペットを育てるためだけに潜ってしまうテイマーさんの、苦しくも楽しい異世界生活~
はらくろ
ファンタジー
時は二十二世紀。沢山のユーザーに愛されていた、VRMMORPGファンタズマル・ワールズ・オンラインに、一人のディープなゲーマーさんがいた。そのゲーマーさんは、豊富な追体験ができるコンテンツには目もくれず、日々、ペットを育てることに没頭している。ある日突然ゲーマーさんは、ゲームに似た異世界へ転移してしまう。ゲーマーさんははたして、どうなってしまうのか?
転生テイマー、異世界生活を楽しむ
さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。
内容がどんどんかけ離れていくので…
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
ありきたりな転生ものの予定です。
主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。
一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。
まっ、なんとかなるっしょ。
人間だった竜人の番は、生まれ変わってエルフになったので、大好きなお父さんと暮らします
吉野屋
ファンタジー
竜人国の皇太子の番として預言者に予言され妃になるため城に入った人間のシロアナだが、皇太子は人間の番と言う事実が受け入れられず、超塩対応だった。シロアナはそれならば人間の国へ帰りたいと思っていたが、イラつく皇太子の不手際のせいであっさり死んでしまった(人は竜人に比べてとても脆い存在)。
魂に傷を負った娘は、エルフの娘に生まれ変わる。
次の身体の父親はエルフの最高位の大魔術師を退き、妻が命と引き換えに生んだ娘と森で暮らす事を選んだ男だった。
【完結したお話を現在改稿中です。改稿しだい順次お話しをUPして行きます】
異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。
料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します
黒木 楓
恋愛
隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。
どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。
巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。
転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。
そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる