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第三章 ダンジョンメーカーのお仕事

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 チーズ作りがひと段落したところで、ノエルさんがやってきた。
 心なし、機嫌が良さそうに見える。

「ノエルさんもヨウルト食べませんか?」

「ヨウルト? アシュリー作ったの?」

 カウンターに座ったノエルさんに、ラズロさんがよっ、と声をかける。

「ザックさんのところで種をもらって、作り続けているんです」

 ノエルさんは細身だけど沢山食べるので、器にヨウルトをたっぷりよそり、蜂蜜をかけてスプーンと一緒に渡す。
 蜂蜜以外にヨウルトにかけられるもの、何かないかな。果物とか良いかも知れない。干した果物でも大丈夫かな?

「ありがとう、アシュリー。
昨日は遅くまで書類を作っていたから睡眠が足りなくって。ダンジョン蜂の蜜、ありがたくいただきます」

 そう言ってノエルさんはヨウルトを食べ始めた。
 美味しそうに目を細めているノエルさんを見ていると、こっちも嬉しくなってくる。

「アシュリー、この前宵鍋で言った事を覚えてる?」

 この前?

「エスナさんの事ですか?」

 そう、と答えてノエルさんは頷く。

「この国は立て直しの最中で、皆も頑張ってくれてはいるけど、やっぱり疲れるでしょう? これまで安定していたものが不安定になっている訳だから不満が溜まりやすくなる。
不満は不満を呼ぶから……状況は簡単には改善出来ないし、不満をね、解消とまではいかずとも、どうやって改善していくかが課題だったんだよ」

 こんな風に言うってことは、見通しがついたってことなのかな。

「吟遊詩人なんかはそれぞれが店と契約をする訳だけど、その契約のない時に広間で芸を披露してもらおうと思うんだ。勿論、国から報酬を支払うよ」

 なるほど。

「同じ芸ばかり見ていたら飽きがくるだろうよ。かと言って外からの出入りはあまり多くしたくないしなぁ」

「そうなんだよねぇ……」

 うーん……とノエルさんとラズロさんが同時に唸る。

「劇、やる」

 ナインさんがひょこりと顔を出して言った。
 いつの間に来たんだろう。話に夢中になっていて、気が付かなかった。

 ヨウルトをナインさん用によそって渡すと、ナインさんはノエルさんの横に座った。

「ナイン、劇って、演劇の事?」

 ノエルさんの質問にナインさんが頷く。

「あー、あれか」

 僕以外、みんな分かってるみたいだった。
 劇ってなんだろう?
 ラズロさんが僕の頭をぽんと叩く。

「オレも一度しか観た事ないんだけどな。
昔から言われてる話があんだろ? 村とかでもさ。
英雄が魔物を倒してうんたらかんたら、とか、そう言う奴」

 頷く。
 母さんが話してくれたものや、村の年寄りが教えてくれたものとか、昔話は色々ある。

「あの手のをな、人がなりきるんだよ」

「そうそう、話として聞くのも楽しいけど、目の前で実際に人がやるとね、面白さが増すんだ」

「へぇーっ」

 昔話は、話す人によって面白さが変わった。人がやったらもっと、なんていうか本当にあったことみたいに思えて楽しいのかな。

「劇の為に衣装や小物なんかも必要になんだろ。
なんだったら国がやれば良いんだよ。そうすりゃ国にとって困るような内容なんかは演じられずに済むしな」

 ノエルさんはうんうん、と頷く。

「面白そうだね、殿下に奏上してみるよ」
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