上 下
191 / 271
第三章 ダンジョンメーカーのお仕事

046-3

しおりを挟む
 翌日、僕たちは殿下とパフィに旅の報告をする事になった。
 本当なら殿下の部屋に行くべきなんだけど、殿下が休憩がてら話を聞きたいって言ったらしくって、殿下とトキア様が食堂に来てくれる事になった。

 僕とラズロさんはコーヒーやらミルク入りコーヒーを入れる当番。
 ノエルさんが旅についての報告をしてくれる事になった。その方が正しく伝わる気がするので、とてもありがたい。

『なるほどな。ミズル草は確かに魔力を帯びているが、あの草とダンジョンの関係性については着目した事がなかったな』

 ゆらゆらと尻尾を揺らしながら、パフィはノエルさんの話を聞いている。
 殿下はミルクコーヒーを飲んでから言った。

「水晶が群生していたミズル草を萎れさせた……か」

 ちらりと僕の方を見たので、頷く。
 トラス──魔力水晶がミズル草を萎れさせた事を気にしてるみたいだ。

 一瞬でミズル草が萎れてびっくりした。フルールは萎れた草もおかまいなしに食べていたけど、美味しさは変わったんだろうか。
 フルールはダンジョンで食事中。一応、ティール様に言われた通り部屋は大きくしておいた。あんまり広くすると必要とする魔力も増えるって事だったから、少ししか広く出来なかった。広すぎてもフルールが困るかなと思って。

「ミズル草はダンジョンの周辺に群生すると思われます。道中、野原に群生したものを見つけましたが、ダンジョンは存在しておりませんでした。
現時点では憶測の域を出ませんが、魔力の滞留する場所にミズル草は根を張り、その後ダンジョンが発生しているのではないかと思料します」

 殿下は頷いて、「魔法薬学長に因果関係を調べさせよう」と言った。

 全員分の飲み物も用意したので、僕とラズロさんは端っこに座った。

「もしそれが本当なら、なんで知られてないんだよ?」

 ラズロさんがノエルさんに訊く。

「レンレンの本に書いてある。焼き払え、って」

 ラズロさんはガリガリと頭をかく。

「つまりアレか、群生して邪魔になるから大抵は焼き払っちまって分からないってことか。
ノエルの考えている通りなら、草を焼き払った所で魔力の滞留は止まらねえんだろ?」

 そう言う事になるね、とノエルさんが頷く。

「オブディアン」

「はい、殿下」

「魔力の滞留は、目には見えぬものであろう?」

「はい、その通りです。その場所に行けば私達魔法師団の者や魔術師団の者なら分かるでしょうが、離れた場所にいて認識出来るものではございません」

「そのミズル草からポーションが作れると魔法薬学長は言っていたと。ポーションはそこそこに値の張るものだ。もし国内で魔力が滞留する場所に群生したミズル草を採取し、ポーションの原料とするなら、国内のポーションの値段も下げられる。それをどう現実にするかは、魔法薬学長に考えさせるとしよう」

『問題は、そこに出来てしまうダンジョンだな』

 パフィの言葉に殿下とノエルさん、トキア様も頷いた。

「それについてはミズル草とダンジョンの関連性が解明されてから本格的に決める事とする」

 言い終えると殿下は立ち上がった。みんな一斉に頭を下げる。

「ではまたな、アシュリー」

「はい」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

料理を作って異世界改革

高坂ナツキ
ファンタジー
「ふむ名前は狭間真人か。喜べ、お前は神に選ばれた」 目が覚めると謎の白い空間で人型の発行体にそう語りかけられた。 「まあ、お前にやってもらいたいのは簡単だ。異世界で料理の技術をばらまいてほしいのさ」 記憶のない俺に神を名乗る謎の発行体はそう続ける。 いやいや、記憶もないのにどうやって料理の技術を広めるのか? まあ、でもやることもないし、困ってる人がいるならやってみてもいいか。 そう決めたものの、ゼロから料理の技術を広めるのは大変で……。 善人でも悪人でもないという理由で神様に転生させられてしまった主人公。 神様からいろいろとチートをもらったものの、転生した世界は料理という概念自体が存在しない世界。 しかも、神様からもらったチートは調味料はいくらでも手に入るが食材が無限に手に入るわけではなく……。 現地で出会った少年少女と協力して様々な料理を作っていくが、果たして神様に依頼されたようにこの世界に料理の知識を広げることは可能なのか。

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)

SHO
ファンタジー
15歳になり、女神からの神託の儀で魔法使い(ウィザード)のジョブを授かった少年ショーンは、幼馴染で剣闘士(ソードファイター)のジョブを授かったデライラと共に、冒険者になるべく街に出た。 しかし、着々と実績を上げていくデライラとは正反対に、ショーンはまともに魔法を発動する事すら出来ない。 相棒のデライラからは愛想を尽かされ、他の冒険者たちからも孤立していくショーンのたった一つの心の拠り所は、森で助けた黒ウサギのノワールだった。 そんなある日、ショーンに悲劇が襲い掛かる。しかしその悲劇が、彼の人生を一変させた。 無双あり、ザマァあり、復讐あり、もふもふありの大冒険、いざ開幕!

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

テイマーズライフ ~ダンジョン制覇が目的ではなく、ペットを育てるためだけに潜ってしまうテイマーさんの、苦しくも楽しい異世界生活~

はらくろ
ファンタジー
時は二十二世紀。沢山のユーザーに愛されていた、VRMMORPGファンタズマル・ワールズ・オンラインに、一人のディープなゲーマーさんがいた。そのゲーマーさんは、豊富な追体験ができるコンテンツには目もくれず、日々、ペットを育てることに没頭している。ある日突然ゲーマーさんは、ゲームに似た異世界へ転移してしまう。ゲーマーさんははたして、どうなってしまうのか?

転生テイマー、異世界生活を楽しむ

さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

人間だった竜人の番は、生まれ変わってエルフになったので、大好きなお父さんと暮らします

吉野屋
ファンタジー
 竜人国の皇太子の番として預言者に予言され妃になるため城に入った人間のシロアナだが、皇太子は人間の番と言う事実が受け入れられず、超塩対応だった。シロアナはそれならば人間の国へ帰りたいと思っていたが、イラつく皇太子の不手際のせいであっさり死んでしまった(人は竜人に比べてとても脆い存在)。  魂に傷を負った娘は、エルフの娘に生まれ変わる。  次の身体の父親はエルフの最高位の大魔術師を退き、妻が命と引き換えに生んだ娘と森で暮らす事を選んだ男だった。 【完結したお話を現在改稿中です。改稿しだい順次お話しをUPして行きます】  

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

処理中です...