上 下
190 / 271
第三章 ダンジョンメーカーのお仕事

046-2

しおりを挟む
 食堂に入ると、ラズロさんとナインさんが厨房に立っていた。
 僕たちに気付いてラズロさんが手を上げる。真似してナインさんも手を振って来たので、手を振り返す。

「おぅ、ご無事のご帰還なによりだ」

「帰りましたー」

「おまえらが帰った時に腹が減ってんじゃないかと思ってな、簡単なもの作っといてやったぞ」

 ありがとうございます、と言おうと思ったらおなかが鳴った。

「ラズロ、アシュリーのおなかがいただきます、だって」

「座って待ってろ」

 椅子に座ってラズロさんとナインさんを見る。
 魔法を使えないラズロさんを、魔術師のナインさんが手伝ってる。食堂に入った時からとても良い匂いがしていた。なんだろう、とっても良い匂い。

 少しして、ラズロさんが料理を持って来てくれた。
 僕たちの前に置かれたのは、黄色くてだ円のもの。

「オムレツだ」

 オムレツ? いつものオムレツはたいらなんだけど、なんだかふっくらしてる。

「余った具材みじん切りにして放り込んだら結構美味くてな」

 僕の知ってるオムレツは、卵をときほぐして塩で味付けをして、フライパンで焼いて半分を折り畳むものなんだけど、目の前のオムレツは卵の表面にも具材が見えるぐらいだ。

「卵とトマトが余って捨てるしかないって相談を受けて買い取って来たはいいものの、使い道に困ってなぁ。それでオムレツにしたは良いがそれだけって訳にもいかんだろ」

 確かにいつもはオムレツに湯がいたイモや、酢漬けの野菜なんかを添えていたけど。

「ナインが卵に具を入れたものを食べたことあるってる言うんでな、試しにやってみたんだよ。余った具材を刻んで」

 納得して、スプーンで卵をすくって口に入れる。
 一緒に入った具材は味付けして炒めてあるみたいで、卵の甘さとちょうど良い。
 オムレツの上にかかったトマトソースの酸味もある。

「食べ応えがあるね」

 ノエルさんがひと口食べて言った。クリフさんは無言で食べてる。パフィもいつの間にか食べていた。

「これ、とっても美味しいです」

 そうだろ、と言ってラズロさんが嬉しそうに笑う。

 おなかが空いていたのもあるけど、とても美味しい。
 中に入ってる具材が色々だから、ちょっと固いものとか、柔らかいものとか、色んな食感がする。
 次にオムレツを作る時、僕もやってみよう。

 横に座るフルールが鼻をひくひくさせているのに気付いて、ダンジョンの中の部屋に行った方がいいんじゃないかと思った。数日とは言え、日々のことだから、結構あるんじゃないかと思って。

「フルール、ダンジョンでごはん食べて来て良いよ」

 ぴょこぴょこ、と耳を揺らすと、フルールは跳ねながら食堂を出て行った。おなか空いてたんだね。
 旅の間はいつものように食べられないから、フルールにとっては辛いかも知れない。

「おー、そう言えば街の連中から、廃棄に関する相談みたいなもん、受けたぞ」

 ノエルさんとクリフさんがラズロさんを見る。

「アシュリーがここを離れると、フルールもいないだろ。当然廃棄物が溜まる。今は夏じゃねぇからまだ良いけどな」

「やっぱりそうだよねぇ」とノエルさんがため息を吐く。

「スライム、用意した方が良いかな」

「フルールと同じ消化速度を持つスライムを用意するとして、どなたがテイムを?」

 後ろから声がして、びっくりして振り向くと、ティール様がいた。

「それよりも、廃棄物が転送されるダンジョンのあの部屋を大きくしておけば良いのでは? この旅も永遠に続く訳ではないでしょうし、廃棄物を無料にする施策も暫定対応だと伺っております」

「そうだね、ティールにしては、まともな意見だね」

「いつもまともな事を言ってると思うんですけれどねぇ」

 ノエルさんの言葉にあはは、と笑うティール様。

「アシュリーくん、手が空いた時で結構ですから、部屋の拡張をお願い出来ますか?」

「はい」

 その日、フルールは部屋から戻って来なかった。
 ……おなか、本当に空いてたんだね。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

Rich&Lich ~不死の王になれなかった僕は『英霊使役』と『金運』でスローライフを満喫する~

八神 凪
ファンタジー
 僕は残念ながら十六歳という若さでこの世を去ることになった。  もともと小さいころから身体が弱かったので入院していることが多く、その延長で負担がかかった心臓病の手術に耐えられなかったから仕方ない。  両親は酷く悲しんでくれたし、愛されている自覚もあった。  後は弟にその愛情を全部注いでくれたらと、思う。  この話はここで終わり。僕の人生に幕が下りただけ……そう思っていたんだけど――  『抽選の結果あなたを別世界へ移送します♪』  ――ゆるふわ系の女神と名乗る女性によりどうやら僕はラノベやアニメでよくある異世界転生をすることになるらしい。    今度の人生は簡単に死なない身体が欲しいと僕はひとつだけ叶えてくれる願いを決める。  「僕をリッチにして欲しい」  『はあい、わかりましたぁ♪』  そして僕は異世界へ降り立つのだった――

つじつまあわせはいつかのために

明智
ファンタジー
旧タイトル”いやいや、チートとか勘弁してくださいね? ~転生魔王の俺が、召喚勇者たちをひたすら邪魔して邪魔する毎日~” ※※第四章 連載中※※  異世界で魔族に生まれ変わり、いつしか魔王と呼ばれるに至った男。その後紆余曲折を経て、魔族を敵視する人族国家で貴族にまで叙された彼の目的は、魔族と人族の決定的な戦争を人知れず回避することだった。 素性を隠し奮闘する彼の元に、ある日驚くべき知らせが舞い込む。それは、彼と故郷を共にする4人の勇者がこの世界に召喚されたということ。……だが彼は勇者たちを歓迎しない。はよ帰れくらい思ってる。  勇者として呼び出された4人のうち1人。美が付かない系少女と話をするうちに、彼は自分の願いを口にした。あるがままの世界を守る。俺TUEEEも、NAISEIも、技術革命も、文化侵食もやらせない。  そしてオッサンと少女の、世界の裏側でうろちょろする日々が始まった。 基本的に一日一話、更新予定 4/26 タイトル変更しました

異世界着ぐるみ転生

こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生 どこにでもいる、普通のOLだった。 会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。 ある日気が付くと、森の中だった。 誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ! 自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。 幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り! 冒険者?そんな怖い事はしません! 目指せ、自給自足! *小説家になろう様でも掲載中です

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

ゲームで第二の人生を!~最強?チート?ユニークスキル無双で【最強の相棒】と一緒にのんびりまったりハチャメチャライフ!?~

俊郎
SF
『カスタムパートナーオンライン』。それは、唯一無二の相棒を自分好みにカスタマイズしていく、発表時点で大いに期待が寄せられた最新VRMMOだった。 が、リリース直前に運営会社は倒産。ゲームは秘密裏に、とある研究機関へ譲渡された。 現実世界に嫌気がさした松永雅夫はこのゲームを利用した実験へ誘われ、第二の人生を歩むべく参加を決めた。 しかし、雅夫の相棒は予期しないものになった。 相棒になった謎の物体にタマと名付け、第二の人生を開始した雅夫を待っていたのは、怒涛のようなユニークスキル無双。 チートとしか言えないような相乗効果を生み出すユニークスキルのお陰でステータスは異常な数値を突破して、スキルの倍率もおかしなことに。 強くなれば将来は安泰だと、困惑しながらも楽しくまったり暮らしていくお話。 この作品は小説家になろう様、ツギクル様、ノベルアップ様でも公開しています。 大体1話2000~3000字くらいでぼちぼち更新していきます。 初めてのVRMMOものなので応援よろしくお願いします。 基本コメディです。 あまり難しく考えずお読みください。 Twitterです。 更新情報等呟くと思います。良ければフォロー等宜しくお願いします。 https://twitter.com/shiroutotoshiro?s=09

美味しい料理で村を再建!アリシャ宿屋はじめます

今野綾
ファンタジー
住んでいた村が襲われ家族も住む場所も失ったアリシャ。助けてくれた村に住むことに決めた。 アリシャはいつの間にか宿っていた力に次第に気づいて…… 表紙 チルヲさん 出てくる料理は架空のものです 造語もあります11/9 参考にしている本 中世ヨーロッパの農村の生活 中世ヨーロッパを生きる 中世ヨーロッパの都市の生活 中世ヨーロッパの暮らし 中世ヨーロッパのレシピ wikipediaなど

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

処理中です...