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第三章 ダンジョンメーカーのお仕事

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 食堂に入ると、ラズロさんとナインさんが厨房に立っていた。
 僕たちに気付いてラズロさんが手を上げる。真似してナインさんも手を振って来たので、手を振り返す。

「おぅ、ご無事のご帰還なによりだ」

「帰りましたー」

「おまえらが帰った時に腹が減ってんじゃないかと思ってな、簡単なもの作っといてやったぞ」

 ありがとうございます、と言おうと思ったらおなかが鳴った。

「ラズロ、アシュリーのおなかがいただきます、だって」

「座って待ってろ」

 椅子に座ってラズロさんとナインさんを見る。
 魔法を使えないラズロさんを、魔術師のナインさんが手伝ってる。食堂に入った時からとても良い匂いがしていた。なんだろう、とっても良い匂い。

 少しして、ラズロさんが料理を持って来てくれた。
 僕たちの前に置かれたのは、黄色くてだ円のもの。

「オムレツだ」

 オムレツ? いつものオムレツはたいらなんだけど、なんだかふっくらしてる。

「余った具材みじん切りにして放り込んだら結構美味くてな」

 僕の知ってるオムレツは、卵をときほぐして塩で味付けをして、フライパンで焼いて半分を折り畳むものなんだけど、目の前のオムレツは卵の表面にも具材が見えるぐらいだ。

「卵とトマトが余って捨てるしかないって相談を受けて買い取って来たはいいものの、使い道に困ってなぁ。それでオムレツにしたは良いがそれだけって訳にもいかんだろ」

 確かにいつもはオムレツに湯がいたイモや、酢漬けの野菜なんかを添えていたけど。

「ナインが卵に具を入れたものを食べたことあるってる言うんでな、試しにやってみたんだよ。余った具材を刻んで」

 納得して、スプーンで卵をすくって口に入れる。
 一緒に入った具材は味付けして炒めてあるみたいで、卵の甘さとちょうど良い。
 オムレツの上にかかったトマトソースの酸味もある。

「食べ応えがあるね」

 ノエルさんがひと口食べて言った。クリフさんは無言で食べてる。パフィもいつの間にか食べていた。

「これ、とっても美味しいです」

 そうだろ、と言ってラズロさんが嬉しそうに笑う。

 おなかが空いていたのもあるけど、とても美味しい。
 中に入ってる具材が色々だから、ちょっと固いものとか、柔らかいものとか、色んな食感がする。
 次にオムレツを作る時、僕もやってみよう。

 横に座るフルールが鼻をひくひくさせているのに気付いて、ダンジョンの中の部屋に行った方がいいんじゃないかと思った。数日とは言え、日々のことだから、結構あるんじゃないかと思って。

「フルール、ダンジョンでごはん食べて来て良いよ」

 ぴょこぴょこ、と耳を揺らすと、フルールは跳ねながら食堂を出て行った。おなか空いてたんだね。
 旅の間はいつものように食べられないから、フルールにとっては辛いかも知れない。

「おー、そう言えば街の連中から、廃棄に関する相談みたいなもん、受けたぞ」

 ノエルさんとクリフさんがラズロさんを見る。

「アシュリーがここを離れると、フルールもいないだろ。当然廃棄物が溜まる。今は夏じゃねぇからまだ良いけどな」

「やっぱりそうだよねぇ」とノエルさんがため息を吐く。

「スライム、用意した方が良いかな」

「フルールと同じ消化速度を持つスライムを用意するとして、どなたがテイムを?」

 後ろから声がして、びっくりして振り向くと、ティール様がいた。

「それよりも、廃棄物が転送されるダンジョンのあの部屋を大きくしておけば良いのでは? この旅も永遠に続く訳ではないでしょうし、廃棄物を無料にする施策も暫定対応だと伺っております」

「そうだね、ティールにしては、まともな意見だね」

「いつもまともな事を言ってると思うんですけれどねぇ」

 ノエルさんの言葉にあはは、と笑うティール様。

「アシュリーくん、手が空いた時で結構ですから、部屋の拡張をお願い出来ますか?」

「はい」

 その日、フルールは部屋から戻って来なかった。
 ……おなか、本当に空いてたんだね。
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