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第三章 ダンジョンメーカーのお仕事

045-6

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 ダンジョンに到着した。
 僕とノエルさん、クリフさん、フルールを置いて騎士団の人と魔法師団の四人は近くの村に向かった。

「あ、あの草、アシュリーの言う通りあるね」

 モンスターが好むと言う草は、ダンジョンの入り口からちょっと離れた場所に群生していた。

「フルール、良かったらこの草を食べ尽くしてくれないかな」

 僕を見上げて、フルールは耳をぴょこぴょこと揺らす。

「もしモンスターが来たら逃げるんだよ」

 さっきと同じように耳を揺らし、草を食べ始めた。

「よし、行こうか」

 フルールは僕からあまり離れたがらないけど、少しの距離なら大丈夫。
 ここのダンジョンも深くはないって言うし。深いと距離が離れるからかフルールは嫌がって、追いかけてくる。
 パフィが言うには、テイムされた動物やモンスターは、主人が何処にいても絶対に分かるんだって。
 僕は分からないんだけど。
 だからこの前、ネロは本当に僕から離れたいと思っていたら木の上にずっといないで逃げる事も出来たみたい。

 前回と同じようにクリフさんを先頭に、僕、ノエルさんの順にダンジョンに入る。

「罠なんかはかけられていないみたいだね」

 ノエルさんが小さな声で言う。

「オーガだからな」

「すぐに戦闘になっても良い?」

「おまえの準備が済んでるなら構わない」

 ノエルさんは僕の前に立つ。
 振り返って僕の頭に触ろうとするけど、トラスを持っているから触れない。

「効果は大丈夫みたいだね。行ってくるから、待ってて」

「はい、クリフさんもノエルさんも、気を付けて下さいね」

 二人なら大丈夫だと分かっているけど、それでも不安が全くない訳じゃない。
 だってオーガは大きくて凶暴だって聞いてるし、動きも素早いんだって。

 ノエルさんが呪文を唱えると、青白い網目のような光がノエルさんの足元から奥に向かって進んでいって消えた。

「クリフ、前方二時の方角」

「分かった」

 次の呪文でダンジョン内が明るくなる。
 食堂が四つぐらい入りそうな広さだ。
 オーガは僕たちに気付いて、恐ろしい声を上げた。

「もう一体は別行動か」

「そうみたいだね」

 突進して来たオーガがクリフさんに殴りかかる。それを後ろに下がって避けると、ノエルさんの炎魔法がオーガの顔に当たった。
 顔の半分が変色して、片目を瞑るオーガは、ノエルさんを見た。と、思ったらノエルさんに殴りかかる。
 動きがゴブリンとは比にならないぐらい早い。
 あんなに大きな身体なのに。
 殴っては空振りして、オーガの手が地面にめり込む。でもすぐに起き上がって攻撃をしてくる。

 ノエルさんは守りの魔法を唱えて、オーガの攻撃を防ぐ。
 オーガの脇腹をクリフさんが攻撃する。
 簡単に倒せないと分かったのか、オーガは後ろに下がってクリフさんとノエルさんから距離を取る。

「パラーリジ!」

 フルールを捕獲した時に使った、相手をマヒさせる魔法をノエルさんが唱えると、オーガが大きな身体を震わせた。上手くいったみたいだ。
 モンスターの抵抗が強ければすぐに解けてしまう魔法だってノエルさんは言ってたけど。

 駆け寄ったクリフさんの剣がオーガに振り下ろされる。
 一度、二度、三度、剣が振り下ろされて、オーガは膝から崩れるようにその場に倒れた。
 大きな身体が倒れたから、地面が揺れて砂埃が舞う。

 本当に倒せたかをクリフさんとノエルさんが調べる。

「……仕留めたようだ」

「この個体は麻痺耐性が低めで良かったよ」

「そうだな」

 オーガは強いけど、その中でも強い弱いがあるんだね。
 人もそうなんだから、それもそうか、と一人納得する。

「オーガは倒しづらいのに、倒した後に得られる素材が少ないのが困りものだよね」

「まぁな。とは言え、村に運ぶか」

「その前にダンジョンを閉じないと」

 そう言ってノエルさんが周囲を見渡す。何か探してるのかと、僕も周りを見回す。

「階層はここだけか。じゃあ、オーガを外に出してからアシュリーにダンジョンを閉じてもらおう」

 ノエルさんとクリフさんがオーガを引っ張る。役に立たないけど、僕も引っ張る。



 オーガをダンジョンから引きずり出す。

「戦うのも短期集中で疲弊するけど、運ぶのも疲れるね」

 ノエルさんが言った。同感です。
 僕なんて、全く役に立ってないのに疲れた。

 オーガをダンジョンの入り口から少し離れた場所に運ぶと、今度は僕の番。

 ダンジョンの入り口で屈む。
 両手を地に付け、目を閉じる。
 さっき見たダンジョンがなくなるように、念じる。
 足元が揺れる。
 頭の中でダンジョンが土に埋もれていくのを想像する。
 そこそこに広かったダンジョンが、僕の頭の中でなくなったのと同じぐらいに、僕の正面でボコボコと音がした。
 目を開けると盛り上がった土でダンジョンの入り口はきれいに埋もれて、なくなっていた。
 それと同時に、僕の中に沢山の魔力が流れ混んでくる。
 身体の中が熱くなる。
 ポケットからトラスを取り出して、ダンジョンの魔力をトラスに注いでいく。
 キラ、キラ、とトラスが光る度に僕の中から魔力が抜けていくのは、不思議な感じだ。
 注ぎ終えると、僕の身体の熱さも落ち着いてきた。

「ダンジョンは無事、閉じられたね。
後はフルールが草を食べ終えたかだね」

 フルールがいるだろう場所に行くと、熱心に食べていた。

「まだ結構残っているな」

「そうだね。かと言って置いて行く訳にもいかないしね」

 どうしたものかと思っていたら、手の中のトラスがキラ、と光った。
 途端に草が一斉に萎れた。

「何が起きたの?」

「分からん」

 萎れてしまった草を、フルールは気にせず食べてる。

「あの、トラスが光った後、草が萎れたように見えました」

 クリフさんとノエルさんがトラスを見つめる。
 勿論、トラスは答えないんだけど。

「……この草、魔力を帯びてるって事?」

「……レンレンに調べてもらうか」
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