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第三章 ダンジョンメーカーのお仕事

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 僕を除いた六人で寝ずの番をすると言われてしまった。
 やりますと言ったんだけど、駄目だとクリフさんが言う。

「子供はたっぷり睡眠を取らないと大きくなれない。アシュリーももっと背が伸びたら嬉しいだろう?」

 ……もっと大きくなりたい。
 同じ歳の子たちはみんな、僕より大きかった。

「はい」

「それにこの旅では馬車での移動中にも寝る事が出来るから、大丈夫だ」

 持ってきた毛布にくるまれて横になる。いつもの布団じゃないからなんだか落ち着かなくて、フルールを抱き締めてみた。ふわふわとも違う、ぷるぷるとも違う、柔らかくて滑らかでちょっと沈み込むような触り心地がして、気持ち良い。
 嫌がるかと思ったけど、そのまま抱きしめられたままでいてくれた。



 目が覚めると、フルールは僕の腕の中にはさすがにいなかったけど、近くで草を食べていた。
 大丈夫かな、食べ尽くしたりしてないかな。

 起きた僕に気付いてノエルさんが声をかけられた。

「おはよう、アシュリー」

「おはようございます、ノエルさん」

 フルールのいる方を指差して、「あの辺りにある草は繁殖力が高くて、他の草がみんな枯れてしまうんだって」と言った。

 ほら、コレ、と言ってレンレン様の本を取り出す。

「人は食べられないって書いてあったけど、他の草の為にも刈り取った方が良いって書いてあったから、暇つぶしにむしってたんだよ」

 渡されたレンレン様の本に、抜いておいてもそこから根付く程に繁殖力と生命力が高い為、燃やすのが良い、と書いてある。

「それでまとめておいて燃やそうと思ってたら、フルールが食べ始めてね」

 そうだったんだ。

「だからフルールに、これと同じ草なら好きなだけ食べても良いよって言ったんだ」

 フルールに近付くと、顔を上げて鼻をひくひくさせた。

「美味しい?」

 耳をぴょこぴょことさせる。
 美味しいみたい。

 あたりを見渡すと土がむきだしになってる。
 これ全部その草で、フルールが食べたのかな。

「食べてていいからね」

 僕はその場を離れて、朝食のしたくをした。
 ノエルさんたちも手伝ってくれる事になった。魔法の微調整の特訓をしたいんだって。

「不本意だけど、レンレンの本、結構役に立つよね」

 僕が眠ってからすぐにフルールは草を食べ始めみたいで、一晩中食べていたらしい。

「あの草、根絶やしにしないと直ぐに復活するらしいんだけど」

 みんなの視線がフルールに行く。
 土の上にある草だけじゃなく、根っこの部分も掘り起こして食べている。と言うか土ごと。
 フルールの通った後はあの草があった所で、今は食べ尽されて土が見えている。少し離れたここから見ても分かるぐらいの広さで、繁殖力が高いと言うのに納得する。

「あの草、あの辺り一帯にあったんのに、もうほとんど見えないよ」

「さすがに一晩中食べていればなくなりますね」

 ノエルさんの言葉に魔法師団の人が答える。

「繁殖力が強いって言うだけで根絶やしにして良かったんですか?」

 少しぐらい残しても良かったのかな、と思ってしまうけど。

「あ、それがね」

 嫌だと言いながら、書かれている内容には関心があるみたいで、ノエルさんはレンレン様の本をずっと持っている。
 あの草の事が書かれているページを開いて見せてくれる。

「この草、モンスターが好むらしいんだ」

「モンスターが好む?」

 だからフルールも喜んで食べてるのかな?

「人が生活を営む場所から離れているなら、生えていても問題ないんだけど、さすがにここで繁殖してしまって、モンスターを呼び寄せるエサになると困るからね」

 モンスターだからと言って何でもかんでもやっつけたりはしない。
 メルのような、モンスターだけど大人しい性質のものもいる。
 棲み分けって言うんだって父さんが言っていた。

「今、思い出したんですけど、この前のダンジョンの入り口の辺りにも、この草が生えてませんでしたか?」

 ノエルさんとクリフさんは首を横に振る。

「覚えていないな、すまない」

「この前のダンジョンの周辺にあったのは覚えていないけど、言われて見ればこれまで行ったダンジョンの近くにあったかも知れない」

「調べてみましょうか」

 魔法師団の人の言葉にノエルさんが頷く。

「関係ないと良いんだけど、因果関係があるか調べておこう。
もしこの草が魔力となにかしら関係があるなら、ダンジョン発生を予見出来るかも知れない。そうなれば被害を減らせるだろうし」
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