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第三章 ダンジョンメーカーのお仕事

045-2

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 次のダンジョンが決まった。
 今度のは階層を閉じるんではなくって、ダンジョンごと閉じることになるみたい。
 なんでも、村のすぐ近くに出来てしまって、被害が出始めているとのことだった。
 王室に要請が出ているのと、前回のゴブリンから取れた素材がまだたっぷり余っていると言うことで、ティール様は留守番が決まった。ティール様自身は来たかったみたいで、見送りに来て馬車に乗り込もうとするのを止められていた。

 僕たちを乗せた馬車は順調に進んでる。
 今回は要請を受けているので、僕たち以外もいる。
 御者台に二人の騎士、馬車の中には、魔法師団の人が二人。
 なんだかとっても大掛かりなのは、今回のダンジョンに居着いてしまったモンスターが凶暴なんだろうか?
 この前のゴブリンは家畜や子供を攫うモンスターだ。数が増えるととても厄介だってことは知ってる。
 昔、村の近くに巣を作ったゴブリンが、パフィが丸々と太らせて食べようとしていた家畜を盗んでしまって、怒ったパフィに巣ごと焼き尽くされたってことがあったなぁ。

「あの、今回のダンジョンには凶暴なモンスターがいるんですか?」

「うん。オーガがね、居着いてしまったんだ」

「オーガ!」

 頭から角を生やして、手で木の幹をへし折れる程の怪力だって聞いたことがある。見た事はないけど。

「しかも二体。村に騎士二人と魔法使いを置いて、僕達はダンジョンに入るからね」

 僕とノエルさんとクリフさんはダンジョンに行くってことみたい。

「アシュリーは魔女の加護があるから大丈夫だろうけど、フルールは大丈夫かなぁ」

 ノエルさんの手が伸びてフルールの頭を撫でる。フルールの耳がぴょこ、と揺れる。

「危なそうだったら、アシュリーがフルールを掴んでいれば大丈夫だろう」

 クリフさんの言葉に、そうだね、とノエルさんも頷く。

 話を終えたので、みんな、やりたいことを始める。
 ノエルさんはまた報告書を書き始めた。魔法使いの人達は魔法書を読んでる。
 クリフさんはまた、武器の手入れを始めた。

 今回から馬車の中に簡単なテーブルが用意されたので、その上に石の台を置く。脚が取り外せるテーブルで、片付ければ馬車の中が広く使える。
 それから、大きめの箱。箱の中は氷室と同じように冷たい状態が維持されるようになっている。氷室箱、と呼ぶことにした。
 中くらいの箱には僕の調理器具。ラズロさんが色々と用意してくれたお陰で、旅用なのにとっても使い心地が良さそうなものが揃ってる。こっちは道具箱。
 道具箱からフライパンを取り出して石の上にのせておく。まな板と包丁と、フライパンにのせる蓋を順番に取り出す。氷室箱からベーコン。塩と胡椒も持って来た。蜂蜜も。
 蓋のない箱の中には野菜が入ってる。箱からイモを取り出して皮をむく。僕の手でも持ちやすいようにあつらえてもらった包丁で、とても使いやすい。
 落ちた皮はフルールが横でショリショリ音をさせながら食べていく。ノエルさんとクリフさんには見慣れた光景だけど、魔法師団の人たちは初めて見るからか、フルールを見てる。
 まな板でイモをひと口大に切って、ベーコンを薄切りにしておく。

 オイルを少し垂らしたフライパンを火の魔法で温める。
 十分に温まったかな、と言うところでイモをフライパンに入れると、じゅわっと音がした。
 木べらで炒めて、イモの表面が透けてきたのを確認してから水をちょっと注いで蓋をする。シュワシュワという音に反応したのか、魔法師団の人のおなかが鳴った。

「すみません、良い匂いに釣られてしまって」

 慌てて謝る部下に、ノエルさんが分かる分かる、と相槌をうつ。
 道具箱から鍋と、フォーク木のボウル。氷室箱から卵を取り出す。鍋を石の台にのせ、木のボウルに卵を割り入れる。フルールが僕の袖を引っ張るので、卵の殻をあげる。
 ボウルの中の卵をフォークで潰して卵をかき混ぜて溶きほぐしておく。

 鍋にはった水を沸かしている間に、イモの様子を見る。
 十分に中まで火が通ったみたいだったから、そこに切っておいたベーコンを入れて炒めて、塩と胡椒をかけて味をつける。
 鍋の中もお水が沸いたので、そこにときほぐしておいた卵を入れると、ふわふわと卵が浮いてきた。塩と胡椒をかける。

 ノエルさんたちが調理している間に食器を出してくれたので、出来たばかりの料理を皿に並べていく。あとスープも。

「旅先で温かい料理を食べられるって、凄いですね」

「そうなんだよ。僕もアシュリーみたいになりたくて練習してるんだけど、どうしても火力が強くなりすぎちゃうんだ……」

 嘆くノエルさんを、「仕方ないですよ、副長は規格外ですから」と、魔法師団の人が慰めていた。

 出来上がった料理を僕たちが先に食べて、御者台の二人とノエルさんとクリフさんが交代して食べる。
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