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第三章 ダンジョンメーカーのお仕事

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 少ししてパフィとアマーリアーナ様が水晶を持って来てくれた。……と言うか、大蛇が口に咥えていた。飲み込んでしまったりしないよね?

『受け取れ』

 慌てて立ち上がって、アマーリアーナ様から水晶を受け取る。
 手の中でキラ、キラ、と水晶が光る。

「これが魔力水晶ですかー、初めて拝見しました」

 近づいてきたティール様が、僕の手にある水晶を覗き込み、ほほー、と声を出す。ノエルさんもその横に立つ。

「僕も初めて見る。魔力の結晶と言うだけあって、凄い力を感じるね。魔石みたいに色がないんだね」

 僕はてっきり、ティール様は水晶に触りたがるだろうと思っていたんだけど、手を伸ばしてはきたものの、触ろうとしない。
 ティール様を見ると、眉をハの字にしていた。

「触りたいんですけどねぇ……」

『もうまじないをかけてあるから無理よ』とアマーリアーナ様が答える。

『箱に入れようと何しようと、アマーリアーナと私がまじないを解かぬ限り、魔力水晶にはアシュリーしか触れん』

 そうなのか。
 手の中の水晶を撫でる。ひんやりとして、つるりとしてる。
 呆れた声で『動物ではないぞ』とパフィが言う。

「うん、そうなんだけど、なんとなく」

 僕は気になっていたことを口にした。

「どうやって側においておけば良いの?」

 料理する時とか、風呂に入るとか、寝るときとか、どうすれば良いんだろう?

『説明するからまずは魔力を注いでおけ』

「うん」

 目覚めてから身体が少し熱いなとは思っていたけど、もしかしてこれがダンジョンを閉じたときに取り込んでしまった魔力なんだろうか。

『ダンジョンの階層を閉じる際におまえは魔力を使用している。空腹はその証だ。
その後におまえの中にダンジョンの魔力が流れ込んだんだろうが、おまえの魔力ではないから吸収出来ないからな。
顔が赤いのは体内で魔力が暴れて熱が出ていたんだろう』

 ふむふむ。

 手の中にある水晶に少しずつ魔力を注ぐ。
 注いでいくうちに身体の熱っぽさも取れてきた。

『とりあえずポケットにでも入れておけ』

 そんなに雑な扱いで壊れたりしないのかな?

『箱に入れても駄目だと言ったでしょう?』とアマーリアーナ様。

 頷く。

『水晶を持っている時はね、アシュリーから他のものや人に触れる事は出来るけど、反対は出来ないのよ。床もね』

 ……床?

『割れないって事だ。おまえが手で持って叩きつけない限りはな』

「そんなことしないよ?!」

『分かってる。ものの例えだ。
水晶を持つ限りおまえを害する事は出来ない』

「凄いですねー、古の魔女二人による絶大な加護! 私もお願いしたいぐらいです」

 そう言ってティール様はにこにこ笑う。
 ティール様って、大らかだなぁ。

『勝手について来たりはしないからな』

「分かった」

 ポケットにそっと水晶を入れて、服の上から撫でる。
 見えないけど、ポケットの中でキラ、と光ったような気がした。

「よろしくね、トラス」

『まぁ、水晶に名前を付けているの?』

 アマーリアーナ様に驚かれてしまった。
 大蛇の目はただでさえまんまるなのに、更に大きくなってまんまるになっていた。

「なんだか愛着がわいてしまって」

 呆れ顔のパフィにノエルさんが苦笑いを浮かべるけど気にしない。
 名前があるほうが、大切にしようって思えるし。

 いつもポケットに入れられるのも窮屈だろうし、魔力を吸収して大きくもなるだろうし、なにか考えないとなぁ。
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