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第三章 ダンジョンメーカーのお仕事

043-5

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 本来の目的を果たす為、下の層に下りる。
 そこにも少しだけゴブリンがいたけど、それもノエルさんとクリフさんのお陰で僕とティール様は無傷で済んだ。
 ほとんどのゴブリンは、上の層に上がって来て、ノエルさんたちと戦ったんだと思う。

 ここのダンジョンは二つの階層で出来ていて、適度な大きさがあって、下の層には湧き水もあった。だからゴブリンに好まれたみたい。
 近くの村から盗んだんだろうか、家畜と見られる大きな骨があちこちに転がっているし、生臭いって言うか、獣臭いって言うか、早くここから去りたくなるような臭いがする。思わず鼻をつまんでしまう。

「ゴブリンが更に数を増やしてここから溢れたら、近くの村は危険だったろうね」

 ノエルさんはローブについた埃を手で払う。

「間に合って良かったな」

 クリフさんも汚れを拭き取ると、剣を鞘に納める。
 ティール様は楽しそうにゴブリンの死骸をまた穴に放り込んでいた。
 ……あんなに送って、魔術師団の人たち、大丈夫なのかな……?

 ダンジョン内を見回して、閉じてしまっても問題ない事を確かめる。ダンジョンとは言っても、広い空間がそこにあるだけだったから、すぐに確認は済んだ。

「上の階層には研磨石があるから、この階層だけ閉じようか。
ここを閉じればゴブリンも巣を作り難いだろうし」

「そうだな」

 ティール様がゴブリンを全部穴に入れ終えたので、上の階層に上がる。

 皆の目が僕に向けられる。
 今度は僕の番みたい。

 しゃがんで、土に両手を付ける。
 さっき目にした下の階層を思い出しながら、ナインさんに教わった通り、なくなるように念じる。
 足元から地震のような揺れがした後、目の前にあった下に続く階段が、下から盛り上がってきた土に埋まってなくなった。

「おぉー、凄い!」

 ノエルさんとティール様が拍手する。

「分かってはいたけど、本当になくなったのを見ると感動するね」

「稀有なスキルですねぇ、本当に」

 クリフさんの手が伸びてきて僕を立ち上がらせてくれた。魔法で手を洗って、乾かす。

「大丈夫か?」

 ほら、と言って布袋をくれた。

「ありがとうございます」

 ダンジョンを作った時、新しい階層を作った時、どちらも終わった後におなが空いた。
 ダンジョンの階層を閉じるのも同じだった。

 布袋の紐をゆるめると、中には干した果物が入っていた。一つ取り出して口に放り込む。
 甘くて、ちょっとだけすっぱい。

「帰ったら屋台で串焼きいっぱい買おうね」

 ノエルさんに頭を撫でられた。

「あ、それでしたら是非、アシュリーに揚げ菓子をお礼として買いたいのですが」

 にこにこしながらティール様が言う。

「でも、揚げ菓子は高いですよ?」

「屋台の中ではまぁまぁしますけど、大丈夫ですよ。
アシュリーのお陰で素材が大量に手に入りましたし」

「素材が手に入ったのは僕達のお陰なんじゃないの?」

 不満気なノエルさんに、ティール様は笑顔で答える。

「二人は礼を必要としない程持っているでしょう。
いくらスキルがあって、私が守ってるとは言ったって、こんなか弱いアシュリーをダンジョンに連れて来るのは本来なら論外です。
死骸は気持ち悪いですし、臭いし、断末魔は不快だし、怪我はしませんけど襲われましたし」

「珍しくティールの発言が正論で言い返せない」

 悔しそうな顔をするノエルさんをクリフさんが呆れたように見る。

「馬鹿な事を言ってないで帰るぞ」

 クリフさんがひょいと僕を抱き上げてダンジョンの出口に向かう。
 ノエルさんとティール様が慌てて追いかけて来る。

「大丈夫だとは思うが、何か異変、気になる事があったら遠慮せず言うんだぞ」

 はい、とクリフさんに答える。

 無事、ダンジョンを閉じる事が出来て良かった。
 ダンジョンを出た僕は、何故だかとても眠たくなってしまって、 帰りの馬車の中で眠った。
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