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第三章 ダンジョンメーカーのお仕事

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 ザックさんに言われたこともあって、僕はまた、城から出ちゃ駄目ってことになった。
 さすがに僕もみんなに迷惑をかけたくないから、城にいたほうが良いなって思ってる。

 ラズロさんが言うには、緊迫した空気の中でやけに厳重に守られた平民の子がいて、その子供がギルドに出入りするたびに何かが変わっていくのを見て気付いたんだろうって。

『さて、第五層に行くか』

「うん」

 パフィに言われて作っておいた第五層は、何もない空っぽの層。ティール様からまた術符をもらうのかと思ったら、それはいらないんだって。

 空っぽの第五層に下りて、真ん中に立って祈るみたいに手を重ね合わせる。
 僕の魔力を層に吸収させる為に、念じる。
 ひっぱられていくみたいに、魔力が身体から出ていくのが分かる。
 第五層が出来てから、毎日この作業を繰り返してる。
 空っぽになるまで魔力を注ぎ込んで十日程。

『目を開けて良いぞ』

 言われて目を開けると、目の前にキラキラと光る物が浮かんでた。
 第五層の中はずっと昼間の状態にしてる。それから、僕とパフィ以外は入れない。パフィがおまじないをかけていた。

「パフィ、これが水晶?」

『水晶の核になる物だ。明日からはこの核に向けて魔力を注げ』

「分かった」

 目の前に浮かぶ水晶の核は、キラ、キラ、と光る。

『腹が空いたぞ』

「今朝はオムレツにしようか」

 階段を上りながら朝食の話をする。
 オムレツだけだとパフィが不満を言うので、先に言っておく。

「ベーコンも付けるね」

『厚切りか?』

「厚くはないけど、昨日ラズロさんが胡椒の代わりに塊を持ってきてくれたから、四枚は付くよ」

 胡椒はたまにラズロさんがギルドに卸しに行ってる。
 それで食材を買ってきてくれる。だから今、ベーコンの塊がある。

『五枚だな』

「はいはい」

 僕も三枚付けよう。

 第五層に魔力を注ぐと身体の中が空っぽになって、おなかが空く。
 そんな僕に、ラズロさんや城の人達が、外に出た時にお土産を買って来てくれるようになった。
 焼いた肉やそのまま食べられる乾燥した果物とか。故郷から届いたって言う珍しいものとか。

 あまりにくれるものだから申し訳なく思っていたら、ノエルさんが笑って、「感謝の印だからもらうと良いよ」って言った。
 ノエルさんが言うには、詳しく分からなくても、僕がなにかしらしてるって事を城の皆も分かってて、料理やなんやらで魔法を使っていたりもするから、おなかが空くだろうと買って来てくれるんだって。

『思うよりも人は見ているものだ』

 頷いた。
 僕が思うように、皆色々思っているし、感じてる。
 第二王子のことがあって、ものすごく雰囲気が悪くって。
 空気がぴりぴりするって言うのか。
 最近はそれがなくなってきてた。でも、北と南の国の話を聞いた頃から、また少し、緊張してるのが伝わってくる。

『どの国にも、御し難い屑はいるものだ。
まぁ、この国は今の所大丈夫だろう。自浄作用が働いているからな』

「自浄作用?」

『前を向いてるって事だ』

 全員ではなくても、沢山の人たちが、この国のこれからのことを考えてくれてるのは、良いことだと思う。
 きっと、上手くいく。
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