167 / 271
第三章 ダンジョンメーカーのお仕事
040-5
しおりを挟む
食堂に戻った僕は、胡椒の粒を房から切り分けていく。
「お? 今度は何やってんだ?」
ラズロさんがやって来た。
「胡椒の実が出来上がったので、バラバラにして乾燥させるんですよ」
「いやいや、昨日種届いてそんな……」
僕の手元を覗き込み、パフィを見て、「すっげぇなぁ、魔女ってどうなってんだ?」と呟く。
驚いてるラズロさんをチラッと見てから、パフィは身体を丸めて寝てしまった。
「オレも手伝うぞ」
カゴにたっぷり入った胡椒の実をラズロさんと二人で茎から外していく。
赤い実と緑の実の違いを聞かれたので、パフィに教わったことをそのまま伝えると、感心したみたいで、見比べたりしていた。
「面白ぇなぁ。この胡椒も、ギルドに卸すのか?」
「うーん、どうでしょう。乾燥させるのに時間がかかるし、育つのにパフィの持つ時間を使うみたいです」
『それなら私のを使えば良いわ』
聞いたことのある声がして顔を上げると、食堂のまん中に白と黒の大蛇がとぐろを巻いていた。アマーリアーナ様だ。いつの間に?
パフィを見ると、気付いてたのか、起き上がってアマーリアーナ様の大蛇を見ていた。
『何しに来た、アマーリアーナ』
大蛇の口から赤く二又に分かれた舌がチロチロと飛び出す。
『ご挨拶ね、パシュパフィッツェ。
進捗具合を確かめに来たら、時間の話をしていたから加わっただけよ?』
古の魔女。しかもどっちも使い魔の姿。
なんと言うか、すごい図だよね。
隣を見るとラズロさんが固まってた。
『中は確認出来ていないけれど、なかなか良いダンジョンが出来たようね。さすがパシュパフィッツェと言うべきかしらね』
『確認が済んだならさっさと帰れ』
『怖い事』
楽しそう?に身体を揺らす大蛇。
もしかしてアレ、笑ってるのかなぁ。
今更なんだけど、なんでアマーリアーナ様の使い魔って大蛇なんだろう?
『催促に来た訳でも邪魔しに来た訳でもないわ。本当に具合を見に来ただけだから。
でも、そうね。せっかく来たのだし、お願いばかりも申し訳ないから私の持つ時をあのダンジョンにあげるわ』
『……どういうつもりだ』
『そのままよ。そうだわ、私も魔女だから薬を作るのよ。必要になったら生薬を分けてもらえたら嬉しいわ』
アマーリアーナ様が僕を見て言う。
『パフィが良いなら』
『構わん、たっぷり使ってこの年増を戦々恐々とさせてやれ』
ほほほほほほ、とアマーリアーナ様と言うか、大蛇が笑う。
うん、慣れたつもりでいたけど、やっぱりちょっとこの状況はすごいかも。
『さっそくいただいて良いかしら?』
カゴの中から赤い実と緑の実を取り出してアマーリアーナ様の前に行く。
身を乗り出した大蛇は、首を左右に振って僕の手の中の胡椒の実を確認する。
『魔力を宿した実と言うのは、初めて見るわ。
本当に面白い』
そう言って僕の手から実を口に咥えるようにして受け取ると、そのまま飲み込んだ。
……え、飲むの?
『ではね』
しっぽをガラガラと鳴らし、大蛇──アマーリアーナ様は消えた。
「なんだったんだろうね?」
パフィに訊く。
『言葉の通りだ。アマーリアーナはおまえに時間をくれた』
僕に時間?
『早く胡椒を作れ。まったくあんなに渡しおって』
ぶつぶつ言い出したパフィ。
「パフィこそ、何が食べたいか決まったの?」
『そうだった! 胡椒をこれでもかとかけて辛くなった焼いた鶏肉がよいぞ』
あ、美味しそう。
「じゃあそれにしよう」
『うむ。楽しみだ』
はぐらかしてるけど、魔女の時間と言うのは、実は貴重なものなんじゃないかな。
でも、言いたくなさそうだから、そのままにしておこう。いつか教えてくれるかも知れないし。
「お? 今度は何やってんだ?」
ラズロさんがやって来た。
「胡椒の実が出来上がったので、バラバラにして乾燥させるんですよ」
「いやいや、昨日種届いてそんな……」
僕の手元を覗き込み、パフィを見て、「すっげぇなぁ、魔女ってどうなってんだ?」と呟く。
驚いてるラズロさんをチラッと見てから、パフィは身体を丸めて寝てしまった。
「オレも手伝うぞ」
カゴにたっぷり入った胡椒の実をラズロさんと二人で茎から外していく。
赤い実と緑の実の違いを聞かれたので、パフィに教わったことをそのまま伝えると、感心したみたいで、見比べたりしていた。
「面白ぇなぁ。この胡椒も、ギルドに卸すのか?」
「うーん、どうでしょう。乾燥させるのに時間がかかるし、育つのにパフィの持つ時間を使うみたいです」
『それなら私のを使えば良いわ』
聞いたことのある声がして顔を上げると、食堂のまん中に白と黒の大蛇がとぐろを巻いていた。アマーリアーナ様だ。いつの間に?
パフィを見ると、気付いてたのか、起き上がってアマーリアーナ様の大蛇を見ていた。
『何しに来た、アマーリアーナ』
大蛇の口から赤く二又に分かれた舌がチロチロと飛び出す。
『ご挨拶ね、パシュパフィッツェ。
進捗具合を確かめに来たら、時間の話をしていたから加わっただけよ?』
古の魔女。しかもどっちも使い魔の姿。
なんと言うか、すごい図だよね。
隣を見るとラズロさんが固まってた。
『中は確認出来ていないけれど、なかなか良いダンジョンが出来たようね。さすがパシュパフィッツェと言うべきかしらね』
『確認が済んだならさっさと帰れ』
『怖い事』
楽しそう?に身体を揺らす大蛇。
もしかしてアレ、笑ってるのかなぁ。
今更なんだけど、なんでアマーリアーナ様の使い魔って大蛇なんだろう?
『催促に来た訳でも邪魔しに来た訳でもないわ。本当に具合を見に来ただけだから。
でも、そうね。せっかく来たのだし、お願いばかりも申し訳ないから私の持つ時をあのダンジョンにあげるわ』
『……どういうつもりだ』
『そのままよ。そうだわ、私も魔女だから薬を作るのよ。必要になったら生薬を分けてもらえたら嬉しいわ』
アマーリアーナ様が僕を見て言う。
『パフィが良いなら』
『構わん、たっぷり使ってこの年増を戦々恐々とさせてやれ』
ほほほほほほ、とアマーリアーナ様と言うか、大蛇が笑う。
うん、慣れたつもりでいたけど、やっぱりちょっとこの状況はすごいかも。
『さっそくいただいて良いかしら?』
カゴの中から赤い実と緑の実を取り出してアマーリアーナ様の前に行く。
身を乗り出した大蛇は、首を左右に振って僕の手の中の胡椒の実を確認する。
『魔力を宿した実と言うのは、初めて見るわ。
本当に面白い』
そう言って僕の手から実を口に咥えるようにして受け取ると、そのまま飲み込んだ。
……え、飲むの?
『ではね』
しっぽをガラガラと鳴らし、大蛇──アマーリアーナ様は消えた。
「なんだったんだろうね?」
パフィに訊く。
『言葉の通りだ。アマーリアーナはおまえに時間をくれた』
僕に時間?
『早く胡椒を作れ。まったくあんなに渡しおって』
ぶつぶつ言い出したパフィ。
「パフィこそ、何が食べたいか決まったの?」
『そうだった! 胡椒をこれでもかとかけて辛くなった焼いた鶏肉がよいぞ』
あ、美味しそう。
「じゃあそれにしよう」
『うむ。楽しみだ』
はぐらかしてるけど、魔女の時間と言うのは、実は貴重なものなんじゃないかな。
でも、言いたくなさそうだから、そのままにしておこう。いつか教えてくれるかも知れないし。
2
お気に入りに追加
348
あなたにおすすめの小説
料理を作って異世界改革
高坂ナツキ
ファンタジー
「ふむ名前は狭間真人か。喜べ、お前は神に選ばれた」
目が覚めると謎の白い空間で人型の発行体にそう語りかけられた。
「まあ、お前にやってもらいたいのは簡単だ。異世界で料理の技術をばらまいてほしいのさ」
記憶のない俺に神を名乗る謎の発行体はそう続ける。
いやいや、記憶もないのにどうやって料理の技術を広めるのか?
まあ、でもやることもないし、困ってる人がいるならやってみてもいいか。
そう決めたものの、ゼロから料理の技術を広めるのは大変で……。
善人でも悪人でもないという理由で神様に転生させられてしまった主人公。
神様からいろいろとチートをもらったものの、転生した世界は料理という概念自体が存在しない世界。
しかも、神様からもらったチートは調味料はいくらでも手に入るが食材が無限に手に入るわけではなく……。
現地で出会った少年少女と協力して様々な料理を作っていくが、果たして神様に依頼されたようにこの世界に料理の知識を広げることは可能なのか。
転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)
SHO
ファンタジー
15歳になり、女神からの神託の儀で魔法使い(ウィザード)のジョブを授かった少年ショーンは、幼馴染で剣闘士(ソードファイター)のジョブを授かったデライラと共に、冒険者になるべく街に出た。
しかし、着々と実績を上げていくデライラとは正反対に、ショーンはまともに魔法を発動する事すら出来ない。
相棒のデライラからは愛想を尽かされ、他の冒険者たちからも孤立していくショーンのたった一つの心の拠り所は、森で助けた黒ウサギのノワールだった。
そんなある日、ショーンに悲劇が襲い掛かる。しかしその悲劇が、彼の人生を一変させた。
無双あり、ザマァあり、復讐あり、もふもふありの大冒険、いざ開幕!
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
テイマーズライフ ~ダンジョン制覇が目的ではなく、ペットを育てるためだけに潜ってしまうテイマーさんの、苦しくも楽しい異世界生活~
はらくろ
ファンタジー
時は二十二世紀。沢山のユーザーに愛されていた、VRMMORPGファンタズマル・ワールズ・オンラインに、一人のディープなゲーマーさんがいた。そのゲーマーさんは、豊富な追体験ができるコンテンツには目もくれず、日々、ペットを育てることに没頭している。ある日突然ゲーマーさんは、ゲームに似た異世界へ転移してしまう。ゲーマーさんははたして、どうなってしまうのか?
転生テイマー、異世界生活を楽しむ
さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。
内容がどんどんかけ離れていくので…
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
ありきたりな転生ものの予定です。
主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。
一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。
まっ、なんとかなるっしょ。
人間だった竜人の番は、生まれ変わってエルフになったので、大好きなお父さんと暮らします
吉野屋
ファンタジー
竜人国の皇太子の番として預言者に予言され妃になるため城に入った人間のシロアナだが、皇太子は人間の番と言う事実が受け入れられず、超塩対応だった。シロアナはそれならば人間の国へ帰りたいと思っていたが、イラつく皇太子の不手際のせいであっさり死んでしまった(人は竜人に比べてとても脆い存在)。
魂に傷を負った娘は、エルフの娘に生まれ変わる。
次の身体の父親はエルフの最高位の大魔術師を退き、妻が命と引き換えに生んだ娘と森で暮らす事を選んだ男だった。
【完結したお話を現在改稿中です。改稿しだい順次お話しをUPして行きます】
異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる