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第三章 ダンジョンメーカーのお仕事

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 魔法薬学の塔の近くに、ダンジョンを作った。
 作る場所、大きさ、ダンジョン内をどんな風に作りたいかが細かく書かれた紙を持ったティール様に指示されながら。
 言われた通りにダンジョンの環境を整えているけど、次から次へ指示がくるものだから、一体どれだけ書かれているのだろうかと疑問に思ってしまう。
 そんな僕の視線に気付いて、ティール様が困ったように笑う。

「すみません、本当に。指定が細かいですよね」

「いえ、こんなに色々と整えなくちゃいけないぐらい、難しい場所で薬草は育つんだなって思ったんです」

 パフィの元には色んな薬草があって、それを僕はたまにもらってた。その薬草が一体どれだけ貴重なものなのか、全然知らずに。
 だからこうして、空気が薄めだとか、木は少なめだとか、朝と夜のダンジョン内の暖かさを変えたい、と言われて初めて、北の国から仕入れる理由が分かった。

 しかも、このダンジョンでは階層を十も作る。裏庭のダンジョンと違って、魔力を使って草木を作るのではなくて、魔法薬学の人達が育てるのだそう。
 育成方法はもう知ってて、種も持っているんだって。研究の為に持っていたけど、使える日がくるなんて、と噂のレンレンさんが興奮して大変だったって、ノエルさんが呟いてた。
 ダンジョンを維持する為の魔力供給は、魔法薬学の人たちがするみたい。

「うーん、ここまで徹底する必要はないと思われるので、単純にレンレンの趣味と言うか、探究心と申しますか……まぁ、分からなくもないんですけどね。
いずれにせよ、面倒をかけてすみません」

 ティール様に謝られて、そんな事ないです、と謝っていたら、ずっとお互いに謝り続けてしまって、ラズロさんにいい加減やめとけ、って呆れられてしまった。

 一日置きに作っていって、二週間程かけて、薬草ダンジョン(ラズロさんが呼び始めて、その名前で定着した。レンレンさんはもっと別の名前が良いと言ってるみたい)は完成する。
 終わる頃には、パフィ、帰って来るのかな。



 ギルドに作った海に多くの人たちが出入りするようになって、デボラさんの店が再開したんだって。
 北の国から魚が入らなくなって、このままじゃ店を畳むしかないって、らしくない様子で言ってたとラズロさんから聞いてたから、ほっとした。

 海で魚を獲るのに使う網が必要になって、その網を海で働く男の人の家族が作ってると言う話も聞いた。
 網に使われるのは麻や木綿の糸だったり、藁だったり。普段なら捨ててしまうような糸を縒り集めて作る。なんだか楽しそう。
 働く場所が出来て、働く人が増えて、また少し王都が活気を取り戻してきてるんだって、ラズロさんたちの話を通して知って、嬉しくなる。

 僕も買い出しに行きたいんだけど、食堂を利用する人が増えたのもあって仕込みに忙しくて、城から出られない。
 あと、何があるか分からないから、一人で出かけては駄目だとパフィに言われてる。

 薬草ダンジョンが作り終えたら、裏庭のダンジョンの第二層を夏に変えたい。
 夏のあの暑さの中でも香辛料になる木は育つらしいとナインさんから教えてもらった。
 それから、香辛料も色々あるんだと初めて知った。
 目移りしてしまうけど、使い勝手が良さそうなものをまずは育ててみることにした。
 その為の苗とか苗を買ってもらえることになったのだけど、なんだか申し訳ない気持ちになってしまう。
 高いんじゃないかなぁ……。

「アシュリー、心配ない」

 隣で香辛料の本を読んでいたナインさんが言った。

「一度育つ、後はダンジョンの魔力、育ててくれる」

 ……あ、そうか。
 第一の春の階層ではずっとスオウの花が咲いてる。ダンジョン内の魔力を使って。

「ダンジョンの魔力で最初から作れたら便利ですけど、そんなことは出来るんでしょうか?」

 ナインさんは首を横に振る。

「無理。一度でも触れないと、再現出来ない。
実がなるようなもの、もっと難しい。
種から苗、苗から幼木、成木、花、実、一連の流れ必要」

「そう簡単にはいかないんですね」

 とは言っても、一度育てられたなら次からはダンジョンが育ててくれると言うのだし、それはとてもとても、凄いことなのだから、頑張ろう、うん。

「僕も、一緒に育てる」

 うん、とナインさんが力強く頷いた。

「ありがとうございます、ナインさん」

「アシュリーのごはん、もっと美味しくなる、とっても幸せ」

 ここに来たばっかりの時はあんなに痩せていたナインさんだけど、今はそんなの分からないぐらいになった。
 僕の作る料理を美味しいと言って食べてくれる。
 ちょっとノエルさんっぽくなってきたような気もしないけど、美味しいものを食べると幸せになるのは同感です。
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