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第三章 ダンジョンメーカーのお仕事

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 ティール様がすぐに伝えたみたいで、フルールを見に殿下がやって来た。

「いつ来てもアシュリーの側にいるのは知っていたが、うさぎをテイムしているのかと思っていた」

 殿下はフルールの身体を触りながら、あちこちを観察していく。フルールはされるがままになってる。スライムだからなのか、割と気にしないみたい。

「スライムの擬態はこれ程までに凄いのか?」

 一緒に来たトキア様が答える。

「フルールの場合、テイム時に使用した核が良かったのかも知れません。
スライムに擬態をさせるテイマーは多いですが、ウサギにした例を見ませんし、これまでの経過を見る限りでは大変燃費が悪いように見受けられます」

 ふむ、と答えて殿下はフルールを撫でる。

「フルールの消化吸収速度が他のスライムより早い事に関しては確証は得られていない、と言う事か」

 トキア様ははい、と答えて頷く。

「調査をお命じになりますか?」

 殿下はフルールを撫でながら頷く。

「当面フルールに対応してもらうとしても、フルールだけに頼るのは良くない。何か起きた時の為にも新しいスライムの事を考えておく必要がある。その為にも調査は開始して欲しい」

「御意に」

 立ち上がり、ティール様の方を見て殿下が許可する、と言った。ありがとうございます、とお礼を言ってティール様はお辞儀をして、食堂から出て行った。ナインさんも後を追って出て行く。

「近頃発生した問題だったが、フルールによって展望が見えてきた事は僥倖だった。何の対策もせず課税を止めたとしても費用は発生し続ける。それは結局別の税に繋がるだけだ。補填するにしても今の我が国の財政状況的にはそれは厳しい。
アシュリーには何から何まで頼ってしまっている。どう礼をすれば良いのか……」

「いえ、僕は何もしていませんし、フルールがお腹いっぱいに食べられるのは僕としても嬉しいことなので、気にしないで下さい」

「無欲も良いが、あまりにそうだと利用されるだけの存在になってしまうぞ?」

 そう言われても、欲しいものが特にないから、困ってしまう。

「とりあえず、毎月の手当をお上げになってはいかがでしょう」

 トキア様の言葉に殿下が頷く。

「それはすぐにでも手配して欲しい。この食堂を利用する者達は多かろう。それを二人で賄っている。それだけでも増額に値する」

「それは上げていただきました」

 僕の答えに殿下は呆れ顔になる。

「そんなものは黙っておれば良いのに、正直者は損をするぞ?」

「嘘を吐くのは嫌です」

 やれやれ、と言う顔をした殿下はトキア様を見る。トキア様が笑って、「長所と短所は表裏一体にございますれば」と答える。

『香辛料の種をねだれば良いのに、おまえは馬鹿だな』

 突然パフィが現れたけど、もうみんな驚かない。慣れてきたみたい。良いのか悪いのか分からないけど。

「香辛料?」と殿下が聞き返す。

『香辛料が入っているかどうかで美味さが変わるからな、安い素材を仕入れ、香辛料を取り入れているからこそ、この食堂の料理は美味い。手間も惜しまないしな』

「香辛料を裏庭のダンジョンで育てると言う事ですか?」

『そうだ。今は記憶持ちがその育成方法を調べているようだが、そうそう上手くはいくまい。その都度香辛料の種を購入するのは高くつく。その援助をしてやってくれ』

「それは勿論」

 良いのかな。とても助かるけど。高いんじゃないのかな。
 落ち着かない気持ちでいたら、隣にいたラズロさんが言った。

「余ったものはギルドに回して国庫に還元すれば良いですか?」

「それは大変ありがたい」

 殿下が笑顔で頷いた。

 足元で葉っぱを食べているフルールを見ると、フルールも顔を上げた。食べるのは止めないけど。

「フルールのお陰で、香辛料を育てられそうだよ」

 ぴょこぴょこ、とフルールの耳が揺れた。
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