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第三章 ダンジョンメーカーのお仕事

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 いつもと同じ時間に目覚めた朝。
 タライに程々の水をはって、タオルを濡らして絞り、顔を拭く。
 着替えて食堂に入ると、ラズロさんがいた。昨日は飲むぞー!と、張り切って出掛けて行ったからさすがに今朝は二日酔いかと思っていた。
 そんな僕の考えを見透かしたのか、ラズロさんがふふん、と得意げに笑う。

「ちゃーんと調整しておりますよー」

 ラズロさんはここの所、毎晩飲みに行ってはいるものの、翌日にあんまりお酒が残っていない気がする。
 多分だけど、この前僕が花を買おうとした時と同じで、一晩で沢山のお酒を飲むんじゃなくて、毎晩色んなお店で少しずつ飲むことにしたんじゃないかと思う。
 ラズロさん一人で店を支えられる、というのはないだろうけど、塵も積もればと言う言葉もあるみたいだし、きっと意味はあると思う。
 僕にも出来ることがあると良いんだけど。

「それに今日は、この前作ったダンジョンに浅瀬を作るんだろう?」

「はい」

「世の中が安定するまではオレたちが魚介を買わないとな! そうすることで金が循環していくんだぞ、アシュリー」

 ……あ、そうだ。ラズロさんも魚介が好きだった。
 前に祭だ、って言って沢山魚や貝を買ってみんなで裏庭で食べたのを思い出す。

「パフィも食べたがっていたので、しばらく魚介尽くしになると思います」

「うおー! 魔女様、気が合うなー!」

 二人だけで食べ尽くしそうだなぁ……。



 ナインさんとティール様、ノエルさん、クリフさんがやって来た。
 今回はトキア様たちは来ない。
 僕はマグロと同調してるパフィをだっこしながら、この前作ったダンジョンのある場所へと向かう。
 隣を歩くナインさんは、海とダンジョンを繋げる術符を作るのは初めてだったけど、前世でも魔術師だったからか、作成に苦労しなかったみたいで、ティール様が苦笑いを浮かべていた。
 教える事があまりないんです、って言ってた。

「浅瀬出来たら、アシュリーに美味しいもの、作ってもらう。楽しみ」

 どうやらナインさんも魚介が好きみたい?
 冗談ではなく、魚介尽くしの日々になりそうです。

「そうなると、もっと色んな食べ方が知りたくなります」

 僕は魚介の食べかたを知らないから、どんな調理方法があるのか知りたいな。
 宵鍋のザックさんなら知ってるだろうけど、お店のメニューをいつもいつも教えてもらうのもどうなのかな、ってちょっと思ってて。

『頼んだらどうだ? 王宮の蔵書に一つや二つあるだろう』

 ナインさんの隣を歩くティール様が頷く。

「あぁ、それは良いですね。アシュリー君も以前に比べて色々と読めるようになってきましたからね」

 僕はまた、ティール様から勉強を教わり始めている。
 少し離れていた間に、ナインさんは僕の何倍も出来るようになっていたけど。
 僕は僕、ナインさんはナインさん。
 焦らず本を読んでる。日記は、実はあまり書けてない。
 何を書いたらいいのか分からないから、いつもメルとコッコは今日も元気だったとか、今日のメニューはこれにした、とか、そんなことしか書けていない。
 読むほうが好き。

「帰ったら許可を取りましょう」

「良いんでしょうか? 僕は食堂で働く者なのに」

 本来なら、こうして字を教えてもらったりすることだって、特別扱いを受けているのだと分かってる。

「何も問題ないよ。料理人が料理の本を読みたがる事を嫌がるようなおかしな人間はいないから」

 前を歩いていたノエルさんが振り返って答えてくれた。

「はい、ありがとうございます」

 パフィは鮮度だって言ってたけど、鮮度が良くなくても魚介を美味しく食べられる調理方法を、僕は知りたかったりする。
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