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第三章 ダンジョンメーカーのお仕事

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 会議から戻ったパフィは、ノエルさんとティール様、殿下とナインさん、トキア様を連れて来た。
 僕とラズロさんは慌ててコーヒーを淹れる。

『始めよ』

 パフィの言葉に殿下が頷いた。

「会議で決定した事からまず、アシュリーと」

 殿下の視線がラズロさんに向けられる。
 ラズロさんは丁寧にお辞儀して「ラズロと申します」と答えた。

「ラズロに説明する」

 全員の前に飲み物を置く。
 座りなさい、とトキア様に言われたので、ラズロさんと隣合わせで腰掛けた。

「その前にアシュリー、ダンジョン蜂の蜂蜜の売買代金をありがとう。今回の件がどれ程長引くかは分からないが、税率は下げざるを得ない。そんな中で税収とは別のあれだけの収入は本当に助かる」

「いえ、僕はパフィに言われただけなので」

 蜂蜜だってジャッロたちのおかげだし。

「それでも、アシュリーがいなければ私も民もこうして無事ではいられなかったし、あのような大金を入手出来なかった。今はまだ十分な礼を出来ないが、せめて言葉だけでも受け取って欲しい」

 そう言って殿下が微笑むので、頷いた。

「では、本題に入る。
パシュパフィッツェ様の提案が全会一致で可決された。
ただ、それにはアシュリーとティールやナインの力を必要とする」

 全会一致。
 パフィの言っていた案。

「北の国から主に仕入れていて、王国内に影響を及ぼすのは大きく二品目。魚介と薬草だ」

 魚介。海で獲れるもの、だよね。
 薬草と言うと、山? この国の山はあまり高くないから、ものすごく高い山でしか育たない薬草とかかな?

「アシュリーのダンジョンメーカーのスキルで、ダンジョンを作成してもらい、ティール達魔術師の術符により、海と繋げてもらう。
薬草に関しては、高山と同じ環境にしたダンジョンを作ってもらいたい」

 なるほど。
 だからティール様とナインさんなんだ。

「後はオブディアン家が強く推し進めている水鳥の育成場、アシュリーの故郷にあると言う公共浴場の設置、民間専用の薬屋の営業から着手する。
民にとって、国にとって意味がある、効果があると思われるものは取り込んでいく。
下手に吟味して失敗するよりも、多くの事に、民自身に参加してもらう方向で進める予定でいる」

 なんて言うか、変わろうとしてるんだな、と言うのは思った。
 今回のことで多くの貴族がこの国からいなくなった。
 だからと言って南の国のように、貴族をなくすとはならないし、出来ないんだろうな。
 壊して作り直すのも、残したまま作り直すのも、どっちも大変だと思う。

「僕の出来ることが、誰かの役に立つのであれば、頑張ります」

 僕の言葉に、殿下が頷いた。

 戦争は、きっとおきないと思ってる。
 多分パフィがそうなる前にどこかの国を滅ぼす気がする。それが北の国なのか、南の国なのか、この国なのか。
 パフィはなんだかんだ言って、一生懸命な人が好きなのだ。殿下たちが努力する限りは味方になってくれると思う。

「本当にすまない、どれだけ言葉を尽くして良いのか分からぬ程感謝している。
この国を他国の侵略から守る為に、今少し、力を貸してくれ」

「はい。でも、殿下はまだ、身体に無理をさせては駄目ですよ」

 苦笑いを浮かべた殿下。きっと他の人にも言われたんだろうな。

「落ち着かないと思いますけど、きちんと休んで、たっぷり食べて下さい。殿下が無理しても、明日の結果は変わらないです」

 失礼なのは分かってて、はっきり言った。
 昨日もそうだし、今もそうなんだけど、殿下はちょっと動き回りすぎだと思う。
 やらねばと思ってるんだろうし、その気持ちも分かるけど、殿下の身体はまだまだ弱いと思う。
 少し散歩しただけでぐっすり眠れるようになった、って言う人が無理をしたら駄目だと思う。

 困ったような顔をして、殿下がパフィを見る。

「パシュパフィッツェ様がおっしゃる通りの反応でした」

 にやり、と笑うマグロ。
 すっかり黒猫=パフィという状況に慣れてしまったけど、マグロは大丈夫なんだろうか。

『だから言っただろう。アシュリーは私にもこの態度だからな?』

 何の話をしたのかな。

「有難い事です」

 そう言って殿下は、周りを見回した。

「皆にも感謝している。
僕は書物でしか世界を知らない。どうか僕の手足、目となり、この国を支える為の力となってくれ」

 トキア様やノエルさんが頭を下げたので、僕も頭を下げた。

 出来ることを、ひとつでも多くやっていこう。
 きっと、大丈夫だって、思えた。
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