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第三章 ダンジョンメーカーのお仕事
036-5
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会議から戻ったパフィは、ノエルさんとティール様、殿下とナインさん、トキア様を連れて来た。
僕とラズロさんは慌ててコーヒーを淹れる。
『始めよ』
パフィの言葉に殿下が頷いた。
「会議で決定した事からまず、アシュリーと」
殿下の視線がラズロさんに向けられる。
ラズロさんは丁寧にお辞儀して「ラズロと申します」と答えた。
「ラズロに説明する」
全員の前に飲み物を置く。
座りなさい、とトキア様に言われたので、ラズロさんと隣合わせで腰掛けた。
「その前にアシュリー、ダンジョン蜂の蜂蜜の売買代金をありがとう。今回の件がどれ程長引くかは分からないが、税率は下げざるを得ない。そんな中で税収とは別のあれだけの収入は本当に助かる」
「いえ、僕はパフィに言われただけなので」
蜂蜜だってジャッロたちのおかげだし。
「それでも、アシュリーがいなければ私も民もこうして無事ではいられなかったし、あのような大金を入手出来なかった。今はまだ十分な礼を出来ないが、せめて言葉だけでも受け取って欲しい」
そう言って殿下が微笑むので、頷いた。
「では、本題に入る。
パシュパフィッツェ様の提案が全会一致で可決された。
ただ、それにはアシュリーとティールやナインの力を必要とする」
全会一致。
パフィの言っていた案。
「北の国から主に仕入れていて、王国内に影響を及ぼすのは大きく二品目。魚介と薬草だ」
魚介。海で獲れるもの、だよね。
薬草と言うと、山? この国の山はあまり高くないから、ものすごく高い山でしか育たない薬草とかかな?
「アシュリーのダンジョンメーカーのスキルで、ダンジョンを作成してもらい、ティール達魔術師の術符により、海と繋げてもらう。
薬草に関しては、高山と同じ環境にしたダンジョンを作ってもらいたい」
なるほど。
だからティール様とナインさんなんだ。
「後はオブディアン家が強く推し進めている水鳥の育成場、アシュリーの故郷にあると言う公共浴場の設置、民間専用の薬屋の営業から着手する。
民にとって、国にとって意味がある、効果があると思われるものは取り込んでいく。
下手に吟味して失敗するよりも、多くの事に、民自身に参加してもらう方向で進める予定でいる」
なんて言うか、変わろうとしてるんだな、と言うのは思った。
今回のことで多くの貴族がこの国からいなくなった。
だからと言って南の国のように、貴族をなくすとはならないし、出来ないんだろうな。
壊して作り直すのも、残したまま作り直すのも、どっちも大変だと思う。
「僕の出来ることが、誰かの役に立つのであれば、頑張ります」
僕の言葉に、殿下が頷いた。
戦争は、きっとおきないと思ってる。
多分パフィがそうなる前にどこかの国を滅ぼす気がする。それが北の国なのか、南の国なのか、この国なのか。
パフィはなんだかんだ言って、一生懸命な人が好きなのだ。殿下たちが努力する限りは味方になってくれると思う。
「本当にすまない、どれだけ言葉を尽くして良いのか分からぬ程感謝している。
この国を他国の侵略から守る為に、今少し、力を貸してくれ」
「はい。でも、殿下はまだ、身体に無理をさせては駄目ですよ」
苦笑いを浮かべた殿下。きっと他の人にも言われたんだろうな。
「落ち着かないと思いますけど、きちんと休んで、たっぷり食べて下さい。殿下が無理しても、明日の結果は変わらないです」
失礼なのは分かってて、はっきり言った。
昨日もそうだし、今もそうなんだけど、殿下はちょっと動き回りすぎだと思う。
やらねばと思ってるんだろうし、その気持ちも分かるけど、殿下の身体はまだまだ弱いと思う。
少し散歩しただけでぐっすり眠れるようになった、って言う人が無理をしたら駄目だと思う。
困ったような顔をして、殿下がパフィを見る。
「パシュパフィッツェ様がおっしゃる通りの反応でした」
にやり、と笑うマグロ。
すっかり黒猫=パフィという状況に慣れてしまったけど、マグロは大丈夫なんだろうか。
『だから言っただろう。アシュリーは私にもこの態度だからな?』
何の話をしたのかな。
「有難い事です」
そう言って殿下は、周りを見回した。
「皆にも感謝している。
僕は書物でしか世界を知らない。どうか僕の手足、目となり、この国を支える為の力となってくれ」
トキア様やノエルさんが頭を下げたので、僕も頭を下げた。
出来ることを、ひとつでも多くやっていこう。
きっと、大丈夫だって、思えた。
僕とラズロさんは慌ててコーヒーを淹れる。
『始めよ』
パフィの言葉に殿下が頷いた。
「会議で決定した事からまず、アシュリーと」
殿下の視線がラズロさんに向けられる。
ラズロさんは丁寧にお辞儀して「ラズロと申します」と答えた。
「ラズロに説明する」
全員の前に飲み物を置く。
座りなさい、とトキア様に言われたので、ラズロさんと隣合わせで腰掛けた。
「その前にアシュリー、ダンジョン蜂の蜂蜜の売買代金をありがとう。今回の件がどれ程長引くかは分からないが、税率は下げざるを得ない。そんな中で税収とは別のあれだけの収入は本当に助かる」
「いえ、僕はパフィに言われただけなので」
蜂蜜だってジャッロたちのおかげだし。
「それでも、アシュリーがいなければ私も民もこうして無事ではいられなかったし、あのような大金を入手出来なかった。今はまだ十分な礼を出来ないが、せめて言葉だけでも受け取って欲しい」
そう言って殿下が微笑むので、頷いた。
「では、本題に入る。
パシュパフィッツェ様の提案が全会一致で可決された。
ただ、それにはアシュリーとティールやナインの力を必要とする」
全会一致。
パフィの言っていた案。
「北の国から主に仕入れていて、王国内に影響を及ぼすのは大きく二品目。魚介と薬草だ」
魚介。海で獲れるもの、だよね。
薬草と言うと、山? この国の山はあまり高くないから、ものすごく高い山でしか育たない薬草とかかな?
「アシュリーのダンジョンメーカーのスキルで、ダンジョンを作成してもらい、ティール達魔術師の術符により、海と繋げてもらう。
薬草に関しては、高山と同じ環境にしたダンジョンを作ってもらいたい」
なるほど。
だからティール様とナインさんなんだ。
「後はオブディアン家が強く推し進めている水鳥の育成場、アシュリーの故郷にあると言う公共浴場の設置、民間専用の薬屋の営業から着手する。
民にとって、国にとって意味がある、効果があると思われるものは取り込んでいく。
下手に吟味して失敗するよりも、多くの事に、民自身に参加してもらう方向で進める予定でいる」
なんて言うか、変わろうとしてるんだな、と言うのは思った。
今回のことで多くの貴族がこの国からいなくなった。
だからと言って南の国のように、貴族をなくすとはならないし、出来ないんだろうな。
壊して作り直すのも、残したまま作り直すのも、どっちも大変だと思う。
「僕の出来ることが、誰かの役に立つのであれば、頑張ります」
僕の言葉に、殿下が頷いた。
戦争は、きっとおきないと思ってる。
多分パフィがそうなる前にどこかの国を滅ぼす気がする。それが北の国なのか、南の国なのか、この国なのか。
パフィはなんだかんだ言って、一生懸命な人が好きなのだ。殿下たちが努力する限りは味方になってくれると思う。
「本当にすまない、どれだけ言葉を尽くして良いのか分からぬ程感謝している。
この国を他国の侵略から守る為に、今少し、力を貸してくれ」
「はい。でも、殿下はまだ、身体に無理をさせては駄目ですよ」
苦笑いを浮かべた殿下。きっと他の人にも言われたんだろうな。
「落ち着かないと思いますけど、きちんと休んで、たっぷり食べて下さい。殿下が無理しても、明日の結果は変わらないです」
失礼なのは分かってて、はっきり言った。
昨日もそうだし、今もそうなんだけど、殿下はちょっと動き回りすぎだと思う。
やらねばと思ってるんだろうし、その気持ちも分かるけど、殿下の身体はまだまだ弱いと思う。
少し散歩しただけでぐっすり眠れるようになった、って言う人が無理をしたら駄目だと思う。
困ったような顔をして、殿下がパフィを見る。
「パシュパフィッツェ様がおっしゃる通りの反応でした」
にやり、と笑うマグロ。
すっかり黒猫=パフィという状況に慣れてしまったけど、マグロは大丈夫なんだろうか。
『だから言っただろう。アシュリーは私にもこの態度だからな?』
何の話をしたのかな。
「有難い事です」
そう言って殿下は、周りを見回した。
「皆にも感謝している。
僕は書物でしか世界を知らない。どうか僕の手足、目となり、この国を支える為の力となってくれ」
トキア様やノエルさんが頭を下げたので、僕も頭を下げた。
出来ることを、ひとつでも多くやっていこう。
きっと、大丈夫だって、思えた。
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