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第二章 マレビト

035-1

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 僕はパフィに詰め寄った。

「どう言う事だか、説明して」

 僕が怒る事はしないと言ったのに、関係ない人を巻き込むなんて……!

「アシュリー、落ち着いて」

 僕の腕をノエルさんが掴んだ。
 目の前のパフィは無表情に僕を見てる。

「パシュパフィッツェ様は何もしていないよ」

『したさ』

 ノエルさんとパフィの意見が食い違う。
 どっちが正しいの?

「毒を流したのは、本当にパシュパフィッツェ様じゃないんだよ、アシュリー」

「……本当ですか……?」

「本当に。ちゃんと説明するから、座ってくれる?」

 座ったはいいものの、落ち着かない気持ちでいたら、パフィが僕の膝の上に乗ってきた。
 僕の隣にはラズロさん。正面にノエルさんとクリフさんが座った。

「僕達はこの前から、計画の練り直しをしていたんだ。
アシュリーが言うように第一王子と第二王子双方が正しくぶつかるべきだったのに、安易な方法──パシュパフィッツェ様の力に頼ろうとした事を反省してね」

 クリフさんがノエルさんの言葉にうんうん、と頷いた。

「ギド殿下の伯父である侯爵が北の大国と繋がりを持っている事が判明したんだ。彼らは手を組み、戦争を起こすつもりでいる。攻める先は南の国になるね。
共闘だなんだと言っても、南の国に面しているのはこの国。北の国は僕達を体良く利用して南の国を滅ぼし、疲弊したこの国を奪うつもりでいるんだろうと思う」

 なんて酷い事を思いつくんだろう……。
 あまりの事に僕は何て言っていいのか分からなかった。
 北の国の酷さはナインさんの事で分かっていたつもりだったけど、それでも……。

「パシュパフィッツェ様は第二妃と侯爵の間の橋渡しをしている鳥に仕掛けを付けて下さっていてね、あちらの内情は筒抜けだったんだよ。それで、北との繋がりも露見したんだ」

 前にネロが捕まえていた小鳥? 確か、運び屋とかって呼んでたような気がする。

「本来はこの件だけで侯爵を失脚させて、ギド殿下の勢いを削ぐつもりでいたんだ。証拠として十分だからね」

 ノエルさんがため息を吐いた。

「アシュリーにテイムされているから忘れそうになるけど、ダンジョン蜂は非常に危険なんだ。数も多いし、毒性もある。刺されればただでは済まないんだよ、本当に。
それだけに彼らの蜜は滅多に取れなくて。その価値は色にひっかけて金に匹敵するとまで言われてるんだ。
実際、あれだけ弱っていた第一王子が健康になっていく様を見せつけられれば、嫌でも関心を持つと思う」

 それはつまり、欲に目が眩んだってこと?

「本当は巣を壊すつもりでいただろうけどね、欲をかいて蜜を盗む事を考えるようになったんだよ。あれだけ効果のある物を、第一王子を元の虚弱体質に戻す為だけに壊すのは勿体無いと思ったんだろうね」

 誰か、治してあげたい人でもいたのかな……。
 ただのお金もうけかな……。

「彼らは術符に効果の追加を要求したんだ。蜂に刺されても重傷化しないようにってね」

 重症化しないからと言って、刺され続けば大変だろうし、蜜は取りやすくない筈……。
 ……あれ? もしあの木箱に気付いたら……。
 ノエルさんを見ると頷かれた。

「ティールにしれっと木箱の事をバラすように頼んでおいたんだよ。だから彼らは木箱から蜜の入った木枠を持って帰っていたんだ」

 ……そうだったんだ……そう言えば全然、木箱の方見てなかった。ジャッロ達は相変わらず蜂ヤニを手渡し(?)でくれるから……。
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